「自転車国際郵便配達人」の四宮博樹さん(32)が、託された27通の手紙の配達を終え、今年4月に3年ぶりに帰国した。

南アフリカにての一枚。写真左から2番目が四宮さん


愛知県でサラリーマンをしていた四宮さんには「自転車で世界一周」の夢があった。計画を立てると、友人から「イタリア旅行で知り合った現地の友人に手紙を届けて」と頼まれた。

「Eメールで数秒でメッセージが届く現代、あえて時間をかけて思いを届けたい人は他にもいるのでは」と思い、ネットで募集した。

会社を辞め、2008年4月に出発。しかし一週間後にインドネシアで、動悸や胸の痛みで動けなくなるパニック障害を発症した。「期待にこたえなくてはというプレッシャーがあった」。5月にいったん帰国。その後1年間四国遍路や、沖縄でサトウキビ収穫アルバイトなど心身のリハビリをする。「夢に再び立ち向かいたい」と2009年8月再出発した。

韓国から始まり、アジア、中東を抜けヨーロッパ、南アフリカまで。タイで「海外赴任中知り合った友人」へ届けると、彼女のマレーシアの親戚へも頼まれた。トルコでは「9年前の留学ホームステイ先」へ「長い間連絡を取らずごめんなさい」と。

カンボジアではアンコールワットの見える静かな草むらに手紙を埋めた。「当時の恋人」が復興支援活動中に亡くなったから。「今も自分は元気で生活しているよ」と。

「『届けなくちゃ』と思うと苦しくなる。手紙は行き先を決めてくれるものと割り切った。だけど、だんだん楽しみになった。手紙を届けると、なぜか彼らが過ごした日々に、自分も一緒にいたかのように思える」

帰国後、一番最後に届けた南アフリカから「ありがとう」とメールが来た。

「その時、ふっとアフリカの時間が流れ込んだ。いつもこんな感覚を届けた先に与えていたんだと思った。手紙とは、つながっているよ、あなたと途切れたくないよという気持ち。世界中の人がそう思っているなら、地球は優しい塊かも」

配達先から日本への返信の手紙も預かっている。今後は旅行の展示会などを行い来場者と語り合いたいという。(遠藤一


http://d.hatena.ne.jp/sekaiisshu/ 自転車世界一周配達日誌



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