世界一の投資家として知られるウォーレン・バフェットファミリーが開発した寄付教育が日本で始まった。経営者やジャーナリスト、大学生ら66人が呼びかけ人だ。寄付について座学形式で学ぶだけでなく、実際に1千万円の寄付金を集め、子どもたちが寄付先を決める。(オルタナS編集長=池田 真隆)
ウォーレン・バフェットファミリーが開発した寄付教育の名称は、「Learning by Giving」。寄付体験を通して、寄付の価値や社会貢献のあり方について学ぶことが狙いだ。社会問題を学習した大学生たちが問題解決に有効なNPOを調べて、1団体に付き基金が集めた寄付金100万円程度を寄付する。
2003年から始まった教育プログラムだが、日本には2016年に上陸した。米国以外で実施するのは初のことだ。プログラムの導入を決めたのは、東京学芸大附属国際中等教育学校の6年生(高校3年生相当)。
このプログラムを米国で学んだ、認定NPO法人日本ファンドレイジング協会の職員らが生徒たちに「日本の社会貢献の現状」、「非営利組織の必要性」、「寄付の可能性」などを、ワークショップを通して教えた。その後、都内で活動するNPOを一団体選び、実際に寄付まで行った。
東京学芸大学付属国際中等教育学校の藤木正史教諭は、「社会貢献を学ぶのではなく、社会貢献で学ぶ授業。生徒たちには、社会で生きるうえで必要な力を身に着けてほしい」と期待する。
同校を皮切りに、同団体では様々な学校でこの教育プログラムを導入。累計で、301教室9695人に実施してきた。
このたび、活動をもう一段階上げるため、クラウドファンディングで寄付金を募った。目標金額は1000万円。原則、中高生を対象に、学校単位・希望者単位でグループ化して、集まった金額を分けて、実施する予定だ。
このキャンペーンは日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆代表理事や渋澤健・コモンズ投信会長、ジャーナリストの堀潤氏ら66人が企画した共同発起人として名を連ねる。
企画した趣旨について、日本ファンドレイジング協会の鵜尾代表理事は、「寄付先を子どもたちに決めてもらうこと」と話す。「コロナ禍によってあらゆる活動が制限された。そんななかで、子どもたちにかけがえのない経験をさせたい」。
この教育プログラムを通して自己肯定感の向上も期待できる。鵜尾氏は、「内閣府の調査では、日本の子どもの自己肯定感は国際的に低いことが明らかになっているが、日本の子どもは誰かのために動いたら、自己肯定感が上がりやすいという調査結果もある」と説明した。
鵜尾氏によると、4月から寄付者は増え、10万円の給付金によりさらにその流れは加速しているという。給付金を寄付したいと考える人は5人に1人に及ぶ。鵜尾氏は、「東日本大震災のときも7割の人が寄付をした。311のときは義援金など寄付先が絞れたが、今回はどこに寄付すればいいのか迷う人が多くいる。そんな方には、ぜひ子どもたちに寄付を託してほしい」と訴えた。
・あなたの寄付先を子どもたちが決める。その寄付に3倍のチカラを
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