「日本の伝統を次世代の子どもたちにつなげたい」--0から6歳の伝統ブランド「aeru(和える)」代表の矢島里佳さんは、伝統産業への想いをこう語る。「徳島県から、本藍染めの出産祝いセット」「石川県から、山中漆器のこぼしにくい器」など、古き良き日本の伝統技術と現代の感性とを和えたaeruの商品は、aeruスタッフ、職人やデザイナーとの二人三脚によって生み出される。「子ども目線で作られたホンモノを通し、子どもたちの豊かな感性や価値観を育むお手伝いができれば嬉しい」と話す矢島さんに、aeruにかける想いを聞いた。(聞き手・オルタナS特派員=清谷啓仁)

職人さんと意見を交わす矢島里佳さん

■21世紀の子どもたちに、日本の伝統をつなげたい

--aeruの活動について教えてください。

矢島:日本の伝統技術と現代の感性とを和えたベビー・キッズ商品を、職人さんたちと一緒に作っています。伝統産業品というと高価で馴染みのないものに思われることが多いですが、かつては日常生活に深く溶け込んでいたものでした。日本人の感性は日常を通して自然と磨かれてきたのですが、いまではそうした光景も見られなくなってきました。

aeru設立当時から抱いているのは、「21世紀の子どもたちに、日本の伝統をつなげたい」という想いです。感性の豊かな幼少期にこそ、ホンモノの日本文化に触れることが大切だと私たちは考えています。

--「和える」とはどういうことでしょうか。

矢島:日本古来からある言葉で、「お互いの良い部分を惹き出し、新しいものを産み出す」という意味があります。日本の伝統技術と現在の感性とを和えるということは、ただ単にコラボレーションをするといった表面的なものではありません。私たちは伝統技術、そして子どもたちの発達や成長に合わせて必要なモノの本質に目を向けることを心がけています。そうしたことを深堀りした上で生み出されるのが、aeruの商品なのです。

■一生使えるものを最初から

--モノづくりに込める想いは。

矢島:私たちは「誰のための商品か」ということを必ず明確にしてからモノづくりに取り組んでいます。コップであれば2歳以上の子ども、器であれば生後6カ月以上の子どもというように、誰のためにどんな機能が必要なのかを考え抜いたモノづくりをしているので、ブランドの軸がブレないのです。

そして何より大切にしているのは、機能性とデザイン性、そして日本の伝統技術、それら3つすべての均衡を保って商品に取り入れること。ここに関しては一切妥協できないですね。私たちが商品を届けるのは、最もお目の高いお客様である子どもたちなので。

--子どもたちが最もお目の高いお客様というのは興味深いですね。

矢島:子どもたちにとっては、値段もブランドも関係ありません。自分が使ってみて、良い物なのかどうかということを本能で感じ選んでいるのです。例えば、aeruのこぼしにくい器を使ってくださったお子さんのお父さんから、「野菜嫌いだった子どもが、この器を使えば食べられるようになった」という話を聞かせていただいたんです。科学では証明できないことかもしれませんが、作り手の魂や想いが器にこめられているのだと思います。子どもたちはそういうことを敏感に感じることができるんですよね。

--aeruの商品は、0から6歳以外の人たちにも使われているようですね。

矢島:「0から6歳の伝統ブランド」というメッセージをaeruに込めていますが、これは0から6歳のときだけということではなく、一生使えるものを最初から使いましょうということなのです。職人さんの手仕事は一生ものですので、それに対して普遍的なデザインを心がけています。年齢の区別なく、子どもも大人も使いたいと思えるデザイン、使いやすさを大切にしています。ベビー・キッズというカテゴリーで作られる商品ですが、結果的にはユニバーサルデザインとなっているのです。

aeruのコップや器を家族3~4人分買っていただいたり、介護の現場でも使っていただいたりと、ブランドの広がりを感じています。ベビー・キッズ向けのブランドとして認知されてきたaeruですが、「0から6歳のときから一生使えるものを大切に使うライフスタイルを提案するブランド」として成長していきたいですね。

こぼしにくい器を使ってご飯を食べる子どもたち

■モノの時代から、感性の時代へ

--大量消費社会に生きる私たちは、どのように日本の伝統と向き合うべきでしょうか。

矢島:21世紀の平和な時代に生きる私たちは、世界的に見ても間違いなく幸せな境遇にあります。その中で感じることは、まだ私たちは20世紀の「モノの時代」を引きずっているのではないかということです。つまり、自分たちの利便性が最優先ということですよね。安ければいい、使えればいい、たくさんあればいい、という時代は終わりました。21世紀は感性の時代だと私たちは思うんです。本当に良いものを自分の感性で選りすぐり、それを長く大切に使い、次世代に受け継いでいくことってとても素敵な生き方ではないでしょうか。

--価格の意味合いも変わってきますね。

矢島:aeruの商品は表示価格だけを見ると、安いものではないかもしれません。ですが、「それを一生使えると考えたら、同じように高いと感じますか?」ということを、私たちは提案していきたいのです。20世紀はモノの時代。大量生産・大量消費型で、限界まで安く作ることに挑戦してきた時代でした。しかしその結果、ものづくり企業の中に負の循環が生まれてしまい、衰退の一途をたどってしまいました。

21世紀は感性の時代。少量高品質なものを自分の感性にしたがって、しっかりと選び抜いていく時代だと思います。だからこそ、子どもの時から一生大切にしたいと思えるものを子どもたちに贈りたいという和えるの考え方が、これからの時代の大きな流れになっていくのではないかと感じています。

--今後の展望は。

矢島:「日本の伝統を次世代につなぐ」という創業からの想いは根底にしながら、aeruは成長とともに文化を生み出し続けていく企業でありたいと思っています。幼少期から日本の職人さんが作ったものを使うということが、いまは特別なことのように思われていますが、良い意味で当たり前にしていきたいですね。

”本”当に子どもたちに贈りたい日本の”物”=ホンモノに、多くの子どもたちが触れられる環境づくりをしてきたところ、子育てを通して改めて日本の伝統の魅力に大人も気がつき始めてくださっています。aeruはこれからもベビー・キッズブランドという枠組みは変えず、けれども家族みんなで使っていただけるものづくりを続けていきたいと思います。人々が日本の手仕事に当たり前に触れられる、豊かなライフスタイルを提案し続けられるaeruでありたいと願っています。

・0から6歳の伝統ブランド”aeru”(和える)
http://a-eru.co.jp