2011年3月11日。10年という言葉が飛び交い、想いを馳せる時間となっている。
震災以前・以後も災害は起き続け、年々その規模は大きくなり、頻発化している。阪神淡路大震災、そして東日本大震災と、日本の災害ボランティアも発展してきた。災害の専門家として活動する支援団体や災害ボランティアが被災地では欠かせない存在となっている。しかし、同時にその重責はボランティアの範疇を超えたものだ。それでもなお、できることをやり続ける人たちがいる。(文・写真=福地 波宇郎)

西日本豪雨で活動を行う重機ボランティア

災害ボランティアの変遷

阪神淡路大震災、朝日新聞によればボランティア参加者数は216万6千人。その後もナホトカ号や中越地震などボランティアが尽力した場面は数多くあった。

そして10年前の東日本大震災、154万5千人のボランティアが東北へ向かった。現在も活動する災害支援団体の多くが誕生し、官民とも現在につながる災害対応のひな形が作られた。

その支援団体の中でも、経験を重ね、専門的な知識と技術を持ち、長期にわたる復旧・復興にあたる団体が「災害の専門家」として国や自治体と連携を取りながら今も被災地で活動している。

現場で国交省や県と現場の進め方を提案する

災害ボランティアの流れ

災害時はその地域の社会福祉協議会(社協)が災害ボランティアセンター(ボラセン)を運営する。住民からニーズが集約され、それに従いボランティアが活動を行う。泥出しや清掃など様々な作業が行われるが、高所や重機、チェンソーなどが必要な危険を伴う作業や家屋再生などの専門的な作業は行わない。

災害支援団体にはそれらの専門作業を行う団体がある。その一つ、阪神淡路で「神戸元気村」としてうまれ、2011年から石巻を本拠地として10年間で26か所の被災地で活動し続けている「OPEN JAPAN」(OJ)には大工や重機オペレーターがボランティア参加し活動する。同団体は行政や社協と連携し、ボラセン運営補助や避難所での炊き出しなど多岐にわたる支援を行っている。

地元消防士に災害に対応した重機・チェンソーの講習


災害支援団体が担う活動

一昨年の台風15号では屋根の応急補修作業をOJと、同じく阪神淡路をルーツとするDRT、大坂地震で屋根の補修にあたったレスキューアシストなど高所作業経験のある支援団体が自衛隊に対し講習を行った。

また地域を守る消防士による災害対応を目指してDRT、DEF、OJなどの団体が災害時の重機操作やチェンソー講習を消防士に行っている。国も災害対策基本法に、災害対応はボランティアとの協働が必要と掲げている。

また、支援の開始から収束、ボランティアが去ったあと、地域がどうやって復興に向かうかを見通し、全体を調整するコーディネーターの存在が不可欠だ。災害NGO結という団体が先遣役として支援団体や行政と連携を取り、その役目を行っている。

社協の支援相談員として地域を支えることも


ただその先の笑顔を求めて

災害直後は支援団体のSNSやWEBのアクセス数が増えるが、三か月で半減、半年たつと3割以下になるという。報道が途絶え、災害は終わったかのように思われても、半年ではほとんどのことが終わらない。

また民間である支援団体に公費は充てられず、その活動費は日本財団や赤い羽根共同募金などの助成金や個人、企業からの寄付金頼みだ。欧米では災害支援団体を公費などで後押しするが、日本ではボランティアは無償の善意というイメージが強い。災害が広域多発化し、経験と専門性を持ったボランティアの活動は長期化している。そうした長期専門ボランティアにも同じイメージが求められてしまう。

それでも彼らは生活の保障もないまま、テントや車中泊で数か月を過ごし、ただ被災した住民の笑顔だけを目的に動き続けている。

コロナによる人手不足に重機で対応する

新型コロナが災害支援に及ぼす影響

令和二年七月豪雨はコロナ禍での災害となり、各地でボランティアの募集が限られた。専門団体の移動にも制約が掛かり、行動履歴の徹底、自主隔離後のPCR検査を行い現地入りした。また、個人や企業からの寄付金も経済の悪化により減少、支援団体の活動費もひっ迫している現状だ。

人手を頼めない状況下で、被災地域の団体や住民グループと連携、活動のノウハウを伝え、希望があれば助成金の仕組みなど団体設立の支援も行い、地域自身で災害に継続的に対応するための新しい仕組みづくりを行っている。

被災したままの家屋や故郷の風景が変わらなければ、その地域に暮らす人たちの表情や気持ちも変わらない。過去の事例から災害関連死とも密接に関ってくることを知っている支援団体はさまざまな制限の中、住民に寄り添い活動を継続している。

できる人ができる時にできる事を

「災害大国」日本に災害を専任する省庁は無い。現在は内閣府が担当しているが、各省庁からの出向で構成されるため任期が切れれば異動、災害ごとのノウハウが蓄積されない問題点が指摘されている。現場で対応し、そのフィードバックを上げ続けているのがボランティアからなる支援団体だ。

専門性を持つ団体ほど俯瞰して活動を捉え、「自分たちがやりたいこと」ではなく「何がやるべきこと」かを見極める。緊急期であれば重機よりも炊き出しが必要なときもある。技能や機材はあくまでツールとし、地域の住民、社協、行政、と連携し、自分たちが去ったあとのことを考えながら活動している。

あれから10年。今も被災地は日本各地に存在し、そこには復興に向かう住人と、活動している災害ボランティアたちがいる。