■ソニーCSR担当常務ロングインタビュー㊥

ソニーは2050年までに環境負荷をゼロにする目標「Road to Zero(ロード・トゥ・ゼロ)」(2010年に策定)を掲げ、この18年間でCO2排出量を約4割削減した。来年には再生可能エネルギーの自己託送(自前調達)も始める。(オルタナ編集長・森 摂/オルタナS編集長・池田真隆)

インタビューを受ける、ソニーの神戸司郎常務

——9月に開催されたESG説明会の中でも、今年はS(ソーシャル)の部分で社員向けの教育やがんの予防・治療、妊娠・育児に関する施策を発表しています。

そうですね。CSRの視点からソニーの事業を見ると、グローバルで事業を展開しているので、地球・社会への負荷やネガティブ要素をどう取り除いていくかが重要です。

それらのネガティブ要素を取り除きながら、事業を通して価値を創出するためには、やはり人材とテクノロジーが重要であると考え、今年のESG説明会の説明では人材にフォーカスしました。

2人の創業者の理念を引き継ぐ

——キーワードとして、ダイバーシティ&インクルージョンを挙げていますが、創業者の井深大(いぶか・まさる)氏の「人材石垣論」という言葉を引用されています。どのような意味を込めましたか。

ソニー創業から70数年が経っていますが、設立趣意書にもある井深と盛田昭夫の理念は、今の世代のマネジメントにも、脈々と受け継がれています。

事業内容や周辺環境は変わっていますが、やはり変わらないものもあると思います。パーパスという新しい言葉を使い始めましたが、思いや志は変わっていません。

ソニーの設立趣意書の中でも、戦後日本が焼け野原になった後に、技術や科学知識を持って日本を明るくしたいという思いで井深や盛田が始めた会社だと書いてあります。実際に、ミーティングや全体会議の際にも、二人の言葉が引用される機会は多いです。

——環境に関する取り組みとして、環境負荷ゼロを2050年までの目標とした「Road to Zero」を、かなり早い段階から始められていますよね。

そうですね。2010年に策定しました。当時、すでに欧州では一部のNGOや外部評価機関から、長期ビジョンを出した方が良いという声が上がっていたので、それに応えました。以来、5年ごとに中期計画を出すことにしています。

現在は、2021年からスタートする中期計画について、現状事業所で約134万トン排出しているCO2(2018年度)を、2025年度に何万トン、何%減らすのかなどを、社内で議論しています。

2020年度の排出量を2015年度比で5%減という目標を立てており、2018年度は2015年度比で14%減、2000年度比で約39%減を達成しました。

その時々の製造事業所数や製品の種類によって、CO2の排出量削減の難易度が変わっていきますが、(原単位ではなく)絶対値で目標値を設定するようにしています。エレクトロニクス事業の不振で、製造事業所の数を減らした時は、自然とCO2排出量が減りました。

しかし、近年は半導体を含むデバイス事業が好調なので、顧客の需要に応えながら、いかにCO2を削減していくかが、大きなチャレンジです。

——ソニーはRE100(再生可能エネルギー100%を目指すイニシアティブ)に加盟していますが、グループ全体での再生可能エネルギーの比率は現在、どういう数字ですか。

RE100では2040年までに再生可能エネルギー100%を目標にしました。Road to Zeroにおいて、2050年までに環境負荷ゼロの達成を目標にしている我が社にとって、RE100は絶対にクリアしなければならない目標です。

欧州での当社のオペレーションに関しては、2008年の時点で再生可能エネルギー100%を実現しています。

事業所間で再生可能エネルギーを「託送」へ

——それは驚くほど早いですね。

工場の数が少ないというのもありますが、再エネ市場が大きいので、電力を安価で調達できたことも背景にあります。

目標としては、2030年にグループ全体で30%、2040年に100%を設定しています。米ソニーは、2030年に100%達成を目標にしていますが、やはり日本が最も大変で、ソニーグループ世界全体の電力使用量のうち、約7割を日本、主に半導体の工場が占めています。

昨年、RE100を発表して以降、熊本の半導体工場で太陽光パネルの設置・稼働をしたり、省エネに取り組んだりしていますが、国内では数%しか再エネになっていないのが現状です。

そこで、国内では徹底的な省エネに加えて、事業所でのソーラーパネル設置や、事業所間での再生可能エネルギーの託送も推進していきます。

——事業所間での託送というのは、どのように行うのでしょうか。

ある事業所で使った太陽光発電の電力を、そこだけで使うのではなく、余った電力を距離の離れた別の事業所でも使う仕組みです。当社は電力事業をやっているわけではないので、そのためには電力会社の協力が不可欠です。

なので、一つ目の取り組みとして、静岡県・大井川のソニーミュージック系の製造物流センターで、1.7メガワットの太陽光パネルを設置し、そこで発電された電力を、東京電力の協力を得て、同県内の別事業所に送るという取り組みを来年2月から始めます。

太陽光発電の難しさは、供給が安定しないことだと思いますが、日本の再エネ市場が今後拡大して、コストが下がることが最終的には重要だと感じます。RE100加盟企業や他の企業と協力して取り組まないといけないと思っています。

神戸司郎(かんべしろう)
ソニー株式会社 執行役、常務
1984年 4月 ソニー株式会社 入社
グループ戦略部門長、広報センター長を経て現職。
法務、コンプライアンス、広報、CSR、渉外、品質、環境、情報セキュリティ、プライバシーを担当。




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