インコやオウムなどの飼い鳥。ペットショップなどで見かけて「かわいい、飼いたい」と思われる方も多いのではないかと思います。これらの飼い鳥、大きな鳥だとカメと同じく5〜60年生きるという事実をご存知ですか?飼い主の高齢化や家庭の事情により、手放される飼い鳥が数多くいます。こういった鳥を保護し、新たな里親を探す活動をするNPOに話を聞きました。(JAMMIN=山本 めぐみ)

飼い主が飼えなくなった鳥を保護

NPO法人TSUBASAが運営する飼い鳥の保護施設「とり村」で、仲睦まじい姿を見せる鳥

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埼玉を拠点に活動する「認定NPO法人TSUBASA(つばさ)」。様々な理由から飼い主と一緒に暮らすことができなくなったインコやオウム、フィンチを保護し新たな里親を探す活動を行いながら、飼い主と鳥とが終生幸せで健康に暮らせるよう、飼い鳥の適正な飼養に関する情報提供や学びの場を全国で展開しています。

「飼い主が今いる鳥と長く一緒に暮らせるように、鳥を手放すという選択の手前で飼い主さんたちとつながり、鳥に関する知識やノウハウを共有し、鳥と人とが幸せに生きられる社会を作っていきたい」

そう話すのは、TSUBASA代表の松本壯志(まつもと・そうし)さん(63)。埼玉県新座市にある飼い鳥の保護施設「とり村」には、常時100羽以上の保護鳥がおり、6人の飼育専門スタッフと、年間のべ1,000人を超えるボランティアで日々の世話をしているといいます。

TSUBASA代表の松本壯志さん(左)とスタッフの涌井智美さん(右)

さらに「とり村」の一部は一般向けに開放されており、訪れた人が保護鳥と触れ合えるようになっています。

「『鳥ってかわいいな』だったり『こんな理由で飼い主さんから手放されてしまうんだな』だったり、鳴き声を聞いてみて『鳥を飼いたかったけど、自分では飼えないな』という気づきでも良いと思っています。鳥と実際に触れ合うことで『鳥が好き』『たのしい』というところから一歩踏み込めるようにしたい」と松本さん。地元の子どもたちをはじめ、たくさんの方が訪れるといいます。

「普段から飼い鳥のことで困ったことがあった時に気軽に相談できるという関係や環境を築いておくことで、何かあった時に『手放す』という選択肢を減らすことにつなげていけるのではないか」と話すのは、スタッフの涌井智美(わくい・ともみ)さん(32)。

飼い鳥の適正な飼養に関する情報提供を行うため、保護施設を運営しながら全国各地で学びの場を設けたり、飼い鳥に関する電話相談も受け付けたりといった活動もしています。

寿命の長さが、手放される理由のひとつ

「とり村」の開放スペースの様子。「大きな鳥の部屋は、鳥の遊び場に人間がお邪魔するイメージです。鳥達が自由にしています」(涌井さん)

飼い鳥が手放されてしまう理由のひとつが、その寿命の長さです。

「大きな鳥だと、5〜60年は生きると言われています。ペットの中では亀と並んで桁違いに長生きする生き物で、小さい鳥でも10年ほど生きます。そうすると、たとえば20代で大きな鳥を飼った方が70代80代になってきた時に、高齢による病気や入院によって飼育困難になってしまう。一緒に暮らしたいけれど、もう飼うことができずどうすることもできないということでご本人やご家族から連絡をもらい、レスキューに伺うケースは多い」と松本さん。

左側の鳥はキエリボウシインコの「オールド」。施設最高齢で、2019年で55歳を迎える。「飼い主様の高齢化と共に引き取られましたが、施設でお友達(写真右:アオボウシインコの「つん」)もでき、楽しそうに過ごしています」(涌井さん)

一方で、ペットショップが寿命をしっかりと伝えず、飼い主が長生きするということを知らないまま飼ってしまうというケースも多いと指摘します。

「ペットショップ側からすると、50年生きると言われるとお客さんが飼いづらくなってしまうのが理由。高齢者が鳥を飼ってはいけないということではなく、高齢者に限らず、鳥の寿命が長いということを理解し、もし鳥を飼いきれなくなった時のことを考えて世話をする必要があります」(松本さん)

噛む・鳴くなどの問題行動も手放される理由

里親に引き取られ、第二の人生を生きるオキナインコの「桃子」。「嚙みつき屋さんで、10年以上施設で暮らしました。家族を得ることで表情から角が取れ、素直に甘えられるようになる鳥は大勢います」(涌井さん)

もう一つ、飼い鳥が手放されてしまう理由にあるのは、噛む・鳴くといった問題行動です。

「鳥は飼い主を横の関係とみなしています。噛まれると痛いし鳴き声も相当大きいですが、飼い主にその気はなかったとしても、とっさに人間が取った行動などで鳥が噛む癖や叫ぶ癖を身につけてしまうことがあります」と涌井さん。

鳥は記憶力があり、頭も良い生き物であるため、人間の対応に対して怖い思いをしたり「裏切られた」と感じたりした場合、トラウマからカゴから一切出なくなるというケースもあるといいます。

アカビタイムジオウムの「もみじ」は、飼い主の元でケージから出てくることができず、お世話が難しくなってしまい施設にやってきた。「ここに来てスタッフに心を開き、最初からは比べものにならないほどの明るい表情仕草を見せてくれるようになりました」(涌井さん)

「関係修復には時間と根気が必要です。それが難しくなってしまった方が、これ以上飼うことは難しいということで手放すこともある」と松本さん。

他にも、鳥の鳴き声に家族や近隣住民から苦情が来たために手放すというケースや、海外転勤になり飼えなくなったといった理由で手放されるケースもあるといいます。

長生きする鳥のために、終生飼養を考えるのも飼い主の役割

TSUBASAが定期的に実施している「里親会」の様子。ケージ越しに紹介カードやスタッフの説明を受けながら、一緒に暮らしたい鳥を検討することができる

「やむをえない場合もあるが、なかには飼い主さんに知識があれば離れ離れになるという選択を避けられることもある」とTSUBASAの二人は指摘します。

「噛んだり叫んだりといった問題行動への対処法もそうですが、飼い主が『自分よりも鳥が長生きするかもしれない、いつか飼えなくなるかもしれない』という可能性を見据えて、鳥が飼い主さんを一人に限定せず、『いつでも・どこでも・誰とでも』仲良くできる環境を少しずつ作っておくことが大切」と涌井さん。

「自分が飼えなくなったときのことを考え、自分に代わって鳥を飼ってくれる人を探しておくなど、周囲の方たちと積極的なコミュニケーションをとっておくのも、飼い主としての一つの役割」と話します。

鳥の体を触り、異変を確認する触診。「鳥は病気を隠す生き物といわれています。最低でも週に一度は触診と体重測定をしています。具合の悪い鳥達は毎日測定を欠かすことはありません」(涌井さん)

一方で、飼い主の間違った意識と行動で、手放す鳥を不幸にしてしまうことがあるといいます。

「自分が飼えなくなってしまった時に『これまでずっと鳥かごの中に閉じ込めてきたから、これからは自由に生きて欲しい』と野に放ちたいと思う方もいますが、これは人間の独りよがりな発想。まず、飼い鳥を屋外に放つ行為は犯罪です。屋外に放ったところで、飼い鳥はあくまで飼い鳥で、野生の鳥とは異なります。また、インコやオウムはもともと日本にはいない鳥で、ペットのためだけに持ち込まれた鳥なので、野生復帰はできません。『自由になって』とカゴから出しても、自然の環境に馴染めず大きな鳥や猫などに捕食されたりして命を落としたり、繁殖しすぎると駆除されるという結果になってしまいます」(涌井さん)

日光浴場へ鳥たちを出す作業。「鳥によっては手のひらが怖い、タオルなら大丈夫、木材の上なら乗って移動ができるなどそれぞれの好みがあります。全ての鳥に合わせて少しでも快適に過ごせるようにと考えています」(涌井さん)

「いろいろなレスキューを請け負っていると、鳥が飼い主さんに最期を看取ってもらえるのは、実はすごいことなのだと感じます。『いつか手放す』と思って飼う方はいないし、手放しは起こる時は起きてしまう。しかし鳥を飼う以上は終生飼養を、もし飼えなくなったとしても鳥たちに次のチャンスが生まれることを考えて欲しい」(松本さん)

保護鳥を通じて見える飼い主の愛情

鳥は野生では群れで過ごす生き物。「人を家族と思い、信頼を寄せる鳥がいる一方で、施設の中で新たな友情関係を結ぶ鳥達もいます」(涌井さん)

TSUBASAで過去に保護した鳥の中で、特に印象に残っている鳥について聞いてみました。

「どの鳥も印象深いですが」と前置きした上で、松本さんはある鳥のエピソードを語ってくれました。

「ある時、ご自身の病気でこれ以上飼うことができなくなってしまった40代の方から、ヨウムという鳥を引き取りました。引き取りにあたっての様々な手続きも、すごく誠実に対応してくださった方でした。引き取りの場所は街中だったのですが、たくさんの人が行き交う中で鳥を引き取った後、彼がその場に泣き崩れる姿を見ました。その方にとってどれだけその鳥が大切な存在であるかを感じた瞬間でした」

「引き取った後、お世話をしているとその鳥が『コワクナイヨ、コワクナイヨ』と言うんです。きっと、飼い主さんがいつもそう言って鳥を励ましていたんですね。きっと飼い主さんも『怖くないよ』と鳥に言いながら、自分自身を励ましていたのではないか。そんな風に感じた出来事でした」(松本さん)

「レスキューをしていると、時に飼い主さんが透けて見える時があります。オウムが『ダイジョウブ?』とか『ドウシタノ?』と声をかけてくれることがあって、きっと飼い主さんがそうやって鳥に問いかけていたんだなあ、愛情をかけられていたんだなあと感じます」(涌井さん)

これまでに、様々な事情から手放されるたくさんの飼い鳥を保護してきたTSUBASA。「どんな理由であっても、飼い主と鳥とが離れ離れになることは人も鳥も不幸にしてしまう。もっともっと情報を発信していかなければいけないと感じている」と二人は話します。

飼い鳥の保護と里親探しを応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、TSUBASAと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。「JAMMIN×TSUBASA」コラボアイテムを1アイテム買うごとに700円がチャリティーされ、TSUBASAで保護されている鳥たちの検査や医療品・医薬品購入のための資金になります。

「保護施設にいる鳥の中には、腎臓や肝臓疾患を抱えている鳥がいます。人と同じで、高齢になると慢性的な病気を持つ子が増え、一生薬が手放せない子もいます」(涌井さん)

「JAMMIN×TSUBASA」1週間限定のチャリティーアイテム。写真はベーシックTシャツ(3,400円(チャリティー・税込)、カラーは全9色)。他にも七分袖Tシャツやキッズ用Tシャツ、パーカーなども販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインに描かれているのは、リボンを掴んで飛ぶ一羽のヨウム。人間と鳥との絆をリボンで表現し、鳥が自らの意志でそのリボンを運ぶ姿を描くことで、鳥と飼い主とが幸せに暮らす未来を運んでくるというストーリーを表現しました。

チャリティーアイテムの販売期間は、1月28日〜2月3日までの1週間。チャリティーアイテムは、JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、TSUBASAの活動について、より詳しいインタビュー記事を掲載中!かわいい鳥をたくさん紹介しているので、こちらもあわせてチェックしてみてくださいね!

飼い鳥のこと、正しく知って。飼い鳥と人とが末永く一緒に暮らせる社会を目指して〜NPO法人TSUBASA

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしている京都の小さな会社です。創業6年目を迎え、チャリティー総額は2,700万円を突破しました。

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