カエルデザインでは障がいを持つ人たちと共に、主に海洋プラスチックやフラワーロス(廃棄花)をアップサイクルしてアクセサリーを作っている。作り手の僕たちは当たり前のようにアップサイクルという言葉を使っているけれど、アップサイクルって初めて聞いたという人もまだまだ多いし、リサイクルと何が違うの?という人も多い。(寄稿・高柳 豊=カエルデザイン クリエイティブディレクター)
そもそもアップサイクルって何だろう?自分たちが行っていることを整理するためにも、アップサイクルという言葉について考えてみたい。
アップサイクルという言葉を考える時にまず重要になるのが、リサイクルという言葉の意味だ。誰もが聞き慣れているリサイクル。多くの人がリサイクルと聞いて思い浮かべるのがリサイクルショップだろう。
不要になったモノを買い取って簡単なクリーニングや修繕を施して再販売するお店だが、英語の意味的にはこれらのお店でしていることはリサイクルというよりはリユースであって、ハードオフコーポレーションやアップガレージなどが加盟する日本リユース業協会も自分たちの店をリサイクルショップではなく、リユースショップと呼んで欲しいと言っている。
リサイクル(recycle)は、英語の意味としてはre=再び、cycle(循環)させること。不要になったモノを再び資源として循環させる、再活用することだ。この「資源として」という部分がポイントで、リサイクルでは多くの場合、一度原料まで戻す。だから中古品をほぼそのまま再販売している店はリサイクルショップではなく、リユースショップが正しいということになる。
リサイクルとダウンサイクル
さて、アップサイクルは英語でupcycle。upがあれば当然downがあって、アップサイクルに対になるものとしてダウンサイクル(downcycle)がある。
世の中、リサイクルできる素材は色々あるが、その中でもアルミや鉄、ガラスはほぼ同じ品質を保ったまま無限にリサイクルできる。それに比べて、例えば紙はリサイクルする度に繊維が短くなり耐久性が低くなるのでリサイクルできる回数は5〜7回程度。これをダウンサイクルと言う。
ではプラスチックはと言うと、ほとんどのプラスチックは一度しかリサイクルできず、再度リサイクルできない製品にダウンサイクルされることが一般的で、プラスチックの多くはポリエステル繊維にダウンサイクルされ、衣類やカーペットなどになる。
このように、リサイクルにはダウンサイクルも含まれ、ダウンサイクルの対になる言葉としてアップサイクルという言葉が使われる。
で、アップサイクルとは?
では、アップサイクルとは何か?簡単に言うと、不要となって廃棄されるモノ、副産物をより価値の高い製品へと生まれ変わらせること。例えば廃材を使って家具を作るとか、古タイヤからバッグを作るなど。
アップサイクルはクリエイティブリユース(creative reuse)と呼ぶこともあって、このクリエイティブという言葉からもわかるように、アップサイクルというのは多くの場合、新しい発想、デザインの力で元の素材(廃材)に付加価値を加えるアプローチだ。
アップサイクルとリサイクル(ダウンサイクルも含む)の根本的な違いは、アップサイクルではリサイクルのように一度元の原料に戻すことはせずに、元の製品を素材としてほぼそのまま活かす点にある。リサイクルは元の原料や素材に戻すために大きなエネルギーを消費するが、アップサイクルの場合は元の製品をなるべくそのまま活かすので、リサイクルよりも環境への負荷は低い。
また、不要になったモノをアップサイクルすることで、モノの寿命を大きく延ばすことが可能になる。例えば、タイヤから作られるバッグ。タイヤは数年で使えなくなって廃棄されるが、そのタイヤをバッグにアップサイクルするとその寿命は10年以上延びることになる。だからアップサイクルはリサイクルよりもサステナブルだと言えるだろう。
カエルデザインが障がいを持つ人たちと共に行っている、海洋プラスチックからアクセサリーを作るプロジェクトも、捨てられて自然界に流れ出てしまったプラスチックゴミを想像力とクリエイターたちの力で、それも手作業で大きなエネルギーを消費することなくアクセサリーにアップサイクルすることで、プラスチックに新たな命を吹き込み、モノとしての寿命を10年、20年、数十年と延ばすことができる。
今、サスティナブルであること以上のビジネスの課題は無いと言われる。そのサスティナブルなものづくりの1つの方法として、そして障がいがあっても夢と誇りを持って仕事をして生きて行く方法として、アップサイクルはとても大切で可能性があることだと信じ、僕たちは日々試行錯誤している。
高柳 豊
エシカル、サスティナブルをテーマに活動するクリエイティブチーム、カエルデザインのクリエイティブディレクター。海外向けコンピューターシステムのシステムエンジニアを経てカルチャー教室で様々な文化教室の企画運営などを経験。その後、フリーランスになってから地域通貨の発行・運営、雑誌の出版編集、地サイダーやクラフトチョコレートなどの加工食品ブランドの立ち上げなど、商品企画、ブランディング、マーケティングなどを手掛けている。企画からデザイン、コピーライティング、写真撮影などクリエイティブ全般に携わる。
*高柳さんのこれまでのコラム記事一覧