「0から6歳の伝統ブランドaeru」を展開する和える(東京・港)は、共に働く仲間(社員)を募集している。同ブランドは、日本全国の伝統産業の職人とともにつくるオリジナルブランドだ。同社は2011年3月に創業、東京と京都に拠点を構える、成長著しいソーシャルベンチャーだ。スタッフの平均年齢は20代後半と、若さとエネルギーで溢れている。矢島里佳・代表取締役は自らの経営スタイルを「感性経営」と言う。東京・目黒にある「aeru meguro」を訪ねた。(聞き手・オルタナS副編集長=池田 真隆)

和えるを立ち上げた矢島さん。「素直さ・粘り強さ・感性の豊かさ」を持つ新たな仲間(社員)を探している

和えるを立ち上げた矢島さん。「素直さ・粘り強さ・感性の豊かさ」を持つ新たな仲間(社員)を探している 写真提供:株式会社和える

――「素直さ・粘り強さ・感性の豊かさ」を、和えるで働く大切な条件に挙げているのはなぜでしょうか。

矢島:多くのことは、入社後に学ぶことができます。例えば、入社してすぐに、和えるの職人さんの元へ行き、モノづくりの現場を見たり、想いを伺う研修を行います。

また、芸術鑑賞会や、社員の家族と私の食事会なども行い、互いの感性を交換しあうところから始まります。このように様々な経験を通して、互いに学び合うのですが、そのために大切な、「素直さ・粘り強さ・感性の豊かさ」この3つの要素は、入社後に教えることが難しい要素だと感じています。ですから、この3つをお持ちの方を探しています。

目黒にある「aeru meguro」

目黒にある「aeru meguro」。次世代に伝統をつなげる 写真提供:株式会社和える

aeru meguroの店内、澄み切った空間に商品が映える

aeru meguroの店内、澄み切った空間に彩り豊かな商品が映える 写真提供:株式会社和える

――感性の豊かさを重要視する理由は何でしょうか。

矢島:感性が豊かであるということは、すなわち想像力が豊かであるということです。私たちは創業から5年のベンチャー企業ですので、前例のない仕事にも主体的に取り組みながら、日々事業を育んでいくことが求められます。そのような中では、自らの想像力を発揮し、初めてのことに挑戦するのを楽しめることが大切だからです。

ですから、なるべく失敗をしたくないという挑戦意欲のない方や、経験がないことに対して想像力を働かせずに正解を求める方は、社風に合わないと思います。

また、和えるの社員の業務内容は、単にモノを販売するだけではなく、全国の職人さんの現場へ伺ったり、普段から対話をしながら、新たな商品を生み出したり、情報発信を行ったり、新規事業に取り組んだりと、1人で担当する業務が多岐に渡ります。そのため、すべての業務のつながりを常に考え、初めてのことでも自ら考え、粘り強く続けることが重要です。

私は、会社を赤ちゃん、社員を家族だと思って経営をしています。会社は法人格ですので、人格を有しています。つまり、人間と同じです。ですから、経営者である私は、和えるくんのお母さん。社員は、和えるくんのお兄さん、お姉さんです。家族のように、自然体でいられる組織をつくりたいので、そのような考えに合う方と出逢えることを望んでいます。

京都にある「aeru gojo」

京都にある「aeru gojo」 写真提供:株式会社和える

――経営者として、「自然体」をキーワードに掲げています。そう考えたきっかけは何でしょうか。

矢島:直感でそのような組織のあり方が良いと思っているのですが、おそらく、10代のころから職人さんと共に過ごしてきたからだと思います。

起業する前は、ジャーナリストを目指していて、全国の職人さんを訪ねていました。職人さんと話し、自然と共存しながら生きる姿勢が印象に残りました。その影響が、会社経営にも生きているのだと思います。

――創業して5年が経ちました。今後の計画について教えてください。

矢島:今は、東京(「aeru meguro」)と京都(「aeru gojo」)で直営店を運営し、お誂え(オーダーメイド)事業である「aeru oatsurae」、ホテルの一室をプロデュースする「aeru room」などの事業を展開しています。創業20年を迎える2031年までには、10個程度の事業を立ち上げて、伝統や先人の智慧を暮らしの中で活かせる社会を、これから仲間となるみなさんと共に生み出すことができれば嬉しいです。

砥部焼(とべやき)でできた「こぼしにくい器」

砥部焼(とべやき)でできた「こぼしにくい器」 写真提供:株式会社和える

こぼしにくい器の製作工程

「こぼしにくい器」の製作工程 写真提供:株式会社和える

■商品の魅力、職人さんの「暮らし」を添えて

2015年8月に入社した伊東さんは前職は金融機関で営業をしていた。働いていくうちに、「お客さまのためになっているのか」と違和感を抱くようになっていったという。「会社の人間として数字を稼ぐことが第一の状況下で、本当に目の前の一人のお客さんと丁寧に向き合うことができているのか、疑問を持つようになった」(伊東さん)。

金融機関から和えるに転職してきた伊東さん

金融機関から和えるに転職してきた伊東さん 写真提供:株式会社和える

そんな中、和えるに出会った伊東さんは、もともと焼き物や染め物など、人の手で丁寧に作られたモノが好きだったことから、その活動に興味を持った。いまは、常時40人ほどの職人さんとコミュニケーションを取り、商品の製作の依頼をしたり、商品開発を行う。店頭にも立ち、商品の販売も行うので、店頭で受けた顧客からの声を、職人に伝えることも大切にしている。

「自分が心から良いと思ったモノを提案できるので、日々やりがいを感じる」と、表情には充実感が伺える。「取り扱っている器やコップを作った職人さんの想いを、お客さん一人ひとりに丁寧に伝えている」。

本藍染の出産祝いセット

本藍染の出産祝いセット 写真提供:株式会社和える

「本藍染の出産祝いセット」の製作工程

「本藍染の出産祝いセット」の製作工程 写真提供:株式会社和える

伊東さんが、和えるでの仕事を通して心がけていることは、伝統と先人の智慧を活かした暮らしについて伝えること。「ただモノを販売するだけでなく、その商品に込められた日本の伝統技術や文化、日々の暮らしでの活かし方について説明しながら商品の魅力を伝えている」。

和える

矢島里佳:
株式会社和える 代表取締役 
職人と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から全国を回り始め、大学時代に日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いから、大学4年時である2011年3月、株式会社和えるを創業、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2012年3月、幼少期から職人の手仕事に触れられる環境を創出すべく、赤ちゃん・子どもたちのための日用品を、日本全国の職人と共につくる“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げる。日本の伝統や先人の智慧を、暮らしの中で活かしながら次世代につなぐために様々な事業を展開。

2013年、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修士課程修了。同年、世界経済フォーラム(ダボス会議)「World Economic Forum – Global Shapers Community」メンバーに選出される。
2014年、書籍『和える-aeru- 伝統産業を子どもにつなぐ25歳女性起業家』を出版。2015年、第4回 日本政策投資銀行(DBJ)「女性新ビジネスプランコンペティション女性起業大賞」受賞。

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