北海道帯広市に本社を構える「十勝毎日新聞社」は、「勝毎」の愛称で十勝管内の住民に親しまれている。1919年に誕生し来年で創業100年を迎える老舗地方新聞社である。現在、地域での世帯普及率が50%以上であり、地域シェアトップを誇る。今回は、新聞発行にとどまらず、ラジオ局・ケーブルテレビ局を用いて地域の情報を発信している「十勝毎日新聞社」(以下「勝毎」) を取材した。(武蔵大学松本ゼミ支局=岸川 詩野・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)
勝毎は、紙媒体の新聞発行だけでなく、電子版での発行を手掛けるほか、グループ企業がケーブルテレビ局「OCTV」やFMラジオ局「FM-JAGA」を運営する。メディア事業のほかに観光にも力を入れておりホテル経営も行っている。
紙媒体・電子版の新聞発行について、デジタルメディア局長・取締役の伊東肇さんに話を伺った。紙媒体の新聞発行部数の推移と電子版の新聞事業について、帯広地域での人口減少が進んでいるが、新聞の発行部数自体は、大きく減少はしていないそうだ。
紙媒体の新聞と電子版の新聞の大きな違いをこう説明する。紙媒体は家庭に届いた一部を家族で共有できるものだが、スマートフォンでも楽しむことの出来る電子版は、よりパーソナルなものである。その為、スポーツ好きの方のために電子版でスポーツのコンテンツを充実させることによりプラスアルファで情報を伝える事ができる。
勝毎を含めた道内10の新聞社が参加し、互いの記事や情報をまとめたHPである「北海道ニュースリンク」についての話も聞いた。伊東さんは、「デジタルで連携することで、ローカルな情報がネットワークで強化されていけば、新たなメディアになるのではないか」と期待していた。
新聞を直接お客さんの元へ届ける勝毎の販売店では、新聞を配達するだけでなく、「ぴぴっとお手伝いサービス」という高齢者の生活支援事業を運営している。
これは、60歳以上の読者を対象として30分500円で販売店のスタッフが高齢者宅を訪問するサービスである。主な内容は、電球交換や掃除といったものから、別料金で雪掻きなども行う。昨年は、1300件の依頼があったという。
創業100年の信頼と世帯普及率約5割という高いシェアを生かして、住民を直接支援している。
十勝毎日新聞社の社内では、ラジオ放送局「FM-JAGA」(エフエム帯広)と帯広シティーケーブルである「OCTV」を見学する機会をもらった。
FM-JAGAとOCTVの方の話で共通することは、災害時に重要な情報をいち早く伝えるメディアであるという認識から、地域の人々にすぐに情報を届けられるような仕組みになっているということだ。
ひとつの建物の中に新聞社・ラジオ局・ケーブルテレビ局の3つの重要なメディアを合わせ持つ稀な新聞社であり、この3媒体が結集することで信頼できる情報を迅速に住民に伝えられることが大きな強みである。地方紙には、地域住民を情報と長年の信頼で支える役割があることに気付いた。