様々な障がいを持つ仲間たちと海洋プラスチックをアクセサリーにアップサイクルしている私たち「カエルデザインwith REHAS」は石川県の金沢市に事業所があります。昨年のちょうど今頃は、自分たちで金沢の海岸で海洋プラスチックを回収してそれをアップサイクルしていました。(高柳 豊=カエルデザイン クリエイティブディレクター)

石垣島から届いた海洋プラスチック

石垣島の海岸の写真(石垣島 大浜ビーチクリーン @beachclean_ishigaki_ohama)

今では私たちの活動に共感していただく方々が増えて、全国14都道府県、22箇所の海岸から海洋プラスチックを金沢へ送っていただいていて、アクセサリーにアップサイクルさせていただいています。今のところ一番北は北海道の小樽、南は沖縄県の石垣島が南端となります。

石垣島と海洋プラスチックで思い起こすのは、晩年、石垣島の海洋プラスチックでランプを作り続けたヨーガン・ レールのことです。ポーランド生まれのドイツ人、ヨーガン・レールは1972年に日本でファッションブランド「ヨーガンレール」を立ち上げました。天然素材と手仕事に拘り続けたヨーガン・レールは1999年頃に石垣島に移住し、晩年は海岸清掃を日課としていたそうです。

早朝から愛犬と一緒に海岸に行って、様々なプラスチックゴミを拾って、洗って、朝食を食べて、洗って、昼食を食べて昼寝して、夕方にまた海岸でゴミを拾って、夜は洗ったプラスチックゴミに穴を開けてヒモを通して照明を完成させる。それが2014年に石垣島で交通事故のために亡くなったヨーガン・レールの晩年の生活だったそうです。

私が金沢21世紀美術館で『ヨーガン レール 文明の終わり』を見たのは2017年の夏のことでした。衝撃でした。プラスチックゴミや漁網がこんなに美しいランプに生まれ変わり、見る者の心を揺り動かす。

ただ「美しい」という感情ではなく、自分たち人間が利便性を優先し、作り、買い、使い、捨てるという生活が生み出したゴミ問題への懺悔、後悔、哀しみも入り混じり、でもヨーガン・レールの照明の「灯り」は、かすかな希望の象徴のようにも感じたのです。

2017年8月18日 金沢21世紀美術館『ヨーガン レール 文明の終わり』、著者撮影

自然を愛し、手仕事を愛したヨーガン・レールが「最後の仕事」として取り組んだ、プラスチックゴミから美しい照明を創りだす仕事。

彼が残したメッセージを読み、僕は石垣島で独りプラスチックゴミを拾い照明を作っていた彼の気持ちを想像し、悲しく切なく、そして勇気ももらいます。

もしこの展示を見ていなかったら、私がカエルデザインで海洋プラスチックのアップサイクルに取組むことは無かったかも知れません。

もちろんヨーガン・レールの仕事には遠く及ばないでしょうが、私もカエルデザインで多くの仲間たちと取り組む海洋プラスチックのアップサイクルのプロジェクトを自分の最後の仕事だと思っています。

全国から届く海洋プラスチックをアップサイクルしたカエルデザインのアクセサリー

最後に、ヨーガン・レールの著書『On the Beach 1 』の序文「文明の終わり」の最後のセンテンスを引用させていただきます。

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(前略)
醜いプラスチックのゴミを大量に見せただけでは、その恐ろしさを分かってもらえないのなら、私はそのゴミを使って、何か自分が美しいと思うものを作り出す努力をします。ただ美しいだけのオブジェではなく、もう一度人の役に立つ実用的なものに変えましょう。これは、ものを作ることを仕事にしている私の小さな抵抗です。それによって、この大量のゴミに目を向けてもらえるように。私はこれを自分の最後の仕事だと思っています。
2014年9月 ヨーガン レール
『On the Beach 1 』著者:ヨーガン・レール、 小池一子 発行:HeHe
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高柳 豊
エシカル、サスティナブルをテーマに活動するクリエイティブチーム、カエルデザインのクリエイティブディレクター。海外向けコンピューターシステムのシステムエンジニアを経てカルチャー教室で様々な文化教室の企画運営などを経験。その後、フリーランスになってから地域通貨の発行・運営、雑誌の出版編集、地サイダーやクラフトチョコレートなどの加工食品ブランドの立ち上げなど、商品企画、ブランディング、マーケティングなどを手掛けている。企画からデザイン、コピーライティング、写真撮影などクリエイティブ全般に携わる。
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