米国の調査によると、米国では20世紀中に種子の約94%が消失したという。例えばキャベツの品種は544種あったが現存するのは28種に、158品種のカリフラワーは9品種に、46品種のアスパラガスは1品種にといった具合だ。この事実を知った映画監督が、実態を知り、種子の多様性を守るために製作した映画が6月29日、シアター・イメージフォーラム他で全国順次ロードショーとなる。(寄稿・ユナイテッドピープル代表=関根 健次)

映画の名称は、『シード ~生命の糧~』。「種子は私たちの子孫」とトウモロコシの種を守り続けるアメリカの先住民や、人類の終末に備え、最大300万種の種を貯蔵できるシードバンク、スヴァールバル世界種子貯蔵庫に種子を保存する人々などが登場する。ヴァンダナ・シヴァ、ジェーン・グドールなど著名な活動家と種子の多様性を守る方法を探る内容だ。

私たち人類にとって生命(いのち)そのものである種子。種子の多様性を守ることは、私たち自身が持続可能であることを守ることにつながる

種子がなくなっている原因とされているのが気候変動や、多国籍企業による世界の種子市場の独占だ。市場には遺伝子組換え作物(GMO)が登場し、多くの国々で農家が種子を保存し、翌年蒔くことが禁止されるようになった。結果、人類史上最速で種子の多様性が失われているのだ。

文化人類学者の辻信一氏はこう分析する。

「種子は人々を支配するのにも、金儲けにも、一番手っとり早い方法だ。まず「ハイブリッド」という保存できない種子を作って、その特許をとる。また戦争で使われた化学薬品を農薬や化学肥料に転用する。このやり方で化学薬品会社や製薬会社は食料となる作物種子の大部分を所有するまでになった。さらにこれらの巨大グローバル企業は今、遺伝子組み換え(GM)によって、人々の健康ばかりか地球生態系そのものまで脅かしている。20世紀に94%の作物種子が失われ、伝統的な農業は急速に破壊され、中小の農家は廃業に追い込まれた」

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