先日、民主党代表選があり新代表が決まるとともに、日本の第95代総理大臣に野田佳彦氏が就任しました。野田首相の最初のお仕事は「組閣」です。今回の面々は党内融和と言われるような、どちらかというと保守的な人事であるように感じます。

これに対しては様々な意見がありますが、今回の代表選でもわかるとおり、民主党はいろいろな意見を持った人がいて、派閥、グループを作っています。ですから、そこをある程度まとめて、調整して、落とし所をつけやすくするということが必要であり、このような人事になったのではと推測されます。でないと、震災復興や原発事故、経済対策などの問題への対策がいつまでたっても決まりませんから。

しかし、いきなり鉢呂経産相が辞任してしまったのは残念です。

野田内閣、始まったばかりでこれからですから、今回は皆さんにも直接的に影響がある「税金」という視点から野田内閣を見てみます。野田さんは元財務大臣です。そして代表選の中でも明確に復興増税は不可避であると発言していました。そんな野田さんが首相になったのだから、増税論は加速していくと思われます。

今回の組閣で財務大臣に選ばれたのは、安住淳氏です。世界も経済大国日本の新しい財務大臣は誰になるんだ?と注目していたところ「なぜ彼なんだ?」という反応。有識者の方々からも安住さんは専門性がないという指摘もあります。

じゃあなぜ安住氏なのか?野田首相からすると、今まで財務相として進めてきた増税路線をそのまま進めていきたいのです。そこに自分とは違う方針を持つ人を配置しては、自分が今まで進めきたシナリオ通りに進まなくなります。ですから専門性が低い安住氏を選んだのではないかと思います。専門性が低ければ当然、今まで野田さんが連携を取ってきた財務官僚から色々学ばなければなりません。そう考えれば必然的に今までと大きく変わらずに、野田首相は増税路線を進めやすくなります。

実際に「東日本大震災の復興財源を確保するための臨時増税について、原則5年、最長10年としていた増税期間を、15年から20年超に延長することを検討している」そうです。根本的な問題として、復興増税が必要なのか?という議論もありますが復興は喫緊の問題なのですぐにも収入が増える増税という選択肢はわかります。

しかし、個人的には他の解決策としてアメリカ国債を売るという選択肢もあると考えています。日本はアメリカの国債を大量に保有しており、毎年満期を迎える国債が15兆円あるといわれています。政府はこれまで米国債に再投資してきましたが、再投資せずに円資金に転換すれば増税の必要はなくなrります。これにはアメリカとの関係性の問題があり、とても大きなハードルが存在しますが、こういった問題に対して切り込んでいけるリーダーが今の日本には必要だと思います。

ですが、米国債含む外為特会は財務省にとっての聖域なのです。ということは元財務大臣であった野田首相がここに切り込む可能性は限りなくゼロに近いと思われます。様々な側面から見ても、政治主導ではなく、財務省主導の色が強くなる恐れがある政権かもしれません。まだこれからなのでなんとも言えませんが、だいぶ可能性は高いと思っています。

このような感じで、自分たちの生活に直接かかわってくる「税金」、自分の給料に直接跳ね返ってくる問題だからこそ、政治に対して関心を持ついいタイミングにあるのではないでしょうか。これをきっかけに若い人が政治に関心を持つ人が、少しでも増えるといいなと思います。(オルタナS特派員 北川義樹)