【連載】コロナ後の持続可能性、気候変動と再エネへ②

新型コロナウイルスが起きた背景を、再生可能エネルギーを軸に考察していく連載企画第2弾。今回は、「新型コロナの遠因は気候変動にある」と言い切る、国立環境研究所の五箇公一・生態リスク評価・対策研究室室長にインタビューした。五箇氏は、生物多様性についても言及し、「温暖化を引き起こしている人間活動そのものが生物多様性を劣化させ、新型コロナの逆襲を受けている」と警告する。(寄稿・平井 有太=ENECT編集長)

五箇氏は「ダニ先生」の愛称で知られる。研究室には怪獣のフィギアが大量に置かれている

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スペシャル「ウイルスVS人類 〜未知なる敵と闘うために〜」(3月19日放送)を観た。そこで、研究者らしからぬサングラスにリーゼント、しかも長髪という風貌で、「新型コロナの遠因は気候変動をもたらす人間活動。それを引き起こしているのは南北諸国間の経済格差。今まさに崩壊しかけている人間社会の危機を、ウイルスが教えてくれている」という内容を早口でまくしたてる、国立環境研究所・五箇公一先生の姿に引き込まれたのは、自分だけではないはずだ。調べると先生は2012、15年のインタビューや対談ですでに、今回の事態を予見していた。

そのタイミングでみんな電力を最初期から支えるスタッフである、エネルギー女史・上田マリノと先生がSNSで繋がったとの一報が入った。即座にインタビューの段取りを決め、ZOOM取材を敢行した。「ダニ先生」の愛称も持つ先生の思考には、常に生物多様性に重きが置かれている。

「生物多様性のピラミッドは、上に行くほど必然的に強いものほど数が少なくないといけない。しかし人間は、ある意味で最弱動物だったはずが文明を手に入れることによって最強動物となった。人間が生態系の一部として生きるなら、単純にゴリラやチンパンジーの生息数から試算して数千万人が限界。それが今、76億以上いる」

「普通生き物は子どもをつくって育てば自分は死ぬ。人間のように、生殖適齢期を過ぎても生き続ける生き物はいない。その意味で、これほどまでに自分の自我を持てる生き物も他にない。自分の欲求を唯一楽しめるがゆえ、逆の次世代のことなど考える余地がない、つまり人間は『自分さえよければよい』生き物。『次世代のことを考えられない』のが人間の性ということが、非常に困ったところ」

新型コロナウイルスは、人間が自らの存在の存続のためにも利己主義を捨て、「利他的であること」の必要性を教えてくれると先生は説く。

「このコロナは、やっかいなことにそこまで死亡率が高くないせいで、今一つ危機感が伝わりにくい。そこでまた、人間が試されている。このウイルスの特性は『かかった人が死ぬ』という恐怖でなく、『相手を殺すかもしれない』という恐怖。だからこそ『利他行動』が求められ、『自分さえよければ』という利己的な性(さが)から抜け出す必要がある」

「気候変動の問題と生物多様性との共生の問題は一緒に考えないと、根本的な解決にならない。温暖化を引き起こしている人間活動そのものが生物多様性を劣化させているし、そこから今回のコロナウイルスといった逆襲を受けている。しかも、生き物自体は減っていない。多様な種が失われる代わりにゴキブリに蚊、ハエなど、人間にとって都合の悪い生き物は増え続けている。つまり、人間がつくり出した新しく劣悪な環境に適応する連中が増えている」

ダニの視点から世界を見てきた先生の説得力から想起されるのは、粘菌から世界を見た南方熊楠の存在だ。

先生にそのことを伝えると、「私はご覧のようにフィギュアが大好きだし、テレビも映画も大好きで、もっと俗物的。そして、むしろそういった俗物的な楽しみをこれからも享受できる社会が続いて欲しくて、研究を続けて発信を続けているところがある」と、笑われた。

*インタビュー全文はこちら⇒【初回】五箇公一|ダニ先生と新型ウイルス

【連載】コロナ後の持続可能性、気候変動と再エネへ①
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