オルタナS編集部はこのたび、社会の広告社と共同で大学生向けにソーシャルイシューの現場を体感する「ソーシャルステイ」を行いました。今回のステイ先は、介護や保育や障がい者支援を展開している社会福祉の現場。公募で集まった大学生たちは、社会福祉の領域で活躍する若手リーダーのもとを訪れ、密着取材を実施しました。その模様をお伝えします。

社会福祉HERO’S TOKYO 2019」プレゼンテーターに学生ライターが会いに行った! 連載③社会福祉士宮中経助さん『自然栽培と福祉で誰もがWINな社会へ』

12月10日に開かれる「社会福祉HERO’S TOKYO 2019」には社会福祉を担う若手7人が登壇、宮中さんもその一人

大空の下で西谷さんから取材を受ける宮中さん(右)

障がい者の雇用と農業における課題。この二つの問題に向き合いながら、地域全体を明るくする、そんな素敵な取組があるのをご存知ですか?障がいのある方がたが働くためには、人びとの理解が必要不可欠です。農業をツールとして、障がい者も高齢者も子どもたちもみんなが自然と支えあう社会を目指して活動するヒーローのひとりにお話を伺いました。(西谷 美香)

石川県羽咋市と輪島市を拠点に活動する社会福祉法人弘和会。そこが経営している施設「村友」では、農福連携を通したまちづくりを展開しています。

高齢者、障害のある人、職員さんがともに支えあって働く

「村友が一つの家として見てもらえるようになればうれしいです。地域で、例えば高齢者や障がいのある方が住み慣れた場所で、ともに支え合って生活することが当たり前にできる社会を目指しています。その実現への一歩として、自然栽培を中心に障がいのある方がたに『働く練習』ができる場を生み出しています」――そう話すのは、弘和会の宮中経助さん(39)です。

「村友」は、6名の職員さんと合計13名の利用者さんがいますが、利用者さんの人数は日によって異なります。利用者さんの年代は幅広く、10代の方もいれば、定年後にお仕事を続けたいと思って通われる方もいるそうです。また、同じ建物の中では、高齢者の方が主に使われる「シェアハウス」、ボランティアの方が行う「地域支え愛(あい)倶楽部(くらぶ)」、そして「病後児保育スペース」もあるため、高齢者の方や子どもたちが交流できる空間が自然とできていました。

地元を離れて気づいた野菜の力が原体験

宮中さんは、石川県を離れて仕事をしていた際に、地元から送られてきた野菜に力をもらい、あらためて地元の魅力に気づいたそうです。その経験から、地域に何か貢献できないかと考え、福祉の仕事と地元の自然栽培技術を融合させ、農福連携に携わるようになったといいます。

実際に、宮中さんの取組の中心となる自然栽培というのは、羽咋市が市をあげて取り組んでいる農薬も肥料も使わずに作物を育てる栽培方法のことを指します。「村友」では、自然栽培を取り入れて、米と大豆とさつまいもを主に栽培しています。

オレンジ色の中身が特徴の幻のさつまいも「兼六」

自然栽培は、除草剤などを一切使用しないために、雨や地形など、自然そのものと向き合い農業をする必要があり、宮中さん自身も学んだことが多かったそうです。

「自然栽培と福祉は共通するところがあります。例えば自然栽培では、草や虫が共存する必要がありますが、これは福祉でも同じで、障がいがあるから、高齢者だから、といって一緒は難しいと決め付けるのではなく、共に暮らしていく方法を見つけていけばいいんです」(宮中さん)

農業における課題の一つは、耕作放棄地です。担い手がいなかったり、水へのアクセスが困難であったり、大きな機械が入りにくかったりなど、作業することが困難な土地の多くは手つかずの状態になっています。そこで「村友」では、活動をしなければ耕作放棄地になってしまう土地を譲り受け、機械が入れない場所は手作業を行うなどで作物の栽培を行っています。

収穫も近い大豆畑

一方で、三年前に自然栽培の活動を始めた当初は困難もあった、とのこと。

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