未曾有の被害をもたらした東日本大震災から半年が経つ。東京電力福島第一原子力発電所の事故は未だに収束の目処が立たず、放射能汚染は周辺住民の生活を一変させた。

同原子力発電所から電力供給を受けていた首都圏及び関東近県の人々は、計画停電や節電対策から日本のエネルギー問題と社会インフラの脆弱性を身を持って体験することとなった。震災を機に露呈した日本が抱える脆弱性を私たちはいかに克服していくのか。復興の青写真を描くヒントが多く詰まっている一冊を紹介する。

『地球大学講義録 3.11後のソーシャルデザイン』(日本経済新聞出版社)は、2009年から2011年の間に毎月開催された丸の内「地球大学」の講義録である。最終講以外は全て震災前に語られた内容だ。

気候変動、温暖化、エネルギー、水、食、森林、高齢化、3Rデザイン、環境政策など、都市と地球の未来を描く上で不可欠なテーマを各分野で活躍する専門家が取り上げている。3.11後に注目を集めた「ソーシャルデザイン」はすでに3年前から始まっていた。


■ 新たなエネルギー安全保障の確立を目指して

安い石油と国際水平分業にもとづく20世紀グローバリズム、そして中央集権型の社会インフラが抱えるリスクを克服するために、新たなエネルギー安全保障の確立が求められている。日本の持続可能な社会構築に欠かせない自然エネルギーや「太陽経済」、知性化する電力網、水素社会構想など、新たなエネルギー社会のワクワクするような未来ビジョンを描く。


■ ライフラインの自立分散化が「いのちの安全保障」システムを構築する

3.11で副次的ながら顕在化したことは、一元的に管理される中央集権型の社会インフラは想定外の災害や気候変動に対応しきれないということだ。大規模インフラへの依存を減らし、水道や電気が止まっても最低限のライフラインは担保される「いのちの安全保障」システムを提案する。

原子力発電のリスク、大都市の震災リスク、日本の沿岸低地のリスクなど、これらは震災以前から語られてきた国家レベルの課題である。本書とともに東北の復興と新しい日本のソーシャルデザインを考えてみてはどうか。(オルタナS特派員=高橋豊美)


写真:『地球大学講義録 3.11後のソーシャルデザイン』(竹村真一・丸の内地球環境倶楽部編著、 日本経済新聞出版社)(税込価格1995円)