環境省では社会起業家によるリレートークを行っています。毎月、社会起業の最前線で活躍する起業家を一人ゲストに招き、創業した経緯や事業のつくり方など等身大の物語を話してもらいます。この特集「社会起業前夜」では、ゲストが話した内容から社会起業に大切なキーエッセンスを紹介します。(オルタナS編集長=池田 真隆)
第7回のゲストに登壇したのは、プロサッカー選手の本田圭佑の会社ソルティーロ株式会社の社会貢献担当者である二村(ふたむら)元基さん。二村さんは本田へアフリカでのチャリティーサッカープロジェクトを提案し、企画責任者として活動しています。サッカーを通して自分の力で生き抜く力を育むという理念のもと、これまでに1200人の子どもにサッカーを教えてきました。ですが、次のステップに進むことができたのはわずか5人だけ。サッカーで社会貢献に挑む厳しさとやりがいについて話しました。
二村さんが企画した「AFRICA DREAM SOCCER TOUR」は、1年を通して、ケニア(6カ月)、ウガンダ(2~2.5カ月)、ルワンダ(2~2.5カ月)に日本人サッカーコーチを2名派遣し、現地のストリートチルドレンなど貧困家庭の子どもを対象にしたトレーニングを無償で実施するという内容。
コーチの滞在期間の土曜日と日曜日に2時間程度のトレーニングを行います。対象は11~13歳、定員は両日とも50名。この条件で、教える子どもを1カ月ごとに変えながら繰り返していきます。
トレーニングを通して、コーチから才能があると認められた子どもは、ソルティーロ社が提携している3カ国(ケニア・ウガンダ・ルワンダ)のアカデミーに入団できる機会を得られます。
昨年末からこのプロジェクトを行い、これまでに1200人の子どもを指導してきましたが、この中からアカデミーへ進んだのはわずか5人だけです。家庭環境に恵まれていないため、栄養が偏っている子どもも多く、スタート地点からそもそもハンディを背負っているのです。
ですが、残りの子どもたちを見捨てる訳ではありません。二村さんは、「スポンサー企業や個人の協力を受けながら、サッカー以外の才能を伸ばせれば」と話します。このプロジェクトに就くスポンサー各社のサービスなどを生かして、子ども向けに職業体験やスキルを提供する機会をつくることを考えていると言います。
このプロジェクトは2017年末から始まりましたが、W杯でアフリカ相手に得点を決めている本田の知名度は現地(ケニア・ウガンダ・ルワンダ)でも高く、国内外で約90媒体に取材されてきました。
今後の課題の一つとして、事業の採算性があります。本田からも、「チャリティプロジェクトだが、ビジネスとして考えている。採算の取れる事業にしていこう」と言われており、本田自身からは金銭的な支援は受けていません。
事業として続けていくために、共感してくれるスポンサーを募り、かつ、トレーニングする子どもには、自らの力で人生を切り拓く能力を持ってもらうべく、二村さんは日本とアフリカを行き来しています。モチベーションは、「知ってしまったから」とシンプル。
「ぼくらがやりたいことは、サッカーを入口として彼らの将来の選択肢を増やすこと。決まった形の正解はないと思います。一人ひとり違った形で正解があるので、サッカーをすることでそれぞれの才能に気付くきっかけを提供できたらうれしい」と話しました。
◆次回のゲストはモーハウスの光畑由佳社長です。2月6日です。
有限会社モーハウス 代表取締役
光畑 由佳 氏
倉敷出身。お茶の水女子大学被服学科を卒業後、(株)パルコでの美術企画、建築関係の編集者を経て、1997年の2人目の出産後、電車の中での授乳体験を機に、「産後の新しいライフスタイル」を提案するため授乳服の製作を開始。「社会と繋がる子育て」を目指し、子育てしていても外に出やすい社会を提唱している。「いいお産の日」(茨城、青山)の開催や自宅サロン等も通し、お産・おっぱいをサポートする「モーハウス」の活動を始める。ここで始めた「子連れ出勤」を、古くて新しいワークスタイルとして、青山ショップやショッピングセンターにも拡大。これまでに300人以上が実践し、見学会も開催する。子連れスタイルで子育てと社会を結びつけ、多様な生き方や育て方、働き方を提案する「子連れスタイル推進協会」代表理事。茨城大学社会連携センター特命教授。 2012年、本拠地つくば事務所に、様々な人が集い、つながり、新しいムーブメントが生み出す場としての「mo-baco」をオープンさせる。2014年北京、2016年ペルーで開かれた「APEC女性と経済フォーラム」で、日本代表の一人としてスピーカーをつとめた。
|日 時|2019年2月6日(水)18:30~20:00
|場 所|地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)セミナースペース (東京都渋谷区神宮前5-53-70 国連大学ビル1F)
|主 催|環境省(大臣官房 民間活動支援室)
|企画運営|地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)
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