障がいを抱える子どもを持つ父親が集まってできた団体が福岡にあります。父親ならではの視点やネットワークを生かして、違いを認め合い、誰もがありのままで暮らすことができる社会のために活動してきました。(JAMMIN=山本 めぐみ)

違いを認め合える、誰もが暮らしやすい社会のために父親たちが活動

2021年1月、団体が開催する「笑顔と絆のスクラム Part7」にて、「福岡おやじたい」のメンバーや当日のスタッフ全員で記念撮影

福岡市を拠点に活動する一般社団法人「福岡おやじたい」。知的障がいを抱える子どもの父親が中心となり、障がいを抱える子どもたちの将来への貢献を目的として、幅広く障がい全般に対する認知・啓発活動を行っています。

理事でありメンバーの一人の財津英樹(ざいつ・ひでき)さん(50)も、ダウン症のある娘(9)を持つ父親。

「娘が生まれる前にも、何となく社会の生きづらさを感じてはいましたが、娘が知的障がいをもって生まれてきたことで、僕自身改めて考えさせられることがありました。相手をまるごと、ありのまま受け入れられる多様性を認め合う社会のために、自分たちの活動を通じて『知ること』による気づきやきっかけを示すことができたら」と話します。

お話をお伺いした財津さん。娘の環ちゃんと

「福岡おやじたい」の現在の会員数は、準会員を含め26名。

「法人名どおり男性のみのメンバーで、職業・職種・生活環境の違う71歳から42歳までのおやじたちの集まりです」と財津さん。障がいを抱える人を取り巻く状況を広く発信し、改善を推進したいと啓発イベントやセミナー、シンポジウムを多数開催してきました。

ごく普通のこととして「こういう人がいるんだ」を知ってほしい

福岡おやじたいメンバーのメンバーと家族の集合写真。「コロナ禍でなかなか集まれなかったメンバー間の交流の一枚です」

「少しずつですが、街中で障がいを抱える方と出会う機会は増えてきたと感じます」と財津さん。

「以前は障がいを抱える方が電車に乗ってくると、その方の周りだけ空間ができていたのが、最近は『そういう人なんだな』という認知がされるようになり距離がとられることも減ってきました。知ってさえもらえたら、『こんな人なんだな、危険ではないんだな』と不審者というような判断をされずに済みます。知ってもらうことは、非常に大切だと考えています」

「娘と一緒に街に出ると、彼女は多動なところがあって興味があることにダーッと走っていくんです。すると、そこに同じ年頃の子どもがいた時、最初はびっくりしてパッと引かれるような感じになることがあります。でもそれは普通の反応なんですよね。そういう子がいることをまず知ることで『こういう人がいるんだ。そういう人なんだ』と慣れていくようなところがあるのではないでしょうか」

娘の環ちゃんと。バーベキューの時の1カット

「ただ単に『認めてください』と主張するのも何か違うと思っていて。自分たちのことばかりを主張したとして、たとえそれが通ったとしても、周囲の反感を買いながらとなると、じゃあ今度娘が一人で生きていかなければならなくなった時、果たして彼女が本当に楽しく生きられるのかと。きっとそうではないですよね。反感ではなく、受け入れ、認め合う気持ちが大切なのだと思います」

「親として『教育』にこだわるのはそこです。『皆に知ってほしい』という思いがあり、娘を普通の小学校に入れました。もしかしたら友達になることは難しいかもしれない。でも『こういう人がいるんだ』って知ってもらえたら、違いに対して過剰に反応せず、受け入れ合い、互いが『普通に』生きられるという部分があるのではないでしょうか」

「このことは、何も障がいを抱える人だけの問題に限らないと思うんです。宗教、文化、国、考え方、見た目、性格…、皆それぞれ、違います。いろんな人が社会に存在します。それぞれが自分らしくあっていいはずなのに、自由を侵害されたり、安心に暮らせなかったり、差別を受けたりする人がいる。それが、社会全体の生きづらさにもつながっています」

やさしい思いを循環できる社会のための、「気づきの種」を蒔いていきたい

メンバーや関係者の皆さんと。「セミナー後、懇親会という名の飲み会の様子です」

普通の保育園に通い、地域の小学校に入学した娘の環ちゃん。同級生は環ちゃんを分け隔てすることなく、できないこともごく当たり前にサポートしてくれたといいます。

ある日、授業参観で小学校を訪れた財津さん。一人のお母さんから次のように話しかけられました。

「その方がおっしゃるには、娘さんが足を骨折してしまい、毎朝ギプスを巻いた状態で下駄箱で靴を履き替えるのが大変だったそうです。するとうちの娘が『荷物を持ってあげる』と毎朝彼女を待って、荷物を持ってくれたらしいんです」

「お母さんは涙ぐみながらそのことを感謝してくださいました。僕もすごく感動しました。娘は自分が周りから温かく受けてきたサポートを、ごく自然なかたちで、当たり前のこととして返しただけなんですよね。すごく嬉しかったです」

娘の環ちゃんが生まれたとき、「やさしい思いが循環するような存在になってほしい」という願いを込めて「環」という名前をつけたと財津さん。

「本人が生きている中で、親である私たちの希望や光になってくれているし、私たちが思うさらにその上を、体現してくれているなあと頼もしく嬉しく感じています」

「知ることで、初めて動き出すことができる」

ここからは、福岡おやじたいのメンバーの方にもお話を聞きました。

一人めは山根伸仁(やまね・のぶひと)さん(48)。息子の佑太(ゆうた)さん(13)は自閉スペクトラム症があり、知的遅れを伴う広汎性発達障がいがあります。

山根さんと息子の佑太さん。「2022年の干支・トラを描きました」

「息子が自閉スペクトラム症(以下「自閉症」)だと気づいたのが、2歳後半から3歳くらいの時だったと思います。発語がほぼなく目も合わず、異常にかんしゃくを起こす息子を見て何かおかしいと思いながら、抱いても泣きわめく息子に正直イライラしていました」

「どうすることもできなかった時、インターネットで自閉症という障がいの存在を知りました。これだ、と思い一瞬呆然となりましたが、ようやく腑に落ちて、息子を抱っこする時に『言いたいことも言えずに大変だったね、もう安心していいよ』と心から思い声がけするようになると、彼のかんしゃくが激減しました。『ああ、言葉は話せないけど、本人はわかっているんだな』と思いましたね」

「妻はずっと大変だったと思います。父親は昼間仕事に行って留守ですが、母親は一日中一緒にいて、障がいを持っていなくても大変な子育てをほぼ一人でやっていたのですから、感謝してもし尽くせません」

「将来この子はどうなるのか、親が死んだ後生きていけるのか、漠然とした不安は今でもありますが、福岡おやじたいのメンバーに加わり、いろんな情報に触れる機会が増え、息子をいろんなことにチャレンジさせることもできるようになりました。そしてまた、同じような境遇の親御さんや一般の方にも、息子のことや障がいとどう向き合っていくかを知っていただけるようになりました」

「障がい者も生涯者」

もう一人、メンバーの宮内健(みやうち・たけし)さん(42)の息子の蒼(あおい)さん(13)は、生まれてすぐに視神経低形成(片目は全盲・片目は弱視)の症状が見つかり、また成長過程で検査の結果、自閉症スペクトラムと診断されました。

宮内さんと息子の蒼さん。北九州の海を訪れた際の一枚

「障がいが分かった時、私自身はポジティブにとらえましたが、妻が自身を責めたり、将来を悲観したりしている時期がありました。同じような境遇の方や私たちよりも大変な環境の方などの状況も目の当たりにしながら、これから先、自分自身や子どもがどのようなかたちで人と触れ合っていくのか、どんな社会的立場で歩んでいくべきなのかなどを考えることがありました」

そんな中福岡おやじたいを知り、メンバーに加わった宮内さん。

「セミナーやイベントなどを通してさまざまな方々の思いや熱さに触れ、僕自身たくさんの人の心を紡ぐお手伝いをできたらいいなという気持ちが強くなりました。それと同時に息子に対しても、やりたいことを通して自分の思いや気持ちを誰かに届けることの素晴らしさや意義を教えていこうという気持ちが強くなりました」

「私は障がいに対して、自身が向き合うスローガンを『障がい者も生涯者』としています。障がいがあってもなくても、同じように『生涯を生きる』という上で、何ら変わりない、尊重されるべき一個人です」

「遠いようで近く、近いようで遠いのが障がいです。それぞれの方に特徴や才能があるように、障がいを持つ方たちにも必ず才能があります。常日頃から生涯を共に生きていく生涯者として意識し、フォローし合える優しい社会になっていくといいなと日々感じています」

団体の活動を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「福岡おやじたい」と1/10(月)~1/16(日)の1週間限定でコラボキャンペーンを実施、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円が団体へとチャリティーされ、障がいを知ってもらい、理解を深める啓発活動のための資金として活用されます。

「JAMMIN×福岡おやじたい」1/10~1/16の2週間限定販売のコラボアイテム。写真はTシャツ(700円のチャリティー・税込で3500円)。他にもパーカー、バッグなど販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインには、「父」の字に見立て、クロスした月桂樹の枝とリボンを描きました。月桂樹の花言葉は「私は死ぬまで変わらない」。家族の変わらない絆と愛情を表現しつつ、リボンで福岡おやじたいのつながりやコミュニティが架け橋となって明るい未来を築いていく様子を表現しています。

JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね!

共に生きる未来のために、父親たちが立ち上がる。男性だけの障がい支援団体〜一般社団法人「福岡おやじたい」

山本めぐみ(JAMMIN):

京都発・チャリティー専門ファッションブランド「 JAMMIN(ジャミン)」の企画・ライティング担当。「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週さまざまな社会課題に取り組む団体と1週間限定でコラボしたデザインアイテムを販売。売り上げの一部(Tシャツ1枚につき700円)がコラボ団体へと寄付され、活動を支援しています。2014年から休まずコラボを続け、コラボした団体の数は390超、チャリティー総額は6,500万円を突破しました。

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