写真家のレスリー・キー氏は、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの総称)の啓発企画「OUT IN JAPAN」の撮影を手掛けている。同企画は、2020年までにLGBT当事者のポートレート写真を1万枚撮影するものだ。レスリー氏は、日本におけるLGBTについて「50年遅れている」と話す。その原因と、目指すべき方向性について話しを聞いた。(聞き手・オルタナS編集部=佐藤 理来)
――レスリーさんは、「日本はLGBTについて50年遅れている」と考えていますが、何が原因なのでしょうか。
レスリー:日本ではLGBTのことを正しく理解するための情報が少ない。テレビのバラエティ番組などでは、お笑いタレントとして流行の「オネェ系」というような印象をつけられています。
ニューヨークでは2002年の段階で、LGBTの人たちが当たり前に暮らしていました。今の日本はそのずっと前の段階です。海外に進出するようなクリエイターでもLGBTのことについて分かっていない。だから、「50年遅れている」と感じています。
――レスリーさんはニューヨークでLGBTのことについて学んだそうですが、知識を得たとき物事の見方などに変化はありましたか。
レスリー:ニューヨークでLGBTの知識・常識を得たことで、自分のキャリアや器が大きくなりました。考え方も広くなり、出会いもいっぱい増え、ある意味もっとグローバルに、そして自由になれた気がしました。
ニューヨークにはLGBTだとカミングアウトしているクリエイターがたくさんいました。彼らの作品への評価には、カミングアウトしていても、何の影響もない。でも、日本ではLGBTだとトップクリエイターがカミングアウトしたら、一部の理解のない人たちからはうがった見方で作品を評価されてしまう。だから、カミングアウトしづらくなる。もっと、正当に評価されないと。
――国民の理解も進み、影響力のある人のカミングアウトが増えたら、日本は変わっていきそうですね。
レスリー:数の力で多少変えていけると思います。当事者の撮影で1万人を実現したら、世界の大きな話題になって、今までLGBTを知らなかった人にも届くでしょう。OUT IN JAPANを通してそれを頑張って最後までやりたいなと思っていますし、この企画も1000人まではぜひレスリー・キーで撮りたいです!
才能ある人たちのカミングアウトは、大きな意味があります。やっぱり才能がある人に対しては、才能自体に感動するから、その人の見た目・セクシュアリティーがどんなものであっても、関係ないです。
みんな変だと思わない?LGBTと言うけど、喜怒哀楽や普段の暮らし方など、どこも普通の異性愛者と変わらない。
写真で記録として残すことで、未来の人ともつながることができます。もしかしたら今すぐではなくて、20年や30年後かもしれないけれど、LGBTが当たり前として気付くきっかけになるはずです。
LGBTが受け入れられるような時代が来たら日本はもっと未来がある。僕たちは変えることができるはずだ。
LESLIE KEE:
写真家 シンガポール生まれ。東京ビジュアルアーツ専門学校を卒業後、フォトグラファーとしてデビュー。アート、ファッション、ドキュメンタリー、広告、CDジャケットの撮影、PV映像監督などを中心に東京、PARIS、NY、アジア各国で活動。世界中のスーパーモデルやセレブリティを撮影し続けている世界で知られる写真家の一人。スマトラ沖地震津波被害者支援のため、約300人のアジアのトップアーティストを撮りおろした写真集『SUPER STARS』を発表し、表参道ヒルズでの個展が話題を集めた。東日本大震災チャリティ写真集 『TIFFANY supports LOVE & HOPE by LESLIE KEE』(2012年)が第40回APA経済産業大臣賞、AKB48『恋するフォーチュンクッキー』のジャケット写真が第42回APA美しい日本賞を受賞。本年は宝塚歌劇100周年を記念した写真集「歌劇 2010-2014 by LESLIE KEE -100th Takarazuka Revue-」を発表し、写真展も開催している。彼が手掛ける写真とアートマガジンのシリーズ「SUPER」は世界の企業やトップアーティスト、YOHJI YAMAMOTOをはじめとするファッションデザイナーなどと積極的にコラボレーションを仕掛けており、50冊を超える写真集の出版と写真展の開催、100回を超えるトークショーは電通をはじめとした企業からのオファーも多い。彼自身が発するメッセージやTwitter、Facebook、Instagramは国内外で注目を集めている。(すべてのソーシャルメディアのアカウント:lesliekeesuper)