クラウドファンディングサービスを運営するREADYFOR(レディフォー、東京・文京)で国際協力NGO/NPOの資金調達をサポートする「VOYAGE PROGRAM」を立ち上げ、7600万円以上の寄付を集めた田才諒哉さん(25)は、このほど活躍の場をスーダンへ移した。同社を退職し、認定NPO法人ロシナンテス(福岡県北九州市)に転職した。スーダン事務所で、ファイナンシャル・マネージャーとして働く。国際協力に関心を持ったきっかけ、NGOに転職した理由などを聞いた。(聞き手・Readyfor支局=吉田 梨乃・オルタナS支局スタッフ)

認定NPO法人ロシナンテス、スーダン事務所ファイナンシャル・マネージャーの田才諒哉さん。学生時代にはパラグアイでの教育支援、青年海外協力隊としてザンビアで活動してきた

――国際協力に関心を持ったきっかけを教えてください。

田才:もともと国際協力にはあまり興味がありませんでした。高校時代も理系で、大学2年生でたまたま友達と行ったゼミの説明会にいた先生から話を聞いたときに、その先生がとても楽しそうに国際協力の話をしていて。

「難しそう」「大変そう」というイメージしか持っていなかった国際協力だったのですが、「この人のもとで勉強してみたい」と思いました。それから、児童労働やストリートチルドレンについて勉強し始めたときに、これまでそうした事実を知らなかったことに衝撃を受けて、もっと勉強してみたいと思ったのがきっかけでした。

その先生の影響でパラグアイやザンビアに行くことになり、その先生のゼミで国際協力を勉強できたことで「現場に行くこと」の重要性を知りました。

――現場での活動後、READYFORに就職し「国際協力する人をサポートする側」に回った理由はありますか?

田才:どうしても大きな組織にお金が集中的に流れる仕組みがある中で、小さな組織でもNGOにしかできない活動をしている団体にお金が流れるようにしたいと思い、世の中のお金の流れを変えるため、国際協力団体を応援するVOYAGE PROGRAMを立ち上げました。

NGOの活動を知ってくれる人が増えて、応援してくれる人を増やせば、NGOが現地にもたらす事業インパクトも高めることができると思ったんです。

あとはNGO団体の「横のつながり」をつくりたいという想いもありました。お互いにファンドレイジングのノウハウなどを共有することができれば、より効果的で効率的なファンドレイジングをすることができる。

革新的なファンドレイジングのアイデアが生まれ、寄付者を巻き込みやすくすることで、世の中の寄付に対するハードルを下げて、寄付者を増やすことができるかもしれないと思ったんです。

国際協力団体を応援するVOYAGE PROGRAMのプログラム・オーガナイザーとして多くの団体のサポートを行いました。合計7,600万円以上の支援を3,200人以上の民間の寄付から集めた(VOYAGE PROGRAM 第2期終了時点)

――民間企業を退職し、25歳という若さでNGOに転職しました。転職した理由を教えてください。

田才:民間企業で日本側から、途上国で活動する人を応援する立場にはその難しさと重要性を感じました。ある程度、国際協力業界のファンドレイジングの全体像も見えてきたので、実際にNGO/NPOの立場でその知識を活かしたファンドレイジングをしたいと思うようになりました。現場に行くタイミングも若いうちがいいなと思っていたことも理由の一つです。

――ズバリ、NGOの魅力はなんですか?

田才:寄付金を元に活動しているところに魅力があると思います。皆様からの寄付から事業が成り立っていて、寄付してくださる「仲間」を増やしながら事業をやっていくシステムが素敵なんですよね。

多くの場合、NGOは少人数で業務をまわしていますが、その背後にはたくさんの支援者がいて成り立っています。「寄付者」というより「仲間」という意識をもっと持ってやれば、NGOは面白いし、もっと盛り上がっていくと思うんです。

寄付をいただきながらやる形態はNGOの他にはない、魅力です。寄付者にとってもお金を出す喜びを得られるようになっていれば、そうしたコミュニティを作っていける魅力があるのはNGOの面白さだと思います。

一方で、NGO側も国際協力に関心がない人にもっと歩み寄る努力をするべきだと思っています。もっとたくさんの人にNGOの活動を知ってもらいたいのであれば、これまでにはなかったようなイノベーティブな訴え方もしていくべきだと思います。

まず知るということが起これば、国際協力に興味を持ってくれる人も僕みたいに増えていくと思うからです。NGOの活動に関心を持ってもらえるようなクリエイティブなアイデアやキャンペーンを今後も作り出していきたいと思っています。

――NGO職員としてスーダンで活動されることに対して、何か意気込みはありますか。
 
田才
:社会人となり、「仕事」として初めて行く現場である上に、25歳という若さで、できないことも多いと思いますが、ただがむしゃらにやるしかないなと思っています。

学生のときは「経験を積みたい」というものも大きかったし、比較的自由な中で現場にいたけれど、今は皆さんから頂いた寄付金をもとに事業を行っていますので、ご寄付を無駄にしないように、自分がやれることを最大限出せるように、責任を感じながら活動しています。

正直に話せば自信も全然ないのですが、でもだからこそ何が起きても全てを受け入れて、がむしゃらにやるしかないと思っています。

スーダンでの一枚。これから田才さんの挑戦が始まります

――田才さんが感じる国際協力の魅力はありますか?

田才:私たちは働いているとなんらかの「課題を解決」していくと思うのですが、国際協力をしているときに出てくる課題は、日本で働いていて出てくる課題よりも複雑に様々なことが絡み合っています。

国も宗教も生活習慣も価値観も違う中で、出てくる課題が難しいからこそ解決しがいがあると思うんです。解決できないようなものも多いけれど、日本で仕事をしていたら出会えないような課題に出会える。

その解決に向けてのプロセスはかなり難しいですが、現地の人と手を取り合って活動していくことは楽しいですし、日本で仕事をしていく上でも活かせる学びがたくさんあります。

――田才さんは普段、どのような気持ちで国際協力の活動をされているのですか?

田才:モヤモヤしながらやっています。実は僕は、国際協力という言葉があまり腑に落ちないんです。パラグアイは日本の真反対にあって、物理的には遠い国であるけれど、僕にとっては心理的にはとても近い国なんです。

変な話ですが、日本で行ったことのない場所よりも、パラグアイの方が近かったりする。心理的に近い国の人を「何とかしたい」というのは普通の心理だと思うんですよね。

家族とか友達の方が、見ず知らずの人よりなんとかしたいと思うのと一緒で。たまたま自分が出会い、関わった人がパラグアイの人たちだっただけなんです。だから国際協力という言葉がしっくりこないんですよね。

あとは、半分使命感でやっています。今までの経験も人との出会いがなければありませんでした。パラグアイで教育支援を行ったのも、READYFORに就職したのも、そもそも国際協力に出会ったのも、すべて人との出会いがきっかけでした。

活動する中で出会った人たちが国際協力に携わる人が多く、とてもお世話になってきたから、それをお返しするなら国際協力の世界でしたいなって思っています。モヤモヤはするのですが、それを面白いと感じている自分もどこかにいて。国際協力は自分の一生の仕事にしたいと思っています。

国際協力への想いについて語る田才さん

――国際協力をいろんな人に広めていきたいですか?

田才:僕は国際協力への関わり方の選択肢が少ないと思っています。日常の中に国際協力に関わる機会が少ないから、学生時代に国際協力をやっていた人も、心のどこかではまだ燃え尽きていないのに、卒業したら国際協力とは離れた世界に就職してしまう。

それを悪いことだとは思わないのですが、そんな人たちほど、どこかの何かのきっかけで変わる可能性を持っていると思うんです。そしてその人たちが変わるきっかけをつくることができるのがNGOだと思っています。

例えばロシナンテスだったら、東京事務所は日曜日も含めて20時までがオフィスアワーなので、社会人も休日や仕事終わりに2~3時間働ける。そんなNGOだからこそのフレキシブルさを強みに、学生も社会人も関われるようなシステムをつくりたいですね。どうやって国際協力に関わる人を増やしていくか、その思考を巡らせることをもっとNGOから積極的に試みるべきだと思います。

国際協力に出会って、今までの素敵なご縁のおかげで色々な経験を積ませていただいた僕が、NGOに還元できることは何かしらあるのではないかと思います。

今までお世話になった国際協力に携わる人への恩返しをする使命感みたいなものを感じていたりもします。みんなが国際協力をやればいいというわけではないけれど、自分が国際協力という世界で自分のワクワクする道を進んでいけたので、僕の進み方を見て、同じようにワクワクを追い求める生き方をする人が増えていったらいいな、とは思っています。

――クラウドファンディングへの意気込みをどうぞ。

田才:ロシナンテスは、スーダン共和国で医療のない地域に医療を届ける活動を2006年より開始し、これまで11年に渡り活動を続けてきました。昨年も団体としてクラウドファンディングに挑戦して、389名の方々からの応援のおかげで、1,431万円以上のご支援が集まり、ハルツーム州にあるアルハムダ村に診療所を建設することができました。ご支援くださった皆様には、改めまして感謝申し上げます。

今回、私たちは今までの活動エリアから範囲を広げ、北コルドファン州というハルツーム州の西隣にある、より医療の届かない地域で「水」「教育」「医療」を軸とした支援活動を展開していきます。

代表の川原曰く「今までにない過酷な環境」の地域で、東京の85倍の広さを持つ州となります。そこで活動をするためには、砂漠を走り抜け、活動地を周ったりするための四輪駆動車(ランドクルーザー)が必要です。今回クラウドファンディングでいただいた支援金は、この車両の購入費のために大切使わせていただきます。

ぜひ下記の画像をクリックして、スーダンで起きている現状、そして私たちの挑戦をご覧いただけますと幸いです。

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