新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、草の根で活動してきたNPOが破産の危機に直面している。国の補助金に頼らない事業型収入で経営してきた団体にとって、イベントの中止は死活問題だ。国はイベントの中止による損失を補填しない考えを示しており、いまこそ共助が求められる。(オルタナS編集長=池田 真隆)
” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]特定非営利活動法人SETは、岩手県陸前高田市にある人口3000人の広田町を中心に地域復興活動を行っている。都内の大学生らが東日本大震災を機に、立ち上げた団体だ。
主要事業の一つに、都内の大学生を広田町に数週間集め、地元住民との交流の機会をつくる取り組みがある。
縁もゆかりもなかった広田町で活動を始めて9年が経た。いまでは、年間で2000人以上の若者が観光ではなく、まちづくり活動をするために訪れるようになった。広田町には3000人が住むが、そのうちの3割弱に当たる800人以上の町民がこの交流事業に参加している。
草の根活動によってつくってきた関係人口から、移住者も生まれた。これまでに累計で25人、来年度は10人以上が移住するという。この春も、約200人の若者が訪れ、約600人の広田町民と交流する予定だった。しかし、同団体では、新型コロナウイルスの感染リスクを踏まえて、25日、全ての交流事業を中止する決断を下した。
長期化すると損失額3千万円
この苦渋の決断により、現在、破産の危機に陥っている。交流事業は補助金をもらっておらず、参加者からの参加費(約8万円)などで成り立っている。
事業中止により参加者には、参加費を全額返済した。そのため、今年の事業収入額の約3割に相当する980万円の損失が出た。同団体はこの事業の売上高を財源に、その年の2〜7月までの人件費と管理費に充てているので、半年分の人件費と管理費が消えたことになった。
さらに、もし現在の状況が夏まで続くと、合計で2800万円以上の損失となり、所有している資産を売却して凌ぐか、破産せざるを得なくなるという。
寄付呼びかけ初日で100万円
同団体では27日、活動を継続していくために、寄付集めサイト「syncable」で寄付を求めた。3月末までに200万円、7月までに500万円が必要だ。28日時点では、すでに100万円を超す寄付が集まっている。
同団体代表理事の三井俊介さんは、「町の皆さんと歩んだ9年間で、 たくさんの笑顔がこの町に生まれてきました。なんとか活動を継続させていただきたいです」と切実に訴える。
「共助の受け皿」続々
SETのようにイベントの中止によって経営が立ち行かなくなるNPOを共助の力で支える動きが出始めた。その受け皿は、クラウドファンディングの運営会社だ。
日本で始めてクラウドファンディングを立ち上げたREADYFORは27日、イベント中止による損失を支援する取り組みを始めた。
クラウドファンディングでは、通常は設定した目標金額が集まったときに支払われるが、この取り組みでは、集まった金額が、最短で3営業日以内に振り込まれる。さらに、モーションギャラリーなども支援を行なっている。