三井不動産レジデンシャルは11月26日、未来のマンション・コミュニティを考えるイベント「ミライ マンション ミーティング」を開いた。同イベントに登壇したチームラボ代表の猪子寿之氏に、マンション内でのコミュニティを活性化するアイデアを伺った。猪子氏は、「場からコミュニティが生まれるという幻想を捨てないといけない。コミュニティが場を生み出すようになった」と話す。(聞き手・オルタナS副編集長=池田 真隆)
――マンション内での楽しいコミュニティとはどのようなものだとお考えでしょうか。
猪子:大昔までさかのぼると、人は物理的な場所がすべてだった。村から外れた人とは、現実的に出会うことはなく、同じ場所に住んでいる人たちとだけコミュニティをなしていった。けれど、都市化し、1990年代にネットワークという新しい概念が生まれた。
ネットワークは物理的な存在を完全に無視し、ネットによるコミュニティが続々と生まれだした。ネットが普及した今の時代、昔のように場所からコミュニティが生まれることは基本的にないと思う。
――コミュニティをつくりだしているのは、場所からネットに移ったと。
猪子:そうだね。そして、ネットでつながったコミュニティから場が生まれるようになっている。ニコニコ超会議などがそう。
――ネットの浸透で、コミュニティの生まれ方が変わりましたが、今の時代にマンションの商品企画はどう対応していったらよいでしょうか。
猪子:都市のマンションにコミュニティを求めるのならば、今の商品企画を変えて、コミュニティにアプローチすべき。先にコミュニティがある人たちが住み始めると、コミュニティに強い場所になる。そして、結果的に場所がコミュニティを持つようになり、文化が生まれる。
――マンションの商品企画を、コミュニティにアプローチしていくとは。
猪子:たとえば、創作活動が好きなコミュニティに、共同の作業場を持つマンションを販売すれば、多少駅から遠くても住むかもしれない。ニコニコ超会議だって、幕張で開催しているが、あんなに人が集まっている。
それに、街が均質化していることも追い風になっている。まだネットワークが社会になかったときは、街ごとに色があった。
原宿も、渋谷も、代官山も、中目黒も、それぞれに街の色があった。2014年になり、街の特色は増えていくでしょうか?
街の差は少なくなっている。たとえば、1990年代後半のロンドンのクラブと東京のクラブはまったく違うが、今、ロンドンと東京のクラブで流れている曲は同じ。
場所がどんどん均質化していく、これがネットワークの本質。場所が絶対という時代が太古より何万年と続いたので、場所に対して無意識に潜在的な思いを強く持っているが、いったん捨てないと。ネットワークが場所の概念を捨て去ったのだから。
現在は、コミュニティが先にあって、そこから場所が生まれてくる。場所が均質化して、どこに住もうと関係なくなっている。そうすると、コミュニティが先にあったうえで、コミュニティが場所を選ぶようになる。
――先にコミュニティを持った人がマンションに住んでいる事例はありますか。
猪子:意図しているかは別として、当時、話題だったころの六本木ヒルズかな。あそこでコミュニティが生まれたのではなく、コミュニティを持っている人があそこに住んでいるように見えるね。
チームラボ代表 猪子寿之:
ウルトラテクノロジスト集団チームラボ代表。1977 年生まれ、徳島市出身。2001 年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。大学では確率・統計モデルを、大学院では自然言語処理とアートを研究。 チームラボは、プログラマ・エンジニア(UI エンジニア、DB エンジニア、ネットワークエンジニア、ハードウェアエンジニア、コンピュータビジョンエンジニア、ソフトウェアアーキテクト)、数学者、建築家、CG アニメーター、Web デザイナー、グラフィックデザイナー、絵師、編集者など、スペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。サイエンス・テクノロジー・アート・デザインの境界線を曖昧にしながら活動中。
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