4万人に1人の割合で発症すると言われる難治性てんかん「ドラべ症候群」をご存知ですか。特徴のひとつは、てんかん発作を繰り返すこと。しかし希少難病であるため、医療や教育の現場でもまだまだ知られておらず、発作が起きたときに的確な対処がなされていない現状があります。ドラべ症候群を取り巻く環境改善のために、家族たちが立ち上がりました。(JAMMIN=田中 美奈)

特定の模様や光、温度の変化などが発作の原因に

「ドラべ症候群は体温の上昇で発作になる病気なのに汗をかけない子が多くいるので、保冷剤の入ったクールベストを着ています。続けて遊ぶと熱がこもったり疲れて発作になるので、強制的に休憩をさせています。知らない方が見ると過保護に見えることかもしれませんが、ドラベ症候群の子どもにとっては必要な医療的配慮です」

ドラべ症候群の患者とその家族、医療関係者などから成る「ドラべ症候群患者家族会」。代表の黒岩(くろいわ)ルビーさん(46)、スタッフの佐々木千恵さん(ささき・ちえ)さん(49)は、ドラべ症候群の子を持つ母でもあります。お二人に、ドラべ症候群について聞きました。

「ドラべ症候群は『乳児重症ミオクロニーてんかん』とも呼ばれる4万人に一人の発症率の希少難治てんかんで、生後3〜8ヶ月ではじめてのけいれん発作が起きます。その後、さまざまな原因から発作を繰り返す病気です」

「乳幼児期の発作はなかなか止まらず、救急搬送して病院での処置が必要になることが多いです。ドラべ症候群と診断された8割の人に遺伝子の変異があることがわかっていますが、遺伝子検査は長い場合、結果が出るまでに1年2年と時間も費用もかかるため、症状から診断されることが多いです」

発作が起きる原因にも特徴があるといいます。

「しましま模様やドット柄、バーコードなどの規則的な模様を見ただけで発作が起きることがあります。壁紙や絵本、着ている服の模様、網戸などを見ても発作が起こります。また、木漏れ日や点滅する光など、光が発作の原因になることもあります」

しまうまのしま模様、メロンの網目が発作の原因になることも。絵本は塗りつぶし、模様が目に入らないようにする

「さらに、体温の変化も発作を誘発する原因になります。『暖かい場所から寒い場所に行く』という他の人にとっては何ともない温度差が、発作を誘発してしまうケースがあるんですね。暑さ・熱さに弱いので、特に入浴には細心の注意が必要です」

「海外の先生からは、『日本のお風呂はドラべ発見機』と言われるほど、入浴での発作誘発が多いので、基本的にシャワーまたは清拭だけで済ませることが多いです。ドラべ症候群の子はなぜか水遊びやお風呂に入るのが大好き子が多いので、楽しませてあげられないのが悲しいです」

ドラべ症候群の情報発信と家族の交流を行う

2018年、京都で開催された第5回ドラベ症候群家族交流会にて。「交流会では、お互いの子どもたちの成長や悩みを話して一緒に考えたり、共感して笑ったり、楽しい時間を過ごします」

ドラべ症候群患者家族会は、当時未承認だった発作を止めるための薬「ブコラム」の承認を求めて、2015年7月に家族会として活動をスタートしました。現在、全国に300人の会員がいるといいます。

「活動の柱はふたつあり、1つがドラべ症候群や難治性てんかんについての情報発信です」と黒岩さん。

「パンフレットやSNSでドラべ症候群について知ってもらう活動はもちろんのこと、現状を変えていくためにエビデンスのある情報発信を大切にしていて、患者や患者家族を取り巻く実態について調査・研究を行い、学会での発表や国への働きかけを行っています」


「もうひとつが、同じ立場の家族同士が交流できる場の運営です」と佐々木さん。

「定期的に家族交流会を開催し、全国の家族が、互いの悩みを話したりアドバイスをし合ったりしています。4万人に1人の病気で、なかなか身近なところで同じ病気と闘う仲間を見つけるのは難しいので、仲間がいることを感じられる場になればと思っています」

発作が長く続くと重篤な後遺症を招いたり、最悪は死に至るケースも

佐々木さんの娘・ことぶきちゃんは2歳の時、インフルエンザになり発作が群発して病院に搬送された。「どんなに薬を入れても、発作が止まりませんでした。当直の先生ではもう治療の選択がないと言われ、夜中に主治医の先生が家から病院に駆けつけてくださり、発作を止めてくださいました」

てんかん発作を繰り返すことが、ドラべ症候群の主な症状。

「家族の方たちは、常にあらゆることに気を配り、発作が起きないように最大限の努力や工夫をしていますが、発作は起こる時には起こります。たくさんの薬を飲んでいても、発作を完全にコントロールすることは難しいんです」と二人。

発作の程度や時間もまちまちで、「数分で止まることもあれば、1時間以上発作が止まらないこともある」と話します。さらには発作による後遺症のリスクも大きいと話します。

「程度の差がありますが、発作が長く続くことによって脳症になり、それまで歩いていたのに歩けなくなってしまったり、ご飯が自分で食べられていたのに食べられなくなったり、首がすわらないような状態になってしまったり、最悪の場合、亡くなってしまうこともあります」

一刻を争う発作でも、即効性が期待できる薬を学校などで処方できない現実

「子どもたちは自分が大変な病気だと理解できないので、子どもらしく夢中になって遊びます。家族は背中を触って体温を確かめたり、水を飲ませたり、無理やり休憩させたり、早めに切り上げたりしますが、本当は思いっきり遊ばせてあげたいと願っています」

後遺症のリスクがあるため、発作が起きた時には「なるべく早く止めること」が、非常に重要になりますが、そのためには薬の投与以外に方法はないと二人。2020年には、家族会としての地道な活動の成果と国への働きかけにより、「効果が期待できる」として「ブコラム」という薬が国に承認されました。

「『ブコラム』は、海外では10年以上前から使われていた薬で、意識が戻らないまま短い発作を繰り返す場合や、発作が5分以上続く『てんかん発作重積』状態の発作をいち早く止める効果が期待できる、口の中に直接投与する液体の薬です」

てんかん重積状態治療薬 口腔用液「ブコラム」。「針はありません。シリンジタイプのもので、頬の粘膜に液体を投与することで、痙攣を止める作用があります」

しかし承認までこぎつけたものの、この薬が、ドラべ症候群の子どもたちが通う保育園や学校などで使用されない現実があるといいます。

「実は、2021年3月、国から全国の教育委員会に『ブコラムの投与は医療行為であるから、現場の先生たちが投与してはならない』という通達が出されているんです。発作が起きている状態で、容態が安定していないのに薬を投与することは医療行為と判断されるようです」

「保育園や学校で発作が起こると、医療行為であるブコラムを投与できる家族が現場に行くか、救急車を呼ぶかになります。家族がいつも駆けつけられる場所にいるとは限らないし、救急車を呼んだとしても、病院に到着して処置を受けられるまでに1時間近く、すごく時間がかかります」

「救急車を呼ぶにしても、ブコラムを投与するかしないかでは状況が大きく変わります。ブコラムによって発作による後遺症や死亡のリスクを下げられるはずなのに、今はそれが許されていない状況なんです」

2015年11月、ブコラムの早期承認を求め17万1866筆の署名を国に提出する黒岩さん(写真左から2人目)たち。「この時、私は臨月で出産の1週間前でした。多くの方の思いを届けるという大役を無事に果たせてホッとした事を覚えています」

「目の前で子どもたちが発作を起こし、それが長く続くことによって大きな後遺症を生むかもしれないというリスクがわかっていても、現場ではブコラムを積極的に投与できないという現実。現場の中には、発作が一刻を争う事態であることを理解し、独自の判断で使ってくださっている学校もあります」

「しかしやはり、トップダウンで行政から通達があると、自分ではどうすることもできず、もどかしい気持ちを抱えている先生もいらっしゃると思います。起きてしまった発作を早く抑え、脳症や死亡のリスクを減らすために、私たちはブコラムが学校でも投与できるようにしてほしいと活動を続けています。

「仲間がいることが、明日に立ち向かう力に」

家族会の皆さんと。「年に1度の交流会には、長く入会している会員さんも新しく入会した会員さんも一緒に運営に参加します。最近はコロナの影響で集会形式での交流会ができず、こういった機会がなく少し寂しいです」

「一方でまた、患者とその家族の生活の面を支えていくために、医療関係者の方々と協働しながらデータの収集や調査・研究を行いつつ、患者家族の交流にも力を入れていきたい」と二人。お二人もまた、ドラべ症候群の子を持つ母として、「毎日ただただ必死だった」とこれまでを振り返ります。

「ただでさえ大変な子育て、発作が起きてしまうために日常生活が制限されたり、ドラべ症候群の子は偏食の子も多かったりするので、なかなか身近に日々の悩みや不安が話せる人がおらず、孤独を抱えがちな傾向にあります。その時に『同じことで悩んでいる仲間がいる』と思えることが、安心や明日に立ち向かう大きな力になりました」

「現在13歳になる我が子が生まれて最初の数年は、落ち込むばかりでとても前向きにはなれませんでした。少しゆとりが出てきたのは本当にここ2〜3年です」と黒岩さん。

「小学校1〜2年までは、1週間に2回救急車を呼んだこともあったほどで、救急車に乗っては入院ばかりして、私は付き添いで病院で寝泊りし、思い描いていた普通の生活とはほど遠い日々でした。『楽しい幼少期』という印象は全くないです。暗闇の中、ただただ必死でした」

そんな中で救われたのが、同じようにドラべ症候群の子を持つ佐々木さんのブログだったといいます。

「知らなかった情報がたくさん詰まっていて、つらいはずのことも明るく書かれていて、当時の私の心の支えでした。そこをきっかけに、つながりが広がっていったんです。ちなみに佐々木は、当時の闘病記カテゴリーではランキング1位の人気ブロガーでした」

「ブコラムのおかげで、ドラベ症候群3家族でスキー場に行き、遊ぶことができました。それまでは生活圏内は常に救急搬送できることを意識してきましたが、ブコラムがあるだけで世界が広がりました。ブコラムがあることで初期治療が可能になり、救急搬送に少し時間がかかるような場所にも、初めて足を運ぶことができるようになったんです」

「『うちの子はドラべ症候群かもしれない』と発信して、自分のイライラやモヤモヤ、不安を出すだけのブログだったんですが、次第に同じドラべ症候群の子を持つ方たちが見てくださって、コメントを残してくださるようになっていきました」と振り返る佐々木さん。

「それで『一度、リアルな場で集まろう』という話になって、大阪で集まったのが最初です。2014年3月のことでした。北は北海道から南は鹿児島まで、30組ほどのご家族が、飛行機や新幹線に乗って来てくれました。当時は患者家族会もなく、皆、わらにもすがる思いでした。つながりたかったんです」

「つながれたことで、前向きになれた」と二人。それからは毎年交流会を開催し、コロナ禍においてはオンラインに切り替えて交流を続けているといいます。

「ドラべ症候群という診断名がついたからこそ、幸いにして、私たちはこうしてつながることができました。しかし一方で、難治性てんかんがありながら、診断がつかずに苦しんでいるお子さんやそのご家族がいらっしゃいます」


「ドラべ症候群の患者家族会ではありますが、この病気に限らず、難治性てんかんと闘う方たちと一緒に闘う気持ちで、これからも活動をしていきたいと思っています」

団体の活動を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「ドラべ症候群患者家族会」と6/6〜6/12の1週間限定でコラボキャンペーンを実施、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

JAMMINのホームページからチャリティーアイテムを購入すると、1アイテム購入につき700円が団体へとチャリティーされ、団体の活動のための資金として活用されます。

「JAMMIN×ドラべ症候群患者家族会」1週間限定販売のコラボアイテム。写真はTシャツ(700円のチャリティー・税込で3500円)。他にもパーカー、バッグなど販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインには、鳥の家族を包み込む、さまざまな植物や花を描きました。家族への愛情、過去の経験や記録がたくさん集まることでつながりが生まれ、温かい環境や社会を築いていくというメッセージが込められています。

JAMMINの特集ページでは、インタビュー全文を掲載中。こちらもあわせてチェックしてみてくださいね!

希少難病「ドラべ症候群」などの難治性てんかん患者を取り巻く環境改善のために、国や教育の現場に働きかける〜ドラべ症候群患者家族会

「JAMMIN(ジャミン)」は京都発・チャリティー専門ファッションブランド。「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週さまざまな社会課題に取り組む団体と1週間限定でコラボしたデザインアイテムを販売、売り上げの一部(Tシャツ1枚につき700円)をコラボ団体へと寄付しています。創業からコラボした団体の数は400超、チャリティー総額は7,000万円を突破しました。

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