「甲子園」「春高バレー」「全国高校サッカー選手権」。日本ではおなじみの高校生によるスポーツ大会をコスタリカで企画している日本人がいる。スポーツの普及を通して、青少年犯罪や肥満、HIV感染などを防ぐことを目指す。この取り組みを行う任意団体Bola para paz(ボラ パラ パズ)を立ち上げた柳田一磨さんに話を聞いた。(聞き手・Readyfor支局=小林 卓司・小川哲志)

Bola para pazの柳田さん、大学入学までは野球漬けの日々を送っていた

――国際協力に興味を持ったきっかけを教えてください。

柳田:桜美林大学の国際寮に入寮したことがきっかけで、外国の人と関わることに楽しさを感じるようになり、少しずつ世界に目を向けるようになりました。

そして、大学3年次に母校である桜美林大学とJICAが、野球指導ボランティアに関する協定を結んだことをきっかけに、「途上国」との関わりを初めて持つようになりました。
当時、ボランティアの派遣先であるコスタリカの場所も知らず、また、海外での野球指導経験などまったくなかったものの、直感で「面白そうだ」と感じ、参加することにしました。

――JICAボランティアではどのような活動をされていたのでしょうか。

柳田:桜美林大学の野球部に所属する学生が10〜15人選ばれて、1ヶ月間中米のコスタリカに派遣されます。

キューバやドミニカなど野球が盛んなイメージのある中米・カリブ地域ですが、コスタリカは野球の認知度が他国に比べ低く、野球のレベルもあまり高いとは言えない現状があります。

そこで、現地の「野球レベル」と「認知度」の向上を目指し、滞在中の1ヶ月は、小学校の体育の授業内で野球を教えたり、土日は現地の代表チームと試合を行ったりしていました。コスタリカにも日本のように少年野球チームが存在しており、彼らに野球教室を行うこともありました。

2017年に訪れた際の様子

――初めてコスタリカに行ったときの印象はいかがでしたでしょうか。

柳田:街にきれいなレストランがあったり、品揃え豊富なコンビニがあったりするなど、生活をする上で不便を感じることがないくらい、生活水準が高いと感じることが多かったです。

しかし一方で、野球教室をしに学校に行ってみると、体育館やグラウンドなどの設備がボロボロだったり、また、体育で使う道具が使えなくなっているなど、一歩入り込んでみると、日本とは大きな違いがあることを強く感じました。

そのような、子どもが運動する楽しさを感じる「体育」の環境が十分に整っていないと感じたことも、今の活動を始めるきっかけになりました。

――コスタリカ初となる学校対抗スポーツ大会を企画しました。この活動に至った経緯を教えてください。

柳田:JICAボランティアとしての経験は、自分の強みである野球を通じて誰かの役に立つという大きな経験となった一方で、野球を1ヶ月教えるだけで、野球やスポーツをする人口が増えたり、認知度が上がったりするのだろうか、と疑問を持つきっかけにもなりました。

ただ教えることに終止するだけではなく、自分の活動を通じてコスタリカのスポーツや体育を普及させていきたいと考えるようになり、少しずつ今の活動について構想を練り始めました。

そこで、野球のみならずスポーツ全体を盛り上げられたらと考え、日本における「甲子園」や「高校サッカー」「春高バレー」のように、高校生がスポーツに熱中し、それに対して「スポンサー」や「観客」などが関わるという、様々な人がスポーツに対してポジティブになれる文化を創りたいと思い、コスタリカ初となる学校対抗スポーツ大会を行うことにしました。

地方公立校の体育施設。屋上のように見えるが、地上に作られたグラウンドとして使われている

――現地の学校とはどのように協働されていますか?

柳田:現在、有名高校2校での「学校対抗スポーツ大会」を行おうと考えているのですが、その2校との連携に関しては、もともと知り合いだった現地の方の紹介が始まりでした。

2016年に初めてコスタリカに行った際、現地での野球普及における第一人者のような方に出会うことができました。プロジェクトをやりたいと決め、再度単身で渡航した際に、その方にお会いしに行くと、プロジェクトに共感してくださり、現在連携している2校の体育の先生をすぐに紹介してもらうことができました。

開催校のメトディスタ高校

もう一つの開催校のサン・フランシス高校

――この活動を通して、成し遂げたいことはどんなことでしょうか。

柳田:コスタリカでは、既にある程度識字率が高くなっていて、「読み書き」を推進するという時期は過ぎたため、「体育」や「芸術」といったものが注力され始めています。

少しずつ目を向けられ始めた今の時期だからこそ、「体育」や「スポーツ」を通じて、まず何よりコスタリカ人の健康を促進していけたらと思っています。

運動することの楽しさやスポーツの魅力を現地に広げていくことで、コスタリカで社会問題となっている高い肥満率を改善していく大きな一歩になると思っています。
また、今回のスポーツ大会の中でもあるように、「スポーツ」を切り口に、現状コスタリカに不足している保健教育を行っていくことで、中南米全体として問題となっている「HIV感染」に対する理解を促進できるのではないかと思っています。

そして、健康を促進していくだけでなく、「スポーツ」を通じて青少年にまつわる社会問題を減らしていけたらと考えています。スポーツには若者を夢中にさせるような「楽しさ」や「ワクワク」があると思っており、健康問題や青少年犯罪といった一見重くみえるような課題に対する解決策として大きな可能性が眠っていると思います。

柳田さんはクラウドファンディング「Readyfor」で活動資金を集めています。募集期間は6月29日(金)23時まで!是非、詳しくはこちら


【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをLINEでお届け!】
友だち追加