北海道には179の市町村があるが、その内の73の自治体では書店がなく、79の自治体では公共図書館が設置されていない。そんな北の大地で、本の魅力を伝えるべく奮闘する一般社団法人北海道ブックシェアリング。学校図書館づくりの支援や読書環境の整備を行っている。(武蔵大学松本ゼミ支局=湯徳 壮一朗・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)

北海道ブックシェアリングの代表理事の荒井宏明さん

北海道ブックシェアリングは「だれもが豊かな読書機会を享受できる北海道にしよう」という理念のもとに活動している非営利団体である。個人や団体から寄贈された本を新たに必要とする団体や施設に無償提供したり、学校図書館づくりや商店街の古本市の支援などをしたりしている。

北海道全域で読者環境が十分に整備されていないことを知った荒井さんが2008年に教育・図書関係者8人を集め、立ち上げた。

大人の読書習慣がなくなることで子どもにも悪影響を及ぼすと言う。読書をしないで育つことで体系的に物事を考えることが苦手になってしまうのだ。

子どもたちの読者環境を整えようと、北海道ブックシェアリングでは学校図書館づくりに力を入れている。学校図書館向けの見本図書の展示や販売、選書リストの配布などを行う。さらに、学校図書館について調査した独自データや利用促進に向けたアイデアの提供、本の修復など、様々なサポートを行っている。

こうした学校図書館づくりのサポート活動を行う背景として、北海道の学校図書館の環境が他県と比べてよくないということがある。図書関連予算は全国でもワーストで、新規に購入される冊数が少ない。そのため、図書館には昭和に発行された本が大量に並ぶ。子どもたちが新しい本に興味を持っても、そもそも図書館に置いていないという話をよく聞くという。

荒井さんは「学校図書館の利用はいわば日本国憲法のもとに制定された学校図書館法で定められた権利ともいうべきものである。書店のように市場原理のもとに地域からなくなってしまうものではない」と語る。

学校図書館は子どもたちがただ本を読むことのできる場というだけではなく、子どもたちが自ら「答え」を出す力を養う学習ができる場の役割も求められている。その学校図書館の環境整備は、大人たちの都合で疎かにしてはいけないのであると力を込める。

北海道ブックシェアリングでは、今年4月に取次会社と連携。学校図書館の支援を強化している。

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