環境省では社会起業家によるリレートークを行っています。毎月、社会起業の最前線で活躍する起業家を一人ゲストに招き、創業した経緯や事業のつくり方など等身大の物語を話してもらいます。この特集「社会起業前夜」では、ゲストが話した内容から社会起業に大切なキーエッセンスを紹介します。(オルタナS編集長=池田 真隆)

坂ノ途中を立ち上げた小野さん=9月20日、地球環境パートナーシッププラザで

第2回のゲストに登壇したのは、京都で野菜のEC販売などを行う坂ノ途中(京都市)を立ち上げた小野邦彦さん。小野さんが起業したのは2009年。農薬や化学肥料を使わずに育てた約400種類の野菜を取り扱い、インターネット通販やレストランへの卸を行っています。取引している農家は200件に及び、その内の9割が新規就農者です。

会社名を坂ノ途中としたのは、険しい坂道を登るような挑戦をしている新規就農者のパートナーでありたいという思いから。新規就農者は規模が小さいことが多く、安定供給ができないでいます。だから既存の流通には乗りません。

一方で、有機農業など、環境へ配慮した農業を志す人は多く、農業がサスティナブルになるためには、新規就農者の活躍が欠かせないというのが坂ノ途中の考えです。なお日本では、有機農産物は、農産物全体の0.5%程度です。有機JAS制度では、有機農業の定義について、農薬と化学肥料を2年以上(果物は3年)不使用で、かつ、種まきや植え付け前に2年以上許容された資材以外使わない農地で栽培されたものと定義しています。

有機農家の販路開拓を支援するためのウェブサイトも運営しています。それは、「farmO(ファーモ)」という名称で、現在、350以上の有機農家と150以上の流通業者や飲食店オーナーなどが登録しています。

定期宅配の「旬のお野菜」Mセット、12~14種類で3400円(税別)

農家と買い手がそれぞれ自己紹介ページをもち、それをもとにコミュニケーションが生まれ、販売先や仕入れ先の開拓につながります。

2012年には、ウガンダで有機農業の普及を目指す取組を始め、2016年からはラオスで、美味しいコーヒーをつくるメコンオーガニックプロジェクトを展開しています。

小野さんが話した中で、最も印象に残ったことは、「起業してから、やってきたことと、やらなかったこと」を説明したシーンです。やったことは、実にシンプルです。それは、「大切なものを大切にしてきた」ということです。

小野さんは創業当時のあるエピソードを明かしてくれました。レストラン向けの卸から始めたのですが、競合と差別化するために「珍しい西洋野菜、いろいろあります」といった、顧客のメリットをメッセージとして打ち出していました。しかし、その結果、「しましまのナス一袋だけという注文も少なくなかった。都合良く扱われた」と言います。

参加者のなかには高校生の姿も

そこで、営業用の資料にも、顧客のメリットではなく会社が大切にしている言葉を入れました。それは、「未来からの前借はやめよう」です。この言葉は、「環境への負担の小さい農業を広げよう」という意味です。農業は人と自然とのつながりをつくりますが、一方で、土に負担を掛ける方法で農業を続けると、土は痩せ、水質汚染の要因にもなります。砂漠化の原因の8割が、農業にあるとされているのです。

共感してくれる顧客に支えられながら、規模の小さな新規就農者さんとのコミュニケーションに時間も手間もかけてきた。それが、坂ノ途中にとっては大切なものだから、大切にしてきたと言います。小野さんは、「目的やメッセージを明確にせずに経営を続けると、途中でしんどくなる」と強調しました。

事業の目的やメッセージ性を明確にすることで、提携農家とのコミュニケーションが促進され、二人三脚でよりよい品質を求められるようになったといいます。

やってこなかったことは、「広告と飛び込み営業、値下げ」だそうです。いまでは、ネット広告を打ってはいますが、創業から7年間で費やした広告費は20万円程度とのこと。生産者とのコミュニケーションに手間がかかりすぎて、広告や営業にまで手がまわらなかったのだそう。小野さんは、「それでも大切なことを大切にしていたら、お客さんがお客さんを連れてきてくれる」と述べ、志をぶらさないことが重要だとしました。

このリレートークは環境省の主催です。なぜ環境省がソーシャルビジネスなのでしょうか。それは、環境問題を社会問題と同様にとらえて、税金に頼ることなく、民間のビジネスの力で解決してほしいと考えたからです。そのヒントを探るために、毎月このトークイベントを開いています。

次回は10月5日、ゲストは、障がい者雇用を行う花屋「ローランズ」を運営する福寿満希さんです。

■第3回 テーマ「花や緑を通じて働く幸せを感じられ、多様な人材が認め合い活躍できる社会を目指す」


株式会社LORANS.-ローランズ-代表取締役
福寿満希(ふくじゅ みづき)氏
1989年石川県生まれ。順天堂大学卒業後スポーツマネジメント会社に勤めプロ野球選手の社会貢献活動に関わった際に「ソーシャルビジネス」を知る。やりたかったことに気づけた矢先の人事異動をきっかけに、好きな仕事をずっと続けるため起業。ソーシャルビジネスとして花を選び2013年に株式会社LORANS.を設立。花や植物を通じて社会課題を解決することを理念に、フラワーギフトサービスを行うほか、物流段階で廃棄となる花を再資源化しエコ名刺やスケッチブックにする取り組みを行う。会社設立3年目の春、障害者施設にて花のレッスンを行ったことをきっかけに障害と向き合うスタッフの雇用を開始。現在都内に3店舗を運営し、スタッフ数60名のうち45名の障害枠スタッフが働いている。

開催概要
|日 時|10月5日(金)18:30~20:00
|場 所|地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)セミナースペース (東京都渋谷区神宮前5-53-70 国連大学ビル1F)
|定 員|20人
|主 催|環境省(大臣官房 民間活動支援室)
|企画運営|地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)
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