国内外で注目されるトップシェフが手がける「香りをたべるアイスクリーム」を知っていますか。口いっぱいに広がる豊かな香りと味わいにも驚きますが、この繊細で複雑なレシピが障がい者福祉施設で再現されていると聞いてさらにびっくり。クラウドファンディングで目標30万円で資金を集めたところ、すでに150万円以上が集まりました。障がい者福祉施設から世界基準のアイスクリームを目指す取り組みを追いました。(ライター=土屋 朋代)

香りをたべるアイスクリームFRAGLACEのラインナップ。「ローズバニラ」「ローズチョコレート」「ティー」そして、「レモン・オリーブオイル・塩」

この企画を考えたのは、小澤亮さん。小澤さんは2017年にEDIBLE GARDENという「食べられる花屋」を開業。そこで、障がい者福祉施設で栽培する国産エディブルフラワーのブランディングに着手したことがきっかけで、障がい者福祉施設におけるものづくりの実態を知ることになりました。

「エディブルフラワーをホテルやレストランに適正価格で販売する事業スキームを組んだため、ボールペンの組み立てや封筒の封入作業といった単純作業より、工賃を高くお支払いできることになりました。ここで障がい者福祉施設で高品質なプロダクトをつくり、適正価格で売ることができれば工賃を上げられるという経験ができました」(小澤さん)

そんな中、偶然にも同じ障がい者福祉施設でアイスクリームが製造できることを知り、「香りをたべるアイスクリーム FRAGLACE」をここでつくろうと決断します。

目標は工賃を2倍にすること。現在の全国の就労継続支援B型事業所の月額平均工賃は15,295円(引用:厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」における平成28年度の平均工賃)なので、まずは5名の障がい者スタッフに対して、月額3万円を支払えるよう、アイス1カップごとの工賃を50円に設定。それを達成したあとも、月額工賃を4万円、5万円とアップさせていくことを構想しています。

エシカルへのこだわりを尋ねると、こんな言葉が返ってきました。

「実はエシカルであることに特別な思い入れがあったわけではありません。私たちは経営メンバー全員がミレニアム世代で、育っていく中でボランティアが当たり前のように生活に根付いていました。周りには休日を使って気軽にボランティアに参加する友人も少なくありません。社会に良いことはドンドンしていこう!という価値観に触れながら育ってきました。なので、事業スキームの中にエシカルな文脈を取り入れることは自然なことだという感覚でやっているんです」

さらにこう続けます。

「しかも、その方がかっこいいし、何より楽しいですよね」

自分へのご褒美に新しいアイス体験を提供

さらりと語りますが、実際、苦労も少なくなかったようで、「なかなか味が定まらず、発売が遅れて、去年のクリスマスシーズンを逃してしまい、会社がちょっとピンチになりました」と苦笑い。

「でも大変だった分、トップシェフのレシピを障がい者福祉施設で再現することは、尚更イノベーティブなことだと感じてそれがモチベーションになりました」
努力の甲斐あって、今では高級ホテルやレストランにも出せるクオリティのアイスクリームが作れるようになったと小澤さんは胸を張ります。

「香りをたべるアイスクリーム FRAGLACE」は、現在クラウドファンディングサイト「Makuake」でも支援者を募っています。この挑戦に賛同する方はぜひチェックしてみてください。

香りをたべる、大人のための「レモン・オリーブオイル・塩」のアイスクリーム(募集期間 11月29日まで)


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