瀬戸内海に囲まれた緑豊かな地、小豆島(香川県)。その自然や海は島の農業や産業に多大な恩恵を与え続けている。しかし、深刻な環境破壊によりそれらは壊され姿を変えつつある。そのような現状に危機感を抱き、環境保護の大切さを訴えながら小豆島の魅力を伝え続けている特定非営利活動法人DREAM ISLANDの副理事長、連河健仁さんに話を聞いた。(武蔵大学松本ゼミ支局=旅河 夏希・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)

インタビューを受ける連河健仁さん

特定非営利活動法人DREAM ISLANDは2007年に設立されたNPO法人。「人と人、人と自然、人と小豆島を『結ぶ・繋ぐ』」を合言葉に島に吹くカラッとした「島風」を感じながら小豆島周辺の海を巡るシーカヤックツアーや「小豆島の家庭の味」をテーマにしたカフェ「こまめ食堂」の経営など様々な事業を行っている。

連河さんは小豆島にゆかりのあった人物ではない。ライブドアで10年ほど勤務した後、退社し、旅中に小豆島行きのフェリーから見た瀬戸内海に魅了され移住を決めたのだという。

当初は得意のIT知識を生かし、ネットを通じて島の情報の「見える」化を行っていた。が、情報を公開し過ぎることは返って、現地の人々との交流を失ってしまうことに気付き、「行ってみなければ分からない面白さ」「ライブでしか伝えられないもの」を伝える路線に変更した。

小豆島の海の良さを伝えるシーカヤックガイドや「こまめ食堂」を始めた。食堂では島にあるものを使うことを心がけた。店自体が古い納屋を改装した造りになっており、廃校の椅子や机をもらい受け、店の内装に使った。

取材中、連河さんは自身も魅了された小豆島、そして日本の海への並々ならぬ思いを何度も口にした。瀬戸内海は昔、世界有数の漁獲地であったが高度経済成長以降進む環境破壊により魚が激減、魚が獲れなくなった影響で仕事を辞めてしまう漁師も増えてしまった。

海外からの魚の輸入や後継者不足が追い打ちとなり、島だけでなく日本の海の環境や漁業産業が危機を迎えている。しかし連河さんは、海の多様性は戻すことができると言い切る。

「こまめ食堂」。今回の取材もこの店内で行った

「自然を信じて、手を加えて、元の環境に戻してあげたら、人間の暮らしも豊かになる」そう語る連河さんの声には熱がこもっていた。ヒトの手で豊かな海を取り戻す「里海」の仕組みを小豆島で行い、島の漁業を救いたいと強調。連河さんにとっては、海の再生化はライフワークであり、金を稼ぐために行う「生業」ではない。金にならずとも、やらなければ人間が生きていけない、本当にするべき「仕事」なのだ。

取材終わり、帰りのフェリーから見た海は夜のライトに照らされ美しく光っていた。連河さんらの活動によって小豆島の海が今よりもっと美しく、豊かになり、島自体もより魅力的になっていくよう胸の中でエールを送った。


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