高機能かつエコな新素材「カポック」をご存知だろうか。主に東南アジアに自生している植物のことで、特徴は「軽いのに暖かいこと」だ。コットンの8分の1の軽さで、植物由来なので吸湿発熱という機能を持つ。カポックを使ったコートの商品化に向けてクラウドファンディングサイト「Makuake」で資金を募ると目標金額の50万円をはるかに超えて1千万円超の金額が集まっている。(オルタナ編集部=多田野 豪)

インタビューを受ける、KAPOK KNOT代表の深井喜翔氏

「たった5ミリの薄さでダウン並みの暖かさ。もっと冬を好きになるような、サステナブルで全く新しいコートです」――こう言い切るのはアパレル製品の企画・販売などを行う双葉商事(大阪府)のアパレル事業部営業部長の深井喜翔さん。

同社は今年で創立72年を迎える。創業者は深井さんの曽祖父・政一さん。深井さんは学生時代に慶應義塾大学で環境について学びながら国際NGO活動に従事した。卒業後は大手化学メーカーに入社、繊維領域の事業を経験し、4代目を就任するために同社に転職した。

深井さんが目を付けたカポックは一部の繊維メーカーの間では、以前から面白い素材として認識されていた。カポック繊維は中が空洞になっているため、コットンの8分の1の軽さであり、湿気を吸って暖かくなる吸湿発熱という特性もあり、軽さと暖かさの両立を実現できる素材である。

カポックの実。持つと非常に軽い。

しかし、今まで広く周知されていなかったのは、その繊維の短さから、糸の加工が困難であったからだ。実際に、大手企業が複数回量産を試みたが、実現には至らなかった。

深井さんは、「シートとしての加工なら可能性があるのでは」と考えたが、依然として、未知の製品の開発を行うための技術や縫製の難しさなどの障壁があった。

そこで、以前勤めていた大手繊維メーカーと北海道のパタンナー職人からの協力を得て、それらの困難を乗り越えて、シートの開発に成功、現在特許を出願中だ。「国内の縫製工場を守りたい」という思いから、日本での製造にこだわりながら、カポック生産地である東南アジアでの雇用創出や、森林保全も重要視している。カポック繊維は木ノ実が原料となるので、木を伐採する必要もなく、 動物を傷つけないアニマルフリーでもある。こうして、薄くて暖かいという機能性と、サステナブルな素材という社会性が両立された製品ができあがった。

深井さんは10月6日、アタラシイものや体験の応援購入ができるクラウドファンディングサービス「Makuake」で「カポック」を使用したコートを商品化するために資金調達を始めた。クラウドファンディングで資金を募った経験はなかったので、当初は、「集まるか不安だった」と明かすが、プロジェクトを開始して、1カ月経たないうちに、1100万円超が集まった。11月29日まで募集している。

「アパレル業界の大半は、大量生産・大量消費を基本としているが、そのために環境や海外労働者などが犠牲になっているのが現状。始まったばかりのプロジェクトであるが、カポックの製品を通して、人にとっても、地球にとっても無理のない、エシカルな社会を実現したい」と話す。

たった5mmで、ダウンの暖かさ。もっと冬を好きになるコート「カポックノット」

KAPOK KNOT代表 深井喜翔
1991年生まれ、大阪府出身。1日に10回以上「カポック」と発する自称カポック伝道師。2014年慶應義塾大学卒業後、ベンチャー不動産、大手繊維メーカーを経て、家業である創業72年のアパレルメーカー双葉商事株式会社に入社。現在の大量生産、大量廃棄を前提としたアパレル業界に疑問を持っていたところ、2018年末、カポックと出会い運命を確信。KAPOK KNOTのブランド構想を始める。




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