現在、日本で活躍する盲導犬の数は900頭余り。これらの盲導犬は、全国に11ある盲導犬訓練所で訓練されています。大阪府千早赤坂村に、視覚障がい者のための総合施設「日本ライトハウス」が運営する盲導犬訓練所があります。盲導犬育成の歩みを聞きました。(JAMMIN=山本 めぐみ)

視覚障がい者のための総合施設「日本ライトハウス」

日本ライトハウスの広報担当犬「盲導犬啓発宣隊デモ犬ジャー」。イベントや講演に出動し、盲導犬の啓発活動に一役買ってくれているという

「日本ライトハウス」は、視覚障がい者の生活を支援する総合施設として、1922年に当事者であった故・岩橋武夫(1898〜1954)さんが大阪市阿倍野区にあった自宅で点字出版に着手したことからスタートしました。

「岩橋も視覚障がいの当事者でした。今よりもずっと差別も強かったであろう時代に『見えない人が見えている人と同じぐらいに社会で活躍できるように』とさまざまな試みを実施した先駆者であり、社会事業家でした」と話すのは、日本ライトハウス盲導犬訓練所の所長、田原恒二(たはら・つねじ)さん。

「彼は大阪の生まれで、早稲田大学在学中に網膜剥離のため失明しました。中退後、故郷に戻って関西学院大学文学部英文科に入学し、3年後に現在の日本ライトハウスの創業として位置づけられている『点字文明協会』を立ち上げ、点字出版事業に着手。卒業後は大阪市立盲学校の教師として教鞭に立ち、その後、名門大学として知られるエディンバラ大学(スコットランド)に留学して学位を受け、帰国後は関西学院大学の英文学部の講師としても活躍しました」

日本ライトハウス盲導犬訓練所の皆さん。右から所長の田原恒二(たはら・つねじ)さん、訓練士の室田さん、犬舎スタッフの池田典生(いけだ・のりお)さん、事務スタッフの岩本菜穂子(いわもと・なほこ)さん

「目が見えないことによる問題を解決するためのサポートがしたい」とできることは何でもやったという岩橋武夫。現在、「日本ライトハウス」は視覚障がい者を主に、他の障がいのある重複障がい者への支援も行っています。

「この100年で医療が進み、先天的な視覚障がいは少なくなってきました。一方で人生の半ばで失明される方はいらっしゃいます。また、時代が変わり失明しても職場に戻られる方もおり、ニーズは多様化しています。そういった方たちへの支援を行っています」

ヘレン・ケラーを日本に2度招待

1937年、ヘレン・ケラーが初来日した際の一枚。中央左が岩橋さん、中央右がヘレン・ケラー

創設者の岩崎武夫さんは、ヘレン・ケラー(1880〜1968)を日本に招いた人物としても知られています。

「ご存知のようにヘレン・ケラーは、見えない、聞こえない、話せないという三つの障がいをもっていました。それでも世界各地を訪れ、障がい者福祉の発展に尽力した人物です」と田原さん。

「岩橋は、視覚障がいだけではなく他の障がいもあるヘレン・ケラーさんが、それでも精力的に生き、活動する姿を知って『日本の視覚障がい者のためにも、メッセージを伝えてほしい。彼らを元気付けてほしい』と来日講演を依頼したのでしょう。講演は大変好調だったようで、彼女は1937年と1948年の2回、来日しています」

盲導犬と歩んだ50年の歴史

盲導犬事業が始まった頃の一枚。「1970年頃、オーストラリアで研修中の写真です。駐車している車をよける訓練をしています」(田原さん)

盲導犬が視覚障がい者をサポートするための福祉事業として取り組まれるようになったのは、20世紀に入ってから。第一世界大戦で負傷し、失明した軍人をサポートするために、1916年にドイツに盲導犬訓練学校が設立されたのがその始まりだといいます。

「『日本ライトハウス』の盲導犬育成事業は、事業の一つとして1970年に彼の息子で同じく視覚障がいのあった岩橋英行(いわはし・ひでゆき)がスタートしました」と話すのは、犬舎スタッフの池田典生(いけだ・のりお)さん。

「1973年に念願の第1号の盲導犬『リンダ』が誕生し、現在では全国各地でここを巣立った盲導犬が活躍しています」

日本ライトハウス第一号の盲導犬「リンダ」。「写真は心斎橋周辺だと思われます」(池田さん)

訓練にあたって心がけているポイントを、訓練士の室田(むろた)こころさんに聞きました。

「一頭一頭が楽しく、気持ちよく訓練できているかどうか、きちんと伝わっているかどうかは意識していますね。厳しくすることも時には必要ですが、とにかく褒めることを大切にしています」

「『道を道なりに歩く』ということは、実は犬にとっては非常に難しいこと。ペットのワンちゃんを見ているとおわかりいただけると思うのですが、道端で声をかけられたらその人の方に興味がいくし、葉っぱが落ちてきたり、ボールが飛び出てきたり、おいしい匂いのするものが落ちていたり…、何かあればついそちらに気がいってしまうのが本能です。ただ、盲導犬としては、それは許されません」

「どんな障がい物があっても、それを避けて『道を道なりに歩く』ことから訓練していきます。そのためにはまず『人と歩くことは、楽しいことなんだ』ということを犬が体得していかなければなりません。そのなかで細かい訓練、たとえば交差点があれば止まる、段差があれば知らせる…、こういったことを具体的に教えていきます」

「どんな場でも動けるように」訓練は街中で行う

訓練の様子。「訓練は主に街中で行っています。写真は駅まで向かっているところです」(室田さん)

盲導犬として視覚障がいのある方がどんな場にいっても動けるよう、訓練は実際に街に出て、人通りのある場所で行っているといいます。「訓練開始から3ヶ月ぐらいは狭い範囲で訓練を行い、半年ほど経つと行動範囲を広げます」と室田さん。

「訓練士がアイマスクをつけ、訓練中の盲導犬と一緒に電車やバスに乗り長距離移動して、そこから最寄りの駅に帰ってくるといったより実践的な訓練を行います。車も自転車も人も通らないところで訓練をしても、それはかたちだけの訓練にしかなりません。なぜなら、その時々の交通状況によって対応も異なれば、たとえば救急車がきたり、車が思いがけず至近距離を通ったり、もっといえば突っ込んできたりといったことも実際には起こりうるからです。実際に訓練のなかでは、車が突っ込んでくるシーンを再現します。事故には遭わないことが一番ですが、万が一何かあった時、どう動くべきなのかを犬に教えるためです」

厳しい試験をパスしたものだけが、盲導犬になれる

訓練中は、ハーネスに「盲導犬訓練中」のカードをつける。「卒業すると『盲導犬』のカードをいれます」(室田さん)

訓練犬のなかには盲導犬に向いておらず、キャリアチェンジを余儀なくされる犬もいるといいます。

「生まれて間もなくはパピーウォーカー(生後間もない盲導犬の卵たちのお世話をするボランティアのこと)のところで生活しますが、訓練所に戻ってきた時に1週間かけて向き・不向きの適応性をテストします」と田原さん。

「性格というよりは、本能的な素質ともいえるかもしれません。その後、テストに合格した犬だけが盲導犬の訓練を受けていくことになります。訓練の途中で盲導犬の道を断念せざるを得ないこともあります」

「視力がない方の場合は、『犬と目を合わせる』ということがありません。どれだけ飼い主のことを見ても目が合うことがなかった時、それを『拒否されている』と感じ、こわがってしまう犬もいます。そういった時にどうマッチングさせていくのか、無理やり合わせていくのではなく、互いに1日1日を積み重ねながら、じわじわとうまくいくこともあります」

「まだ歩こう」「また歩こう」、そう思わせてくれる盲導犬

訓練所内には、盲導犬の貸与を希望する方と盲導犬が寝食を共にしながら訓練を行うための部屋も完備されている。ここで2〜4週間力を合わせて訓練し、晴れて盲導犬ユーザーとして、そして盲導犬として社会的に認められる

「視覚障がいのある方のなかには、仕事に行きたい、外に出たいと思っているのに、見えないことが障がいとなって家にこもっている方も少なくない」と犬舎スタッフの池田さん。

「中途失明の方は特にそうで、外に出たくても恐怖の方が先に来てしまいます。でも、盲導犬と体験歩行をしたり触れ合ったりするなかで、見えている時と同じ感覚が戻ってきたりすると『あっ、やってみよう』と思ってくださったりする。その方が外に出ていく一歩を後押しするような盲導犬を、今後も育成していきたい」と話してくれました。

「盲導犬と歩くことは、白杖で歩くのとはまた違った感覚がある」と、所長の田原さん。

「杖だけを頼りに歩くのは神経を使って消耗しますが、盲導犬と歩くことは安心感と爽快感があって『まだ歩こう』『また歩こう』と思える。歩くのが楽しいと思える感覚があります。人には話せなくても犬には話せたりすることもあるし、プラスの面とマイナスの面とありますが、周囲の人には盲導犬といることで関心を持ってもらえるという点もあります。
盲導犬を連れていることで、ユーザーさんがレストランなどで入店を断られるといった問題もまだまだあり、課題はありますが、盲導犬がいることでその場を和ませてくれる。『盲導犬っていいな』と思ってくださる方を増やしていきたい」

盲導犬育成を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「日本ライトハウス盲導犬訓練所」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。
「JAMMIN×日本ライトハウス盲導犬訓練所」コラボアイテムを買うごとに700円がチャリティーされ、盲導犬育成に必要なフード代や医療費、訓練のための資金として使われます。

「JAMMIN×日本ライトハウス盲導犬訓練所」4/6~4/12の1週間限定販売のコラボアイテム(写真はベーシックTシャツ(カラー:キナリ、価格は700円のチャリティー・税込で3500円))。アイテムは他にパーカー、トートバッグやキッズTシャツなども

JAMMINがデザインしたコラボアイテムに描かれているのは、ランプを口にくわえた盲導犬の姿。視覚障がいのある方にとっての盲導犬の存在を、そしてまた、視覚障がいのある方たちにとって灯台のような存在になりたいと活動する日本ライトハウス盲導犬訓練所の存在を表現しました。

チャリティーアイテムの販売期間は、4月6日~4月12日の1週間。チャリティーアイテムは、JAMMINホームページから購入できます。JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

盲導犬と共に歩んで50年。視覚障がい者の一歩を後押しする盲導犬を育成〜社会福祉法人日本ライトハウス 盲導犬訓練所

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしている京都の小さな会社です。2019年11月に創業7年目を迎え、コラボした団体の数は300を超え、チャリティー総額は4,300万円を突破しました!

【JAMMIN】

ホームページはこちら

facebookはこちら


twitterはこちら

Instagramはこちら




[showwhatsnew]

【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをLINEでお届け!】
友だち追加