バングラディシュで若者による社会変革活動が起きつつある。その火付け役となるのが、同国名門のダッカ大学を卒業した4人の若者たち。平均年齢は22.5歳だ。「この国の現状を変えたい」という思いで今年3月、起業を決意した。
創業した会社は、「SWITCH!(スウィッチ)」。 同社のコンセプトは、『A Youth Platform for Social Development (=ワカモノによる社会変革のためのプラットフォーム)』。
同国が抱える教育格差や医療、農業課題などの様々な社会課題に対して、解決を志す若者・大学生・高校生たちが集い、ディスカッションを通じてソリューションアイデアを導き出す。それらをビジネス、または非営利プロジェクトとしてプロデュースしている。
現在は教育分野にフォーカスし、キャリア教育雑誌の出版事業、文房具のデザイン・製造事業、地方でのブックストア事業などを展開している。
共同創業者の三好大助さん(早稲田大学文化構想学部4年)は同社を設立した背景をこう話す。
「バングラデシュは社会開発の多くを、日本をはじめとする外国からの援助に依存してきた国でした。そうした状況を4年前から現地に滞在して眺めてきて、なぜ、現地の人が立ち上がらないのか疑問に感じるようになりました。バングラデシュには多くの才能と情熱をもった10代、20代がいるにも関わらず、その彼らの可能性と想いが全く生かされていない現状があります。この国の優秀な若者のパワーを、社会問題解決へのエネルギーに変えていくようなことはできないか。そんな想いを抱いて、バングラデシュの仲の良かった大学生友人4人とともに、身近な教育問題解決へ踏み出してみたのが2011年の7月でした」
同国では厳しい社会情勢も災いし、就職難が続いているという。三好さんの友人も大学を卒業したにも関わらず、多くが就職できていない。そのようなことからも、同国への問題意識が芽生えたという。
このような背景から始動したキャリア教育雑誌出版プロジェクトは、創業メンバーのバングラデシュ大学生4人が中心となって2011年3月に法人化を行った。2012年7月現在では従業員6人、大学生ボランティア・インターンも合わせれば34人ものプラットフォームにまで成長している。
現在同社が展開している事業の一つであるブックストア事業は3つの村部地域で3店舗経営されている。
この事業は同社従業員とボランティア・インターンメンバー、そしてその地域の高校生たちとのディスカッションにより、生まれた。
村から本屋まで行くには、片道200タカ(同国通貨で、一般月収は3000〜4000タカ)もかかってしまう。この状況を変えるために、本へのアクセスが難しい地域に建設したという。半分は無料貸し出しサービスを行う「図書館」の顔と、有料書籍販売を行う「本屋」の顔をもつ。
今後は教育分野のみならず、医療や農業などの分野でも積極的に事業開発を行なっていく予定だという。多彩なバックグラウンドの若者たちが議論を行い、それぞれの特性を活かしながら、活動を行っていく。
共同創業者である三好さんは、「今後ももちろんSWITCH!(スウィッチ)には積極的に関わっていくつもりですが、あくまで『主役』は課題の当事者である彼らであり、最終的な意思決定はすべて彼らに任せています。僕自身はそうした『裏方』として、今後もバングラデシュの若者による社会変革プラットフォームつくりに貢献したいと思っています」と、語る。
現在は共同創業者である三好さん以外の日本人大学生も数名携わり、同国大学生を対象としたソーシャルビジネスコンペティションの企画等も進んでいるという。(オルタナS副編集長=池田真隆)
・SWITCH!ファンページ
http://www.facebook.com/Switch2011
・三好大助さんのブログ
http://dicek344.com/