12月も20日を過ぎて後半に差し掛かると、年賀状の作成で頭が痛い人も多いと思いますが、僕はもう10年以上前に年賀状を出すのを止めてしまいました。止めたと言うか、諦めたと言う方が正しいのですけれど。でも、こちらが出さなくても年賀状をいただくことが結構ありまして、それに返礼を出さないでいることがストレスであったりするわけです。
多くの日本人は、お正月には年賀状を送り合うのが「伝統」「しきたり」「礼儀」みたいに思っていると思いますが、調べてみるとそれはどうも誤りのようです。
日本人が一般に年賀状を送るようになったのは明治20年以降のことだそうです。明治政府が郵便制度の定着と促進のために世界でもかなり早い時期にハガキを導入し、それが年賀状の普及につながったらしいのです。
年賀状の歴史、日本の郵便制度の誕生と発展、戦争と年賀状、お年玉年賀はがきの誕生秘話などを調べてみるととても興味深いのですが、ここではそれには触れず、年賀状がサスティナブルか否か、二酸化炭素の排出という視点で考えてみたいと思います。
年賀はがき1枚の重さは約2.8g。日本郵便によると2021年用の年賀はがきの当初発行枚数は前年比17・4%減の19億4198万枚。計算すると紙の総重量約5,438トンとなります。
上級印刷紙を製造する時の二酸化炭素排出量は1トンあたり1,470kg(※1)なので、約8,000トンの二酸化炭素が2021年の年賀状製造時に発生している計算になります。それにプラスして年賀状を運ぶ物流トラック、各家庭へ配達する原付きバイクなどが排出する二酸化炭素も考えなくてはなりません。
日本全体の2018年度の温室効果ガス排出量(二酸化炭素換算、以下同様)は約11億3,800万トン(JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センターによる)なので、年賀状の8,000トンは微々たるものだと思うかも知れませんが、微々たるものの積み重ねが地球温暖化、気候危機を招いたのです。
年賀状に限らず、何を作っても、何を送っても二酸化炭素は必ず出てしまうので、二酸化炭素が発生するから年賀状を止めましょうと言っているのではありません。なにせ人間が呼吸をしただけで二酸化炭素は出るのです。
人が一日に吐き出す二酸化炭素量は約1kgだそうです(※2)。WHOが発表した2020年版の世界保健統計によると世界人口はおよそ約76億人と推定されていますから、1年間に全人類が吐き出す二酸化炭素の量を計算すると約27.7億トンとなります。この量は全世界で排出される二酸化炭素の量約328億トン(全国地球温暖化防止活動推進センター資料より)の約8.5%に相当します。
ただし、人が呼吸で二酸化炭素を吐き出しても、基本的に地球上の二酸化炭素量は増えないのだそうです。基本的には増えないということは、増える要素があるのです。この部分を書き出すと長くなり過ぎるので、また別の機会にでも。
さて、どうしても仕事上のシガラミなどで、年賀状を出さなくてはいけない皆さん、頑張ってください!
(※1)日本製紙連合会・LCA 小委員会 紙・板紙のライフサイクルにおける CO2排出量 平成23年3月18日より
(※2)国立研究開発法人 国立環境研究所 http://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/26/26-1/qa_26-1-j.html