愛媛県松山市の行政サービスの一つにまちを売り込む、「松山市総合政策部シティプロモーション推進課」が存在する。同課はテレビやラジオ、広報誌など9つの媒体を使い分けて、同市の魅力を発信し、移住・定住を増やすことを目指している。(武蔵大学松本ゼミ支局=野村 紗英・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)

今回取材を行った松山市役所

■シビックプライド醸成へ

同課が行う松山市民への広報は様々な媒体から発信される。市が直接設けた広報手段としては広報紙「広報まつやま」、松山市ホームページ、市勢要覧松山、点字広報「ひかり」、メールマガジン「松山smile通信」の5つが存在する。

マスメディアなどを利用した広報手段として市政広報テレビ「大好き!まつやま」、市政広報ラジオ「みんなの松山」「まつやま笑顔一番」、ストリートビジョン・タウンボード、新聞広告の4つが存在する。

こうした数多くの媒体を使って、松山市は市民へ情報を発信して市政への理解・協力を求めるとともに、「シビックプライド(地元への愛着)」の醸成を図っている。

これらの媒体のなかでも特に注目すべき媒体が「広報まつやま」だ。最も市民のもとに確実に届く情報発信ツールといえるこの広報紙は昭和23年10月から月2回ずつ発行され、平成30年10月で創刊70周年を迎えた。

「広報まつやま」は他の自治体に比べて流通が盛んであり、市内24万世帯のもとへ届いている。流通は主に業者に委託して戸別配布し、山間部に住んでいる市民には郵送で、市内全世帯のもとに届く仕組みになっている。

松山市役所各課や市民から情報を得て、職員自ら取材に出向くこともあるという。市政情報はもちろん、地元の中学生とともに「私たちのふるさとまつやま学」という企画も連載している。

この企画は、松山市立の中学生が松山にゆかりのある偉人について調べた勉強の成果を順番に掲載するものである。ふるさとである松山について調べることで、より地元を知り愛することができるため市民に親しまれている。

■「ちょうどいい加減の町」

「いい、加減。まつやま」の公式ロゴマーク

同課が担う、もう一つの役割は全国に向けた、松山市の売り込みだ。シティプロモーション活動には都市イメージの向上と移住・定住の促進の2つの目的がある。

首都圏を中心に松山市の魅力を伝えるフリーペーパー「暖暖松山」の発行やシティプロモーションウェブサイトの運用などにより、松山市の都市イメージを向上するとともに全国的な知名度や魅力度を高めていっている。

地方の人口減少が進む社会の中で松山への新しい人の流れを作るため、特に首都圏や関西圏からのIターンやUターン促進と若者世代の流入に軸を置き、移住相談体制や移住体験の機会の充実を図っている。

フリーペーパー「暖暖松山」は2012年1月から年に2回発行されていて、配布先は松山市内ではなく、首都圏の都営地下鉄の主要駅などに置かれている。SNSでの情報発信力を持つ首都圏に住む若い女性をターゲットとしており、この冊子のサイズも女性の手に取りやすい小さめのサイズに設定された。カラフルな色彩、フォトジェニックな写真が並び、穏やかな松山の良さが詰め込まれたものになっている。

松山城から見た、松山市

同じくシティプロモーション活動の1つとして「いい、加減。まつやま」「いい、暮らし。まつやま」というWEBサイトがある。「暖暖松山」の創刊から約1年半後、2013年10月にサイトが立ち上げられた。松山城や道後温泉などの有名な観光地だけではなく、住みやすい地としての魅力を発信している。

この2つのシティプロモーション活動は、決して観光客誘致だけが目的ではなく、暮らしやすさや住みやすさをアピールしているものである。市民からの「ちょうどいい加減の町」という意見から、「いい、加減。まつやま」というキャッチコピーとロゴマークが作られた。松山市は市民とともに暮らしやすい町づくりを営んでいるのである。

[showwhatsnew]

【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをLINEでお届け!】
友だち追加