世界を舞台に活躍するAKQAクリエイティブディレクターのレイ・イナモトさんは、「新しいアイデアを生み出すためには、点と点をつないでいくこと」と話す。今月3日、日本の学生団体と4日間限定のワークショップを共催した一環で緊急帰国したレイさんに話を聞いた。ナイキやグーグルなど世界のハイブランドをクライアントに持つ男の思考法とは。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)
――受賞者には、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルへの登録チケットが渡される全世界の学生を対象にしたコンテスト「Future Lions(フューチャーライオンズ)」のテーマを「5年前では実現できなかったプロモーションアイデア」としていますが、このテーマにした背景を教えてください。
レイ:少しさかのぼるのですが、カンヌ国際広告祭(当時)から2005年にセミナーをしないかとお話をいただきました。1社45分ほどなので、どういうテーマにしようかと模索していました。そこで、このテーマを思いつきました。
しかし、ぼくたち大人だけが考えるのではなく、全世界の若者がどう考えているのかを知りたいと思い、グローバルな学生に向けてのコンペを発案しました。
――去年、1500組の参加者の中から選ばれた5組の受賞者の1組に、日本人が選ばれました。さらに、その受賞者は、昨年から学生団体applim(アプリム)と共催しているこのワークショップから出たそうですね。
レイ:受賞したことは本当にすごいと思っています。そして、その受賞者がここでのワークショップから生まれたのはうれしいことですね。
――去年、このワークショップから受賞者が生まれたことで、今年の学生たちにも期待がかかります。
レイ:ぼくたちを「あっ」と驚かすアイデアを出してほしい。
アイデアは雑でも良いのです。なによりも、やる気があることが重要だと思います。抜け目のない完成しきったアイデアが出れば、それに越したことはないのですが、ハングリーさや思いがないと伝わりません。
――レイさんが作品をつくる上で、教訓にしていることはありますか。
レイ:「いかにシンプルで、いかに心に刺さるか」ですね。このアイデアは今まで世の中に出たことがあるのかを突き詰めます。点をつないで、未来をつくりあげます。
――点をつなぐとはどういうことでしょうか。
レイ:問題を、A~Zまで分けて、それぞれを点でつないでいき、解決していくことです。たとえば、「馬のおしり」と「スペースシャトル」の関係性を知っていますか。
馬車の車輪の幅は、馬のおしりの大きさで測られていました。車輪の幅を参考に、線路の幅が決まりました。そして、線路ができたことで、汽車が走りました。
汽車が走る途中にトンネルを作りましたが、その大きさはスペースシャトルを運べる大きさで作られています。このように、今あるモノができた背景を調べ、つながりを紐解いていくことが重要です。このつながりを理解したうえで、世の中にまだないサービスや仕組みを考案します。
――レイさんの父親は木材家具の「オークヴィレッジ」代表の稲本正さんですが、幼い頃に父親から教えを受けたことで印象に残っていることはありますか。
レイ:モノを作るということですね。家の近くに家具工場があったので、ぼくたちの遊び場でした。10歳の頃から、手伝わされて、よく家具を作っていました。
――これまで数々のクライアントの期待に応えてきました。そこで、社会的問題に無関心な人に関心を持ってもらうためにはどうすればよいでしょうか。
レイ:「社会的問題に関心を持てない」を「A」ポイントに置き、「Z」に来るのが、「関心を持てる」と設定すると、、、B、C、D~に何が来るのか。
社会的問題は幅が非常に広いので、完全な方程式はないと思います。けれど、もしこの問題に対する答えが出たら、世の中のチャリティーはすべて解決すると思いますね。