東京ディズニーシーで同性結婚式を挙げたことで知られる、LGBTアクティビストの東小雪さんの最新著作『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(講談社)が6月2日、発売された。実父からの性虐待を受けたことを告白する、性被害サバイバーとしての自伝だ。薬物依存や摂食障害、そして被害体験とショッキングな事実が続く。著者の東小雪さんに話をうかがった。(聞き手・オルタナS編集部=佐藤 理来)

元タカラジェンヌの東小雪さん

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” open=”no” style=”default” icon=”plus” anchor=”” class=””]――『なかったことにしたくない』。すごくまっすぐなタイトルですよね。これはどのようにして決めたのですか。

東:私と編集者の方と練りに練って決めました。最初は「否認」などといった単語も候補にあったのですが、より伝わりやすい言葉にしたくて、これに決めました。とても気に入っているタイトルです。

――前半部分では生い立ちや、思春期のころのエピソードが書かれていますよね。LGBT支援活動をする東さんもセクシュアリティに葛藤などはあったのですか。

東:もちろん悩みましたね。当時の金沢は今よりもっと情報も乏しくて保守的でしたし。私は友人に恵まれましたが、ひろこさん(東さんのパートナー)のようにずっと1人で悩み続けるケースも聞きますね。私は図書館などで情報に触れることで助けられました。

――知ることで助けられたという感じでしょうか。

東:そうですね。私がカミングアウトをする際にも、LGBT関係の情報にアクセスしている人なら自然に話しやすいということもあります。

自分を偽って生きるというのは大変つらいことです。私は私でいることをやめることができません。思春期や20代のころにこれでいいんだ!と思うことは難しいと思うのですが、本をたくさん読んで自分を肯定できたら良いと思います。

『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』

――サバイバーとして生きていくには、「なかったことにしそうになること」が乗り越えるべき一つの壁なのでしょうか。

東:小学生時代の拒食や乖離といった症状に表れているように、一度は「なかったこと」にするしかありませんでした。小さい私がまず「生き延びるため」に必要なことだったからです。でも、なかったことにし続けること自体がだんだん薬物依存や拒食という形で生きづらさになっていって、やっぱりなかったことにはできないのだと思いました。

――周囲として、何か支えになれることはありますか。

東:性虐待の被害に遭っている子どもを助けることは容易なことではないかもしれません。でも、子どものようすを見て何かおかしかったとき、そういう可能性もあるのだということを頭の片隅に置いてほしいですね。

――社会のこととしてとらえた場合、どういったことが必要だと思いますか。

東:自分はたまたま専門のカウンセリングを受けて回復することができました。気持ちを一つずつ整理していく作業は、やはり一人では難しいことだと思います。でもこれが「たまたま」や「奇跡」頼りでは駄目だと思います。すごい犯罪被害だし、恐ろしいことなのでどんな人でも支援を受けられるような体制が必要です。

性被害を受けたことについて、もちろん自分のこととしてもなかったことにしたくない。社会に対してもなかったことにしないでほしいと思っています。日本では性虐待はタブー視されやすく、情報も広まっていません。すごく大変で恐ろしい犯罪なのに、です。遠い国のことじゃなくて、実際に身近で起きていることです。まず知ってほしいです。

平成25年に検挙された児童虐待数は467件。このうち性的虐待は103件と報告されている。ただし、正確な把握が難しい分野のため、暗数という形でもっと被害が存在する可能性は高い。

性被害の局面では東さんのケースのように家族や親戚が加害者となることも多い。被害を受けた際は、具体的に何をされたかわかっておらず、もやもやを抱えたまま大きくなってから気づくケースも少なくない。

どこか知らない世界の話ではなく、現実に起こっている犯罪なのだ、と知る術として良書だろう。

一方、東さんの自伝的1冊として読むこともできる。渾身の力で書き上げられた本書には、どこかの分野で共感をする部分があるだろう。

今の日本について、東さんは「本当に生きづらい世の中だと思います。たとえば私は同性愛者としての生きづらさを感じることも多いのですが、異性愛者だったら楽だとも思えません。多様性を受け入れる社会になってほしい」と語った。

性虐待という今まで「なかったこと」にされてきた事実を知るきっかけとして、また生きづらさを感じている人への指針として、きっと届く1冊だ。

東 小雪(ひがし・こゆき):
1985年、石川県金沢市生まれ
2005年、宝塚音楽学校を卒業、第91期生として宝塚歌劇団に入団。「あうら真輝」の芸名で男役として花組に配属される。2010年9月、セクシュアリティとともに芸名をカミングアウトし、LGBT支援のための活動を始める。2013年3月には、東京ディズニーリゾートで初の、同性カップルによる結婚式を挙げ、話題になった。また、同年12月に株式会社トロワ・クルールを設立し、さまざまなメディアでの活動を行っている。著書に『ふたりのママから、きみたちへ』『レズビアン的結婚生活』(ともにパートナーの増原裕子氏との共著、イースト・プレス)がある。

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