タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆薪ストーブ

絞った新聞紙が燃え上がるのが耐火ガラスの小窓から見えた。新聞紙の火が回りゴーッと唸った。それがパチパチと言う音に変わったから小枝に火が移ったのだ。

靴のままの末広が台所からジョニーウォーカーのビンとグラスを二つ持ってきた。啓介にその内の一つ、背の高い方を渡し、ウイスキーを半分ほど注いだ。自分のグラスにも注ぐと何も言わずに二口で飲み干した。啓介も水が止まっている事を実感しながら飲み始めた。ストーブからとウイスキーからと部屋に煙の臭いが漂ってきた。

ストーブ

トントントン、誰かが戸を叩いている。またトントン。「開けてやってくれ」末広に言われて啓介が入口の戸を開くと、バースデーが飛び込んできた。まっしぐらに末広の元に走り、滑って転んだ。末広と啓介が大笑いすると犬も尻尾を振って大笑いした。嵐の中を帰ってきた登山者の濡れた厚手のセーターの臭いがした。酒のつまみもなく、二人はただ黙って飲んだ。バースデーは床に残っていた氷を前足で挟んで齧っていた。「オンザロックにするか?」末広が尋ねた。

「ストレートにします」啓介は笑って断った。
静かだった。木のテーブルにグラスが当たる音、ときおり弾ける薪の音。部屋が暖まり、微かに水蒸気が漂い始め、眠くなった。
「布団は隣の部屋の押し入れにある。自分で出して敷いてくれ。このテーブルの上はどうだ?」
多分濡れていない場所はそこだけだろう。「分かりました」啓介は隣の部屋に入った。和室だったが、畳は湿っていた。押し入れの引き戸を引くと薄いマットレスが落ちてきた。マットレスは冷たかったが湿ってはいなかった。

マットレスと毛布を二枚持ってストーブの部屋に戻った。末広はテーブルからグラスを二つ手に持って、立ち上がると、啓介に無言でテーブルの上にマットレスを置けと目で指示した。グラスの一つをストーブの上に置くと自分は椅子を部屋の隅まで引いていくと壁に後ろに頭をゆだねると黙って飲み続けた。
「失礼します」啓介は上着を脱いで椅子の背にかけシャツを脱ぐと、その椅子に置き、ズボンを脱ぐと丸めて枕の代わりにした。
尻からテーブルに上がってマットレスに身を横たえると毛布を二枚顎に下まで引き上げた。
「おやすみなさい」ウイスキーの心地よい酔いと疲れが啓介を眠りの国に誘い入れた。

文・吉田愛一郎:私は69歳の現役の学生です。この小説は私が人生をやり直すとすればこうしただろうと言う生き方を書いたものです。半世紀若い読者の皆様がこんな生き方に興味を持たれるのであれば、オルタナSの編集スタッフにご連絡ください 皆様のご相談相手になれれば幸せです。

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