霞ヶ関でエリート街道を歩んでいた男は、ベンチャー企業を立ち上げて、若手リーダーの育成に人生を賭けた。その男とは、青山社中(東京・港)の朝比奈一郎筆頭代表・CEOだ。リーダーシップを、「指導者」ではなく「始動者」と定義し、「自分なりの成功を追え」と塾生に伝える。(聞き手・オルタナS副編集長=池田 真隆)
――朝比奈さんは、2011年から青山社中リーダー塾を始めています。「リーダーシップを持った人材」が生まれてこないことを問題視していますが、その要因はどこにあるとお考えでしょうか。
朝比奈:そもそも、リーダーシップの定義についてなのですが、私は、「変革に向けたアクションを取ること」だと考えています。リーダーのことを、世間一般では、指導者とも表記して人の上に立つ人というイメージが強いのですが、むしろ、率いる人の数は関係なく、「始動者」だと理解してみてください。
始動とは、前例や掟を乗り越えて、動くことだと思います。前例やこれまでの枠組みを越えてチャレンジする人を、分野は関係なく増やしていきたいと思っています。
――チャレンジできない社会的背景はどこにあるのでしょうか。
朝比奈:社会全体が、戦後の高度経済成長を経て、かなり硬直化してきたことが要因の一つでしょう。戦後、焼け野原になっていたときには、始動力を発揮する人が多数いました。
しかし、時代を重ねて、いろいろなものが硬直化してきました。たとえば、政治では、保守の政党に入り、当選を重ねて大臣になる。教育では、良い学校に入り、良い会社に入る。「何をするか」よりも、「何かになる」ことが中心になっている。
人はみな、小さいときから、「成功したい」と思っているものです。しかし、自分の成功とは何だろうかと深く突き詰める時間を持てているでしょうか。お金や社会的地位など、分かりやすい成功に縛られていませんか。それらを完全否定しているわけではありませんが、その成功は、本質的な問いへの答えにはなっていません。
もっと大局観を持って、考え抜くことが必要だと思います。自分の中で、「成功」を決めたときに、初めて始動力が発揮されるのですから。
――官僚を辞めて、御社を立ち上げました。エリート街道を捨ててまで、若者にリーダーシップを教える思いとは。
朝比奈:このまま霞ヶ関の官僚でいるよりも、起業したほうが、政策立案にしても人材育成にしても、本質的にはリーダーシップを発揮できて、日本を良くしていけると思ったからです。
経産省で財政やエネルギーなどさまざまな政策に携わっていましたが、朝から晩まで今までのやり方で、霞ヶ関で働いていても、日本は良くなっているとは思えませんでした。
日本に欠けているものは、人材と政策です。この二点について、本質的に良くするためには、地位を求めて政治家や官僚に安住するより、そして、批評家や研究員になるより、今のような形で動き出さなくてはいけないと決断しました。
社会一般のリーダー像は、例えば学生で言えば、部活のキャンプテンや学級委員だと思います。何となく生まれながらのリーダータイプがそうした地位につきます。しかし、うちの塾では、リーダーは、「地位ではない」「生まれつきではない」と教えています。
リーダーは、本質的には地位は関係なく、周りの人を取りまとめる能力も関係ない。ガンジーやキング牧師でも、始めから、地位という意味でのポジションを目指したわけではありません。彼らは、黒人の権利を得るために、インド独立のために、まずは一人で歩き出しました。だから、地位ではなく、むしろ強い思いが不可欠な要素です。これまでの前例や枠組みを乗り越えていけるほどの。
今の日本には、少子高齢化や財政問題、地方の過疎化など課題が山積しています。これらを解決していくためには、人間がやるしかないのです。「やりすぎる人材」が必要です。
――塾では伝記を使っていますが、その狙いとは何でしょうか。
朝比奈:伝記を使う講義は、全講義70時間のうち14時間あります。カエサルや坂本龍馬 など、さまざまな偉人の伝記を扱いますが、一定の成功モデルを教えているということではありません。
伝記を使う理由は、どんな偉人も、変革に向けて、どこかのタイミングで無謀なチャレンジをしていることを知ってもらうためです。たとえば、カエサルだと妻との離縁、坂本龍馬だと脱藩などです。これらの無謀とされたアクションから、道が開けることは多くあります。
――若者へのメッセージをください。
朝比奈:大局観を持って、一人でも多くの友と議論してほしい。受講生には、「お互いに土足で踏み込む関係になれ。失礼なこと含めて言いあえる関係になれ」と伝え続けています。そういうところから、やるべきことややりたいことが見つかってくることが少なくないからです。
自分なりの成功とは何か。世間の声に流されず、無謀なチャンレンジをして、君だけの人生を経験していきましょう。
朝比奈一郎:
1973年4月生。東京大学法学部卒業。ハーバード大学行政大学院修了(修士)。97年経済産業省(当時、通商産業省)に入省。2003年、新しい霞ヶ関を創る若手の会(NPO法人プロジェクトK)を立ち上げ、初代代表に。2010年同省を退職し、青山社中を設立。著書に、『やり過ぎる力』(ディカヴァ-・トゥウェンティワン)などがある。
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◆無料説明会の開催日時(お申込みは下記リンクより御願い致します)
2月11日(水・祝)14:00ー15:30 概要説明・模擬授業・質疑応答はこちらから
3月12日(木)19:30ー21:00 概要説明・模擬授業・質疑応答はこちらから
4月4日(土)14:00ー15:30 概要説明・現役塾生交流会・質疑応答はこちらから
4月11日(土)14:00ー15:30 概要説明・現役塾生交流会・質疑応答はこちらから