加賀百万石の城下町、金沢。古い町並みや伝統文化が息づく日本有数の観光都市を流れる犀川河口近くの専光寺浜。見渡す限りのゴミ。木材ゴミの他、多くのプラスチックゴミ、ペットボトル。このゴミのうちいくらかは日本海の対岸、外国由来や海上で漁船から投棄されたモノかも知れないが、多くは金沢市民が出したゴミだ。(寄稿・高柳 豊=カエルデザイン クリエイティブディレクター)

海岸に捨てられた大量のゴミ

山間部で廃棄されたか不法投棄されたゴミ、街なかで捨てられたゴミ、ゴミ収集場所から風に飛ばされたゴミが側溝や用水から犀川に流れ込み、犀川河口から海に出て、波風で専光寺浜に打ち上げられる。

観光客が多く訪れる金沢の中心部の観光スポットが「光」なら、このゴミで溢れる海岸は不都合な「影」の部分だとも言える。

海岸のゴミの内、木の類はやがて朽ちていくから良いのだろうが、プラスチックは太陽の紫外線と熱で脆くなり細かくなり、やがてマイクロプラスチック、ナノプラスチックとなり、それらは風で飛ばされ海に流れ込み、魚介類を汚染し、海鳥や亀や色んな海洋生物の命を脅かす。

そしてそのツケは必ず人間に回ってくる。気候危機、地球温暖化が世界的に問題になっていて、毎年のように猛暑となって、数十年に一度と言われる大雨が毎年のように降るようになっても、その原因だとされる温暖化ガスは僕たちの目には見えないし、温暖化ガスと地球温暖化は無関係と言う科学者もいて、僕の科学の知識では正直よくわからない。

でも、この金沢の専光寺浜の惨状、無数のプラスチックゴミは目の前の逃げようのない、弁明のしようのない確かな現実だ。

この海岸にやって来る、道徳観の薄い釣り人やバーベキューや花火を楽しむ若者たちがこの海岸で捨てていったゴミも確かにあるが、多くのゴミは金沢に住む「誰か」が出したものなのだ。それは何の悪意も無いごく普通の善良な市民が買って消費し、捨てたものなのだ。

この紛れもない、逃げようもない海洋プラスチック汚染の現実を目の当たりにして、僕たちができることは2つしかない。

1つはプラスチックゴミを出さない(できるだけシングルユースのプラスチック製品は買わない)。2つ目はすでに流れ出してしまった海洋プラスチックを回収する。

目に見えない地球温暖化ガスは僕たちの力では回収できないが、目に見える海洋プラスチックは海岸に来れば子供でもおじいちゃんおばあちゃんでも、そして障がいを持つ人であっても拾うことができる。それには特別な技術も道具も不要だ。

海洋プラゴミを回収し、アクセサリーに

回収したプラゴミを形や色で仕分ける

そして、僕たちはこの厄介な海洋プラスチックを資源として、様々な障がいを持つ人たちとともにアクセサリーにアップサイクルするカエルデザインというブランドを去年の秋からスタートさせた。

海岸に落ちている海洋プラスチックの姿からは信じられないくらい美しいアクセサリーたち。

カエルデザインは、新しく資源を消費して何かを作り出すのではなく、消費されて捨てられたモノから新しいモノを生み出すアップサイクルと、それによって障害を持つ人たちの自立を目指すという挑戦です。

カエルデザインのアクセサリー

カエルデザインHP

高柳 豊
エシカル、サスティナブルをテーマに活動するクリエイティブチーム、カエルデザインのクリエイティブディレクター。海外向けコンピューターシステムのシステムエンジニアを経てカルチャー教室で様々な文化教室の企画運営などを経験。その後、フリーランスになってから地域通貨の発行・運営、雑誌の出版編集、地サイダーやクラフトチョコレートなどの加工食品ブランドの立ち上げなど、商品企画、ブランディング、マーケティングなどを手掛けている。企画からデザイン、コピーライティング、写真撮影などクリエイティブ全般に携わる。
高柳さんのこれまでのコラム記事一覧