オーガニックコットンと苦楽の30年:アバンティ物語㊦

30年前からオーガニックコットン販売に取り組んできたアバンティ(東京・新宿)。「エコ」「エシカル」「オーガニック」がほとんど知られていなかった時代から「顔の見える生産者」を大事にしてきた。渡邊智惠子会長は、「私たちが作ってきたのは獣道(けものみち)。次世代へつなげたい」と抱負を語る。(聞き手・オルタナS編集部=多田野 豪)*この記事は「オーガニックコットンと苦楽の30年:アバンティ物語」の㊦になります。㊤はこちら

オーガニックコットンで作られた新商品「リアルフリース」

――このほど日本初のオーガニックコットン素材でできたリアルフリースを作りました。どのような点にこだわりましたか。

海洋マイクロプラスチックやマイクロファイバーが問題であると知って、オーガニックコットンを使う私たちがやらなければいけないことは、生分解性商品の開発と考えました。

通常のポリエステルでできたフリースは洗濯すると、繊維が流れてしまいます。このリアルフリースは、ウールとオーガニックコットンでできています。

ウールが肌に合わない人もいるので、肌に当たる部分は、肌に優しい素材であるオーガニックコットンを使い、表はウールを使いました。ウールだから防寒性もあります。

リアルフリースも洗濯によって繊維が流れてしまいますが、生分解性があるので、ポリエステルのフリースと比べて環境配慮型です。

100%竹と水の天然成分でできた洗浄剤「竹の洗濯水」

――100%竹と水の天然成分でできた洗浄剤「竹の洗濯水」も作りました。

今までは、重曹由来の洗浄剤を提案しており、オーガニックコットンを手入れして、洗うのには最適でした。しかし、ウールを洗濯する際に、重曹を使うと縮んでしまいます。

竹の洗濯水は、竹炭と竹炭灰を天然水で沸騰してから、蒸留して作られたもので、重曹よりも縮みにくく、まるで柔軟剤が入っているかのように柔らかく仕上がるのがメリットです。

しかも、竹害の解決にもつながるという点で、重曹よりも環境に優しい。界面活性剤を一切使用していないので、海洋に出てからも悪さをしない。界面活性剤がないと、洗浄能力がないと世間では思われているかもしれないですが、ウールやオーガニックコットンなどの天然繊維を洗うのに適しているのです。

――日本ではまだ環境負荷の高いポリエステルのような安価な素材を買う人が一般的かと思います。今後どうしたら消費者の購買行動が、より環境や人権に配慮したものになるとお考えですか。

それは、私たち当事者が現実を伝えていくしかないでしょう。繊維は、綿から糸を経て生地になり、最終的に製品になって消費者に届くまでに、すごく距離があるものです。

見えにくく「ブラックボックス」になっている工程が多いし、分業された工程全てをコントロールする人が今までいませんでした。

アバンティは、全工程にかかわる担当者の顔が見えるものづくりをしているのもあって、その状況に横串をさせる唯一の存在だと思っています。だから、現状を人々にお知らせする責任があると思っています。

大手の小売店がオーガニックコットンを扱い出しています。大きい規模で商売をしてくれることで、オーガニックコットンの市場が広がるのは、いいことだと思っています。

ただ、アバンティはそういうやり方ではなく、一つひとつの製品にストーリーを持たせています。通常のコットンではなく、オーガニックコットンだからこそできた商品であるというメッセージをしっかりと伝えたいと思っているのです。

企業ごとにできることがあると思うので、アバンティは、オーガニックコットンという新素材の獣道を作り、無印良品やH&Mのような大きい規模のところがそれを滑走路にする。このような役割分担で今後も続けていきたいですね。




[showwhatsnew]

【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをLINEでお届け!】
友だち追加