アルピニストの野口健さんが地球を舞台に活躍するフロントランナーをゲストに迎えるトークショーがこのほど、TOKYO FMホール(東京・千代田)で開かれた。ゲストには、地球との共生を掲げる執筆家の四角大輔さんを迎えた。「ライフスタイルシフト」や「子どもたちに残したい地球環境」などをテーマに話し合った。(オルタナS編集長=池田 真隆)
TOKYO FMとJFN38局はコスモ石油と地球環境の保護を訴える活動「コスモ アースコンシャス アクト」を2001年から実施している。このトークショーは同活動の一環として企画された。
対談では、登山という共通点を持つ2人が環境保護に関心を持った経緯や活動のスタイルなどについて約2時間をかけて語り合った。この模様は2月24日(19時~19時55分)にTOKYO FMで公開されるが、今回最も筆者が印象に残っている会話を一足先に紹介したい。
それは、野口さんが「登山を好きではなくなった時代があった」という告白から始まった。1999年にエベレストを登頂して、世界7大陸最高峰登頂記録(当時)を持つ野口さんだが、「30代のとき山登りに情熱を持てなくなったことがあった」と明かした。
高校時代に読んだ植村直己氏の著書に触発されて登山を始め、「好きなことをしていたら仕事になっていた」というほど、山登りに没頭してきたが、30代のときにふと気づくと「完全に仕事になっていた」と振り返る。
清掃登山も行うが、「仕事」としてこなすようになり、ワクワクしなくなっていたと言う。その状態の野口さんを救ったのが、子どもの頃から持っていた夢であった。当時、一緒に登山していたミュージシャンの藤巻亮太さんがカメラを持ち、一生懸命に風景を撮る姿を見て、「あ、おれはもともとカマラマンになるのが夢だったんだ」と思い出した。
家族にも「おれには夢がある。カメラマンになることだ」と宣言し、それ以来カメラを抱えて登山するようになった。そうすると、写真を撮るためにジッと星空を見上げるようになったり、普段の登山では気付かなかった風景を見るようになったりした。そうすることで、何十回も登ってきた山の素晴らしさを改めて知るようになったという。
この話を聞いた四角さんは、「心にこそ本当の思いはある」と一言。「頭は言葉を持っているから、ついつい人は頭で考えがちになってしまう。頭では合理的な答えは出せるけど、本当の思いは心にしかない。心は言葉を持たないからその思いに気付きづらい」。
四角さんはレコード会社のプロデューサーとしてミリオンヒットを複数回記録し、2000万枚のCDを販売してきた実績を持つ。だが、いまではその成果を、「2000万枚のプラスチック製品をばらまいてしまった」と引き合いに出しながら「ライフスタイルシフト」を提唱している。
ニュージーランドに移住し、原生林に囲まれた湖畔で自給自足の生活を送る。庭ではオーガニック野菜を育て、食べるための魚を釣り、湖の湧き水を飲み水とする。電気も極力使うことを避け、早寝早起きで夜はろうそくで部屋の明かりを灯す。
四角さんは「自然に触れる」ことを強調。ここで言う「自然」とは、山や海、川などのことだけを指しているのではない。「例えば、普段降りる駅を一歩手前で降りてみて、公園や道ばたの小さな自然を見つけながら歩いてみること」と主張。電車や車のスピードとは違い、歩くことで気付けなかった風景に出合えるからだ。
四角さん自身は、レコード会社で働いていたときに「空を見上げること」を意識していた。「空こそが一番身近な大自然。多忙なときやストレスが溜まったときには、空を見上げて、思いっきり深呼吸する。そうすることで我を忘れないようにしていた」と言う。
◆「コスモ アースコンシャス アクト 野口健トークセッション」に四角大輔が登場!
この模様は2月24日(19時~19時55分)にTOKYO FMでオンエア!