日本が人口減少・縮小社会に向かっている現在、私たちの地域は縮小先進地として参考になることが沢山あります。先進事例を見るなら是非お待ちしていますよ。これは、東北地方太平洋沖地震によって津波被害を受けた、南三陸町歌津地区で私が国際NGOスタッフと緊急支援活動に従事した時のことです。(特定非営利活動法人故郷まちづくりナイン・タウン事務局長=伊藤 寿郎)

沿岸部では「手づくり麹味噌」が主流で、津波は3月11日ですから、【昨年仕込んで10か月先まで食べて行く味噌】と【その後に食べるために仕込んだばかりの味噌】の両方が流されたため、すぐに仕込んでも10か月先まで食べられず、台所を守るお母さんたちの「味噌パワー」が生かせない期間が続くことがわかり、私たちは加工施設を設置することを決めました。

製造に従事を希望したのは、津波で流失した農協の加工場で作業していた50代、60代のお母さんたち6人です。しかし、経営面は農協に任せていたので味噌作りができると意気込んだものの、大きな壁が立ちはだかりました。

①代表者はだれ?②名前はどうするの?③印鑑や通帳の名義は?④仕入先、交渉はだれが?どうするの?⑤経費ってなに?⑥資金は?出資もするの?⑦会計、帳簿はどうつけるの?⑧施設の管理、メンテナンスは?⑨販売方法は?⑩商品のパッケージやデザイン、名前は???⑪売値っていくら???⑫お給料は出るの???なにが、どうなるの???と、わからないことだらけでした。

それもそのはず、誰も経営者になったことが無かったのです。経営する上で当たり前の、収益構造を持つこと、事業目的、生産計画、コスト管理、機材・備品調達、品質管理、仕入・販売・出荷・配送、資金繰り、許認可、従業員採用、労務・勤怠管理、製造物責任、販売先開拓、営業、経理、決算、申告など、壁は高く、何枚もある中での決断となりました。

これは、コミュニティビジネスと言われますが、あくまでも経営体です。

溢れ出る課題をひとつひとつ乗り越えるために、私たちは震災直後の6月から施設建設を進める一方で経営研修を開始し、当初は12月オープンを目指して私とNGOスタッフが講師となって会議や勉強会を開催し、幾日にもわたる勉強を進めました。

途中、代表は誰か男の人になどの話も出ましたが、全て自分たちで必死にやる!と腹をくくったお母さんたちと一緒に立ち向かい、4月の開業に間に合わせることができました。
最近、地域づくりの現場ではコミュニティビジネスやソーシャルビジネスと言われますが、経営はロジックができていたりスキルがあればできるものではなく、懸命に生きる人たちの「やる気と忍耐」が必要で、何よりも「夢」を持っていたからこそ叶えられたのだと今でも思います。

麹の仕込み作業

この点で確実に言えることは『現実を動かせる人、夢を造り出せる人は、その地の現場で生きている人』だと言うことです。経営を知らなかった地域のお母さんたちが、「みんなの味噌作りをお手伝いしたい!」「美味しいと言われた味噌を復活させたい!」と言う夢を追う気持ちが6人の心を一つに束ね、役割を分担し、足りない所は人を頼り、泣いたり笑ったりしながら、漬物をかじってお茶を飲みつつ「夢を紡いでくれる人たちのつながり」を大切に作ってきたからこそ達成できたのだと思います。

今でも、休憩室には漬物とお菓子と、笑顔が山盛りです。ぜひ、カラダと心に優しい美味しい味噌を一度食べてみてください。
   

味噌づくり体験

今回、登米市の“先進事例”についても書く予定でしたが、また別の機会に回します。


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