積水ハウスは11月15日、「気候危機を考える環境シンポジウム」を都内で開いた。WWFジャパンの小西雅子・専門ディレクターは、気温上昇は避けられないが、可能な限り抑えることが重要だと説明。トークセッションでは、「エコ・ファースト企業」の3社が、気候変動へのそれぞれの取り組みを発表した。(オルタナ編集部=多田野 豪)
基調講演では、WWFジャパンの小西ディレクターが、気候危機に対する世界の動きを説明した。「温暖化対策、2度でも難しいのに、1.5度なんて実現できるのかと、思われているのではないか」と、パリ協定で定めた目標への取り組みについて参加者に問いかけた。
パリ協定とは、フランス・パリで開催された、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、2015年12月に採択された、地球温暖化対策の国際的な枠組みである。同協定は、気温上昇を2度未満(努力目標は1.5度未満)に抑えるために、全ての参加国に対して、温室効果ガス排出の削減目標を義務付けている。
トランプ米大統領が11月4日に、同協定からの離脱を正式に通告したのは、記憶に新しいはずだ。しかし、正式な離脱手続きが完了するまでに、最低1年はかかる。「20年11月3日に行われる大統領選の結果次第では、パリ協定に残る可能性が十分ある」と、小西ディレクターは話した。
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パリ協定では、2度未満に抑えるために、人為的活動による温室効果ガスの排出量を、今世紀後半までに実質ゼロにすることが明確な目標として掲げられたものの、世界各国の国別目標を足し合わせても達成できないのが現状である。
上記のように、気温上昇を2度未満に抑えるだけでも大変厳しい状況ではあるが、「気温上昇を1.5度に抑えることで、熱波や洪水の被害を受ける世界人口や、生態系への影響が大幅に低減される」と、小西ディレクターは気温上昇を抑えることの必要性を訴えた。
日本の環境先進企業の動き
後半のトークセッションでは、環境省の「エコ・ファースト企業」に認定された、積水ハウス、ライオン、戸田建設が登壇した。
近年の異常気象は、企業活動にも甚大な被害をもたらしている。登壇した企業は、気候危機を止めるための取り組みを熱心に行う、いわば日本の環境先進企業である。
しかし、気候変動対策を実践するのは容易ではないという。
ライオンの小笠原俊史・CSV推進部長と、戸田建設の樋口正一郎・価値創造推進室副室長の両氏は、気候変動対策に取り組まなかった際のリスクや、実践のためのコストなどを経営層に提示し、繰り返し説得したと話した。
3社とも、1企業の取り組みだけでは、1.5度目標を達成することはできないので、全企業で協力して取り組んでいきたいと、シンポジウムの参加者に呼びかけた。
「エコ・ファースト制度」・・・環境先進企業を環境大臣が認定する取り組みで、2008年に始まった。現在、認定企業は45社に上り、自社の環境保全活動について具体的な目標を「約束」することになっている。