新潟県十日町市では3年に一度、世界最大規模の国際芸術祭である大地の芸術祭が開かれる。その会場となる美術館「越後妻有現代美術館キナーレ」の2階に慎ましくオフィスを構えているのが、FMとおかまちである。同局は「情報の力でふるさとを幸せに」をポリシーに、ラジオだけではなくスマホアプリやフリーペーパーなど様々な媒体を活用しながら、防災や地域情報を発信している。(武蔵大学松本ゼミ支局=横野 公至郎・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)

越後妻有現代美術館キナーレ2階のFMとおかまちスタジオ前

防災面での役割

FMとおかまちは新潟県十日町市にあるコミュニティ放送局である。2004年10月23日に起きた新潟県中越地震の際、十日町市で被災地に必要な情報を伝えるための臨時災害放送局として十日町市災害FM局が発足した。

その後、臨時災害放送局が惜しまれつつも放送を終了したのち、市民からのコミュニティ放送の立ち上げを望む声を受けて開局されたのがFMとおかまちである。

このような経緯もあり、現在でも防災面で期待される役割は大きい。様々なメディアを活用して、防災情報を発信するのはもちろん、十日町市からの委託により十日町市全域に緊急告知FM受信機を配布したり、各自治体と災害時の協定を結んだりと、行政と協力しながら地域の防災意識を高める役割も担っている。

FMとおかまち局長の井口淳さん

災害時に自動で災害放送が流れる緊急FM受信機

ラジオ以外のメディア運営

「ラジオ以外でも情報を伝えることが使命だ」と話すのは局長の井口さん。実際、FMとおかまちでは、ORADOKOマガジンという市民向けのフリーペーパーやスマーフォン用アプリなどラジオ以外のメディアの運営も数多く行なっている。

スマートフォン用アプリではプッシュ通知で新潟県警からの情報や、その他地域の情報などを受け取れるようになっている。視覚で楽しませてくれる紙媒体や、手軽に好きな時に情報を受け取れるスマートフォン用アプリなど、それぞれの媒体の特徴を生かしつつラジオの弱みを補完する形で情報発信をしているという。

これからの課題と展望

人口減少に伴う過疎化、地元企業の倒産・廃業など、地域の弱体化はコミュニティFMにとって死活問題。自治体の財政難から、行政予算も期待できない。

井口さんは「『つなぐ・出会う・学ぶ』をキーワードにしていきたい」と思いを述べる。ラジオのパーソナリティや出演者とリスナーが直接会えるような場作りも積極的に行い、一方的な情報発信から、相互のコミュニケーションが取れるメディアを目指している。



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