「属性よりも個人を見よ。これがユヌスさんから教わったことの一つ」――。そう話すのは、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスさんと吉本興業が立ち上げた事業会社ユヌス・よしもとソーシャルアクション社長の小林ゆかさん。世界的な社会起業家から何を教わったのか。(オルタナS編集長=池田 真隆)
ユヌスさんは「グラミン銀行」の創設者。同行では、生活困窮者向けに無担保・低金利で少額融資を行うことが特徴だ。貧困解決に貢献することが評価され、2006年にはノーベル平和賞を受賞した。
グラミン銀行のモデルは途上国だけでなく、米英仏など先進国にも広がり、貧困脱却に一定の成果をあげている。日本でも、今年9月に「グラミン日本(理事長・菅正広)」が立ち上がった。
小林さんは吉本興業社長室で経済産業省や環境省などの行政案件を担当していたころに、ユヌスさんと出会った。小林さんは、事業で社会課題を解決するソーシャルビジネスに興味を持っており、ユヌスさんに協働の依頼を持ちかけたところ、新会社を立ち上げることになった。それが、ユヌスよしもとソーシャルアクションである。
現在、吉本興業が持っているお笑いの力で、ソーシャルビジネスをお茶の間に浸透させていく事業を構想中だ。
■経営者は「好奇心」持ち続けて
小林さんがユヌスさんから教わったことの一つに、「個人を見よ」という教えがある。この言葉は裏返すと、「属性で見るな」だ。つまり、個人のバックグラウンドや所属先などで判断してはいけないという意味である。
社会課題を解決するソーシャルビジネスでは、信頼関係を築くために、個人との向き合い方が重要になる。ユヌスさんは、銀行のオーナーとして、貧困だからお金を貸すのではなく、「あなただからお金を貸す」という姿勢を大事にしてきたと明かした。
経営者としては、「こうなったら楽しいという好奇心を持ち続けないといけない」と強調したという。