東京都は2月7日、「ライフ・ワーク・バランスEXPO」を開いた。従業員が生活と仕事を両立している11社の中小企業を「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」として表彰した。会場には、テレワークや多人数でのオンライン会議を促進する最新ツールが展示されていた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

認定状授与式では小池百合子都知事が出席した=2月7日、東京国際フォーラムで

東京ライフ・ワーク・バランス認定企業制度とは、従業員が生活と仕事を両立して働き続けられる取り組みを実践している中小企業を表彰するもの。都では生活を基点にしながら働きがいや生産性を高めることを推奨するため、「ワークライフバランス」ではなく「ライフワークバランス」とした。

応募対象は、都内に本社があり、従業員300人以下の企業・社団法人・NPO法人など。書類審査と外部の専門機関が訪問して取り組み内容をヒアリングする審査を経て、総合的な視点から認定企業を選んだ。審査委員長は小倉一哉・早稲田大学商学学術院教授が務めた。

今年度は35社からの応募があり、その内11社が認定企業として決まった。当日は表彰式が行われ、小池百合子・東京都知事が出席、認定企業に認定状を授与した。

主催者挨拶として登壇した小池都知事は、「戦後日本は人々のハードワークによって成長を遂げてきたが、グローバル経済では産業のあり方が変わり、これまでの働き方を見つめ直すときに来ている」とし、今回認定した企業のように「楽しみながら働けて、社会といつでもつながっていられる東京にしていきたい」と話した。

認定した11社の中から、特に優れた企業を大賞として表彰した。大賞に輝いたウェブ制作会社のライフィ(東京・港)では、全従業員が所定労働時間(8時間)より1時間早く帰ることができる「短縮労働時間制度」を設けている。出勤時間を30分単位で選べる制度もあり、柔軟な働き方を可能にしている。

社長の呼びかけで発足した「ライフ・ワーク・バランスプロジェクト」では、毎月の全体会議で同プロジェクトの進捗を報告、全従業員の年次有給休暇取得率も全員で共有している。

同社の澤田努社長は、数十年後にいい会社であるためには経営者は長期的な目線で社会に役立つことを考えたと言う。「ライフワークを整える目的を、お客様を喜ばせること」と言い切り、「お客様を喜ばせるためには社員が幸せでないとできない」と話した。

ライフィの社員から働き方の制度について説明を聞く小池都知事

労働時間を短くするのではなく、「短時間で一生懸命に仕事に打ち込むために、従業員で無駄をなくし、効率の良い働き方を追求した」。

ユニークな取り組みをする中小企業を「知事特別賞」として選定した。選ばれたのは、障がい者福祉事業に取り組む社会福祉法人あいのわ福祉会(東京・足立)。「ワーク・ライフ・バランス応援ガイドブック」を作成し、育児・介護・休暇、スキルアップなどに関する制度の利用を促した。

管理職の人事評価に部下の残業時間・有給休暇取得率などを組み込んだ。同団体の職員の半数が女性であり、ライフステージの変化に合わせて制度を設けていった。「最高の職場環境が良いサービスにつながる」として、職員の声を聞きながらライフ・ワーク・バランスの推進に力を入れる。

ITコンサルティング会社のウィルド(東京・台東)は、週1回30分間の「おやつタイム」を設けている。仕事をやめて、社内の交流を促進する。プライベートをオープンにすることで雰囲気を良くして、生産性を上げた。

投資用マンションの企画・開発・販売を行うCOLORS(東京・千代田)は、毎月の給料日に16時半から16時45分に一斉退社する「給料日早上がりDAY!」や誕生日は15時退社を推奨する「誕生日早上がりDAY!」を導入して、残業時間を削減する。

会場にはテレワークなどを推進する最新ツールが展示されていた

審査委員長の小倉教授は、ライフとワークを充実させるための取り組みとして、「経営者を含めて社内全体で働き方に関する課題が明確にすることがまず大切。社員と話し合いながらテレワーク制度や時差出勤などを有効活用していくこと」と説明した。

ライフ・ワーク・バランスに優れた企業は、「組織にも、個人にも良い影響を与える。この制度で中小企業の働き方を見直せれば」と話した。


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