国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは3月31日、「科学的研究の警告:気候変動は感染症の蔓延を加速させる可能性がある」と題したブログを公表した。「気候変動が感染症のリスクを高める」という専門家の指摘をまとめた論評であり、医学雑誌「ランセット」などの科学的論評等を紹介している。論評は、「個人や企業、政府が気候変動問題で連携して取り組むことで、感染症を含む大規模災害を回避することができる」と結んだ。(オルタナ総研コンサルタント=室井 孝之)
オランダの医学雑誌『ランセット』(The Lancet)2019年次報告書によると、地球温暖化、海水温度の上昇、降雨パターンの変化、湿度の上昇などが、マラリアやデング熱などを媒介する蚊にとって整った繁殖条件を作り出している。デング熱の感染が最も深刻だった10年のうち9年は2009〜2019年の間に発生したと報告している。
英国BBCは、米国国際開発庁(USAID)の委託を受けた「PREDICTプロジェクト」によると、「アジアやアフリカの野生動物には、MERS(中東呼吸器症候群)やSARS(重症急性呼吸器症候群)に似たコロナウイルス92種を含む1000種類の未知のウイルスが存在する」としている。
アルトゥーロ・カサデバル(Arturo Casadevall)米国ジョンズ・ホプキンス公衆衛生大学院教授(微生物学、免疫学)は、「自然環境の温度が上昇すると、『自然淘汰』を経験した病原体が人の体温に適応しやすくなり、病原体に対する人体の発熱を防御するシステムが効かなくなる」と述べている。
グリーンピースの論評は、「化石燃料の使用量を減らし二酸化炭素の排出量を減らすために、個人や企業、政府が気候変動の問題にも取り組むことで、地球の温度上昇を1.5度以内に抑え、さまざまな感染症を含む大規模災害を回避することができる」と結び、気候変動と感染症の関連性に警鐘を鳴らした。