――外部の人を呼び込むためにはどうしますか。
横田：必要なのは徹底的に本人と話すことだと思って、話すようにしてます。生き方や働き方に悩んでいる人の話を聞き、移住することがその人の解決策になるんだったら提案します。丹波では、社会的課題の解決に向けて活動できるので、そういう働き方がしたい人には向いていると思うんです。だけど、収入や外部からの評価を得たいという人には、向いていないかもしれません。だから、そういう人には都会でがんばればいいんじゃない？と伝えてますね。
――内部の人の中には、保守的な人もいると思いますが、どのようにして外部の声を伝えているのでしょうか。
横田：地域でなにかしようとする場合、いきなり、何かを変えようとしてはいけないし、全部自分でやろうとするべきでもないと思っています。伝えたい相手の状況もあるから、まずはその状況に合わせて方法を考えるべきだし、自分で伝えることができないことがあっても諦めず、自分で伝えなきゃ～なんて意固地にもならず、「丹波の人・もの・ことを良い」と話す人を外から連れてきて、それが良いと思えていない地元の人に誇りを持ってもらえればいいかな。
で、地元の人という括りよりも、ひとりの人として接することも大事だと思ってます。制度や仕組みで地元の人に話を聞いてもらう、なんてことにするのではなく、その人が素直に話を聞きやすい人から、話をしてもらえばいいと思うからです。例えばおじいちゃんは、若い女の子に優しいし、おばあちゃんは若い男の子に優しい（笑）これはどんな土地でも変わらないんじゃないかな～と。
昔、竹細工のおっちゃんに話を聞いてもらおうとしたけど、33歳ヨソモノの兄ちゃんという僕からでは、やっぱりちゃんと話を聞いてもらえなかったこともあります。あるとき、そのおっちゃんたちが地元で凧揚げ大会をすると言って集まったのは、わずか2～3人だった。地元の人は、凧揚げなんか飽きているから、来ないんですよね。
そこで、僕が都会の仲間に声を掛けて、40人ほどが集まってきました。そういうのって、都会にいる子供たちや、その親御さんとかが体験させたいと思っているもんですよね。それでおっちゃんは、これまでにない参加人数に驚いて、「魔法でも使ったのか」とか「きみ宗教団体でもやっとって、それで集めたんかと思ったで」なんて疑われたこともあります（笑）。でも、この一件で、おっちゃんたちは自分たちがしてきたことがこんな多くの人に注目されていると実感できました。これまでの取り組みが間違っていなかったと自信を持ってくれたわけです。
そのおっちゃんたちとの例でいけば、同じように竹細工で流し素麺をしたときもそうですね。ある夏の日、丹波では公園で流し素麺をして、渋谷ではパーティスペースで同時開催するイベントをしました。その模様をスカイプでつなぎ、あと竹細工で扇子を作るワークショップもしたんです。
手作りうちわのキットの製作と、製作の先生役を丹波のおじいちゃんたちに頼みました。そしたら、渋谷の会場にいる若いお姉ちゃんたちが、丹波の60を過ぎたおじいちゃんに向かって、「先生、ここどうすればいいの？」と聞くわけです。パソコンから若い子に話しかけられて、うれしそうなんですよね、おじいちゃんたちが。
それで、その渋谷のイベントに参加したお姉ちゃんが大阪で仕事があったときに、丹波に寄って来てれたことがありました。そのときに、マカロンをお土産に持ってきてくれたんですよ。おじいちゃんは、マカロンみたいな砂糖菓子はまず食べないけど、お姉ちゃんと会えたことがすごくうれしかったわけで、周りの人に「先生と呼ばれた～」なんて自慢しましたね（笑）。
たまに、外から入った人が話を聞いてもらえないなんてことあるんですよね。だけどそれを「この街の風土が悪い」なんて言い訳にしてはいけないし、風土のせいにして逃げてちゃいけないと思います。僕も信用されないことはあったなと思いますし、今だって全然まだまだ信頼に足りないことばりです。でも、そこでへこたれてちゃなにもできませんから。
地域には、もちろん保守的な人もいっぱいいます。でも、そんなことを文句言うのは横柄なことだと思うし、相手が変わらないとか言い出したらきりがないと思います。むしろそこで、ちゃんとその人と向き合って話せば、きっとええ奴やな～と認めてもらえるはずです。
――横田さんが目指す丹波はどのようなものでしょうか。
横田：ずっと言ってますけど、特定の分野でいいので、日本一・世界一を一つずつ目指していきたいなと思っています。例えば、住みやすさ、移住したい街など。メディアに取り上げられるのは、一時的なことだけど、でもそういう瞬間瞬間を通じて、住んでいる人たちが肯定的に、自分たちの暮らしをとらえていけるきっかけがあればいいと思います。
仮に全世界市民に、「この街で住んでいることが幸せか」と聞くことができたら、丹波市民が世界で一番「幸せ」と答えた人の割合が多い地域になりたいですよね。超理想的なこと言ってますけどね（笑）
でも本当にここには、人生の師匠と呼べる人がたくさんいるんです。言葉にするとすごく薄っぺらくなるけど、ホンマにおもしろい人たちなんですよ。だから、人生の岐路に立たされた人や何か悩みを抱えている人は、一度ここに来て欲しいなと思っています。
どんなことで悩んでいるのか聞き、「その悩みだったら、あの人に相談しなよ」って、喜んでマッチングします。そこは何より自信があるんで。
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