――最後に若い人たちに「働き方」についてのメッセージをお願いします。
あなたたちが憧れているスポーツ選手も経営者も、みんな挫折から這い上がった人たちですよね。挫折を一度も経験しないプロスポーツ選手や経営者っていますか。いませんよね。
要は「リスク」を負わないということは、その時点で理想としている人達の生き方と違うレールに乗るということなのですよ。
これが重要な所で、人生は一回きりだから大胆に行こうよという価値観と、慎重に行こうよという価値観があった時に、僕は迷いなく思いっきり行ってみたい。死ぬ時に、もっと行っていれば良かったなという後悔をしたくない。
「農業に手出さなきゃ良かったな」「お前らにもっと遺産を残してやれたのにな」って笑いながら死んでいくという自信はありますよ。「お父さん、もう少しやれたんじゃないかな」って息子に言われて死んでいくのは嫌だなと思います。
僕は経営者を育てるために自分の部下たちに「お前だったら1億円、失敗していいよ」と言っていました。「好きにやってごらん。どうせ失敗してもいいから。そこでお前が自分で反省さえしてくれれば。お前を育てるために、そんなカネは投げてやるから」と。
やる前に教えるよりは、失敗して反省させたほうが成長しますからね。その投資だと思ったら、数千万円くらいは何でもないと思っています。
――理想としている生き方になるためには、失敗しないといけないということですね。
20代は結果なんか出さないで、「根を張れ」と言いたいです。30代で「葉と茎を広げろ」、40代で「花を咲かせ」、50代で「実をとる」で良いではないですか。それを、日本の若者たちは20代から「実、実!」って言っている。
これは農業をやっているとわかるのです。根を張っていなければ、風が吹いてきたら収穫する前に倒れますから。味も乗りませんし。
根をしっかり張っておくと、肥料を与えなければ与えないほど、どんどん根っこが広がっていくのですよ。なんとか吸い取ろうとすると、トマトも糖度があがるわけです。
うちの会社でいうと、寝る時間と給料が欲しいというのを、「水と肥料欲しがったな」と言っています。「お前はその辺で売っている、つまらないJAのトマトになりたいのか。一等級のフルーツトマトに育てようと思っていたのに」と。
要は、痛めつけていくと良い実がなるということです。「20代は自分を徹底的に痛めつけよう。結果なんか欲しくない」でいいのです。