「本業も社会活動もサステナブルでストレスフリーに」――こう話すのは、社会派ドキュメンタリー映画の上映会を主宰する西村修さん。日中は総合製紙企業の営業企画部長として、夜は市民上映会のプロデューサーという二枚の名刺を持つ働き方を実践している。これまでに開いた上映会は87回を数える。本業を持ちながら社会活動を続けるポイントは「信頼力」と強調する。(寄稿・腰塚 安菜)
ノー残業デーの水曜日、仕事終わりのビジネスパーソンや大学生らが続々と東京銀座にあるオフィスビルに入っていく。そのビルで行われているのは、社会問題に特化したドキュメンタリー映画の上映会。名称は、まさに「銀座ソーシャル映画祭」。
会場にいるのは、仕事終わりのビジネスパーソンや大学生ら約30人。上映する作品は毎回、西村さんが、映画配給を行うユナイテッドピープル社の作品から選んでいる。映画監督や出演者を招いてトークショーなどを行うこともある。映画を通して参加者の社会問題への啓発が最大の目的なので、上映後に感想を共有する時間は必ず入れているのが特徴だ。
直近では、7月1日に88回目の上映会を伊勢丹新宿店と開く。場所は、伊勢丹会館5F「OTOMANA」。上映するのは「幸せ」がテーマの「Happy -しあわせを探すあなたへ-(2012年、米国)」。監督は、「ジンギス・ブルース」でアカデミー賞にノミネートしたこともあるロコ・ベリッチが務めた。4年間で5大陸16カ国を巡り、心理学や脳医学の世界的権威と幸福度を高める鍵を読み解いていくドキュメンタリー作品だ。
上映後には、消費の視点から幸せを考えるトークショーも予定している。登壇するのは、西村さんに加えて、消費の背景について啓発する一般社団法人エシカル協会代表理事の末吉里花さん、ソーシャルプロダクツの普及推進を行う腰塚安菜さん――の3人。
西村さんは2014年からこの上映会を続けてきた。企画した当初は、西村さんの知人の社外の人に助けを受けながら始めた。続けてきたことで、「スタッフ」として協力を申し出る「参加者」も出てきた。「実は、社会問題に興味があった」「関心はあるのに、社内に話せる相手がいなかった」という思いを抱える人の受け皿として機能するようになり、リピーターも着実に増えていった。
西村さんは、「社会に役立っているという認識を持てると、ストレスは少なくなり、幸福感が高まる」と話す。これはクライアントの役に立って感じる喜びとは異なるものだという。
続けていくことで、幸福感だけでなく、個人の「信頼」も高まると強調。「社会活動を継続すると、周囲が、名刺に記載された肩書ではなく、個人を評価してくれるようになる。その結果、活動も続けやすくなる」と話す。