「メダルを獲得すれば不安や迷いが消えて、全てが解決するものだと思っていた。しかし、メダルを獲得しても、満たされた時期はわずかばかりだった。メダルを獲得して1週間はメディアから賛辞の声を頂くが、1年後は、『次は何色を目指しますか?』と質問される。目的地を目指していると、終わりはないのだなと感じた。だから、幸せはメダルを獲得することではないと実感した」

客観的視点はない?

為末氏は陸上選手を引退後、社会人として働いて気づいたことがあるという。「世の中の人は、既存のコミュニティに固執し、あまり外に出ていないのではないか」

岩瀬氏は入社一年目の社会人には、「意識して外に出る」ことを勧める。同期ではなく、あえて、違う会社の人と出会うことの大切さを訴える。物事を「多面的な視点」で見ることができるからだという。

多面的な視点とは、物事の表面だけでなく、裏側も含めたあらゆる角度から見ることである。「真実は一つではないので、世の中のことをあらゆる角度から見て欲しい。様々な認識によってできあがっている情報もある」

マスメディアが伝える情報にも、多面的な視点で向き合ってほしいという。「新聞を読むときにも、すんなりと情報を受け入れないで、その記事を書いた人の認識はどこにあるのかを常に疑ってほしい」

今までは、記事の情報だけに目を配り、記者の認識まで意識していなかったが、自身がマスメディアに取り上げられるようになって、記者の性格や知的レベルなども意識しながら読むようになったという。

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