■NPOと丸森町が災害協定を締結

毎年異常気象といわれ、今年も例年以上に早い梅雨入りとなった日本列島。6月17日、台風19号被災地の宮城県丸森町は災害支援団体、オープンジャパン災害支援チームと災害協定締結式を行った。(文・写真=福地 波宇郎)

コロナ禍以降、各地の災害で外部からのボランティアが集結しにくい状況が続く。町は復興途上にある今だからこそ、地域の災害対応力を高める取り組みを進め、災害支援専門チームの力がそれを後押しする。

全国の被災地をつなげる支援から

2019年、台風19号による阿武隈川とその支流の決壊、氾濫、そして土砂崩れなどにより甚大な被害を受けた宮城県丸森町。同じく宮城県石巻市を本拠地とする災害支援専門団体、「一般社団法人オープンジャパン災害支援チーム」は丸森町で支援活動を開始、同町社会福祉協議会(社協)と連携し全国から集まったボランティアのコーディネートや災害ボランティアセンターの運営補助、重機を使用したニーズや家屋復旧などの技術系案件、避難所や在宅避難者に向けた炊き出しなどの支援に携わった。

丸森町に集まったボランティアのコーディネートを行う

内閣府の紹介を経て同団体を受け入れた丸森町は初めて経験する大規模災害に、さまざまな対応と災害ボランティアセンターの運営などの課題に直面した。

オープンジャパンはその前年支援に入った、西日本豪雨被災地・愛媛県西予市および胆振東部地震被災地・北海道厚真町の役場、社協と連絡を取り丸森町とつなげた。即座に両社協の職員が派遣され、災害ボランティアセンターの立ち上げを補佐した。

全国の社協に連絡を取り、過去の災害で使用されたスコップや一輪車、備蓄されていた資機材等を調達し災害直後の緊急期対応を行った。

被災者から支援者へ

その後、オープンジャパンは10か月にわたり丸森町で活動、コロナ禍が本格化するとボランティアセンターは休止、その間の案件を長期滞在しているスタッフですすめていった。仮設住宅の支援や家屋の復旧、役場や地域からの依頼による業者が間に合わない公共施設や地域の復旧などにあたった。

2021年7月、令和二年七月豪雨災害が発生。同団体は熊本県内からの支援要請に伴い丸森町での案件を終えると熊本県球磨村へと移動した。丸森町はコロナ禍で職員派遣はできなかったが同団体へ支援物資を託し、同町のホームページ上で被災時の対応を行った各課の連絡先を公開、被災した自治体に向けてなんでも尋ねてほしいと呼びかけた。

山元町で支援に入った「まるもり女子重機隊」

丸森町で被災した母親たちが、重機を自分たちで操縦できればあの時もっと動くことができた、これからまた災害があるかもしれない、と資格を取得。オープンジャパンから重機講習を受けて「まるもり女子重機隊」を立ち上げた。

今年二月に起きた福島県沖地震では隣町の宮城県山元町に球磨村と並行して支援に入ったオープンジャパンとともに、裏山が崩落した宅地で土砂撤去を行い、支援された側から支援する側へと変化を遂げた。

地域行政と災害ボランティアセンター、そしてNPOの連携

丸森町の保科町長は「緊急時にボランティアの陣頭指揮をとっていただいた行動力、多方面にわたる支援の実績に協定を結ぶことを決めた」。オープンジャパン災害支援チームの肥田代表は「丸森町の持つ受援力(支援を受け入れる力)の高さ、そして同じ宮城に根ざす団体としてここから防災の新しいモデルが作れたら」とそれぞれ協定式で述べた。

NPO側は同町で災害が起きた際の支援と社協ボランティアセンターへの支援、平時には地域での災害支援者育成を担い、町側はそれに必要な資機材の保管場所や活動拠点、燃料などの支援を提供する。

災害協定を締結、保科町長(左)とオープンジャパン肥田氏(右)

近年、災害現場においてボランティアの力は必要不可欠となっている。特に災害の専門的な経験、知識、技術を持つ団体・NPOの存在が大きい。ボランティアセンターを運営する社会福祉協議会、復旧復興にあたる行政、そして支援を行うNPOの「三者連携」が提唱されて久しい。

行政においては国よりも実際に災害を体験した地方自治体が先を進んでいる。いまだ復興途中にある丸森町での取り組みは連携のモデルケースとして期待がもたれている。